みなと横浜中央社会保険労務士法人

お問い合わせ : AM 9:00 〜 PM 5:00 [月〜金]

045-251-9980

お役立ち情報

令和7年度 在職老齢年金制度の支給停止調整額が変更されます

2025年3月4日

お役立ち情報

令和7年4月より、在職老齢年金制度の支給停止調整額が、51万円に変更されます。

令和7年1月24日、厚生労働省のホームページにおいて、「令和7年度の年金額改定」についてのPress Releaseが掲載されました。

その中で、令和7年度の在職老齢年金支給停止調整額が51万円になることが公表されています。

 

■変更内容

 

支給停止調整額 令和6年度:50万円 ⇒ 令和7年度:51万円

 

 

■在職老齢年金制度とは…

 

働きながら(厚生年金に加入している又は加入義務の年齢を過ぎても加入要件を満たすような働き方をして給与等を得ている場合)老齢厚生年金を受けることができる人については、給与等(賞与含む)と老齢厚生年金の合計額(1か月当たり)が支給停止調整額を超える場合には、老齢厚生年金額について一部支給停止又は全額支給停止等の支給調整が行われます。

これを在職老齢年金制度といいます。

 

 

■支給停止調整額とは…

 

給与等(賞与含む)と老齢厚生年金の合計額(1か月当たり)がこの金額までなら支給停止なく全額支給されるという基準額のことを「支給停止調整額」といいます。

以前は60歳以上65歳未満と65歳以降では、支給停止調整額が異なっていましたが、令和4年4月の年金制度改正により、60歳以上65歳未満も65歳以上と同じ支給停止調整額に改正されています。

この支給停止調整額は毎年4月に見直しがあり、令和7年度は、前年度の50万円から51万円に変更されます。

 

 

■令和7年度の在職老齢年金制度による支給停止計算方法

 

給与等(賞与含む)の1か月あたりの額と老齢厚生年金の1か月あたりの額の合計が51万円以下であれば年金は支給停止なく全額支給され、51万円を超えた場合は、超えた額の半分が支給停止になります。

尚、老齢基礎年金は給与等に関係なく全額受給できます。

 

支給停止額=(総報酬月額相当額…①+基本月額…②支給停止調整額(令和7年度は51万円)÷2

 

<計算例1>

標準報酬月額34万円、1年間の賞与120万円、老齢厚生年金120万円とした場合

①総報酬月額相当額・・・

44万円/月(標準報酬月額34万円+標準賞与額の1か月分(120万円÷12月))

②基本月額・・・10万円/月(老齢厚生年金の1か月分(120万円÷12月))

★支給停止額=(44万円+10万円-51万円)÷2=1万5千円

1か月あたり1万5千円の老齢厚生年金が支給停止されます。

 

<計算例2>

標準報酬月額22万円、1年間の賞与120万円、老齢厚生年金120万円とした場合

①総報酬月額相当額・・・

32万円/月(標準報酬月額22万円+標準賞与額の1か月分(120万円÷12月))

②基本月額・・・10万円/月(老齢厚生年金の1か月分(120万円÷12月))

★支給停止額=32万円+10万円は42万円となり、51万円以下のため、支給停止はありません。

 

①総報酬月額相当額とは…

調整の対象となる月におけるその方の「標準報酬月額」と「その月以前1年間の標準賞与額の総額を12で除して得た額」を合算して得た額のことです。

※70歳以上の場合は、標準報酬月額に相当する額、標準賞与額に相当する額。

 

②基本月額とは…

老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額(加給年金を除く)を12月で除して得た額のことです。(老齢基礎年金は支給調整の対象外です。)

※加給年金は除いて在職老齢年金の支給停止額を計算しますが、老齢厚生年金の一部でも支給されていれば加給年金は全額支給され、老齢厚生年金の全額が支給停止されている場合は加給年金も全額支給停止になります。

 

 

■在職定時改定

 

令和4年4月の年金制度改正により、毎年9月1日に厚生年金に加入中の65歳以上70歳未満の老齢厚生年金受給権者について、前年9月から当年8月までの厚生年金保険加入期間を反映して、年金額を10月分(12月受取分)から改定する仕組みがとられています。

これにより原則として年金額が年に1度増額改定されるため、報酬等に増額がない場合でも在職老齢年金制度による支給停止額には影響が出る可能性があります。

 

 

■まとめ

 

老齢年金を受給していても、加入要件を満たす場合、70歳までは厚生年金に加入し保険料を納めなければなりませんが、その分年金は増えていくことになります。

また、70歳以降厚生年金の加入義務がなくなっても厚生年金の加入要件を満たすような働き方を継続している限り、現行制度においては年齢の上限なく在職老齢年金制度による老齢厚生年金の支給調整は行われることになります。

 

 

不動産収入等、給与以外の収入も支給調整の対象に入るか等のご質問をよくいただきますが、支給停止計算方法からもおわかりいただけるように、現行の制度においては、年金と報酬との調整は標準報酬月額や標準賞与額を使用しますので、それ以外の収入は調整の対象外となります。

また、支給停止されていても、将来年金を繰下げ受給する際には、繰下げ増額された老齢厚生年金を受け取れると誤解されているケースもあるかと思います。

繰下げ受給で増額されるのは、受け取れる年金を受け取らずに繰下げした場合であり、支給停止されている部分については増額の対象外ですのでご注意ください。

 

在職老齢年金の支給停止調整額は、毎年4月に改定されますが、ここ数年の推移は、令和4年度が47万、令和5年度が48万、令和6年度が50万、そして令和7年度が51万となっています。

働いて給与等を得ている方が老齢厚生年金を受給できるようになった時や、給与等を得ながら老齢厚生年金を受給している方が給与等を変更する場合等には、少なからず年金額への影響があるため、在職老齢年金制度をよく理解するとともに、毎年この時期は、支給停止調整額についても改定の有無をチェックするようにしましょう。

また、在職老齢年金制度については、高齢者の就業活躍の重要性と年金の支給停止による就業調整等の問題を背景に、厚生労働省の審議会においても見直しの検討が進められている注目の制度でもあります。

在職老齢年金制度の今後の動きについても注視していきましょう。

 

 

詳細は下記をご参照ください。

報道発表資料2025年1月24日掲載(令和7年の年金額改定について)/厚生労働省

検索

過去の記事