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令和7年度 在職老齢年金制度の支給停止調整額が変更されます
2025年3月4日
令和7年4月より、在職老齢年金制度の支給停止調整額が、51万円に変更されます。
令和7年1月24日、厚生労働省のホームページにおいて、「令和7年度の年金額改定」についてのPress Releaseが掲載されました。
その中で、令和7年度の在職老齢年金支給停止調整額が51万円になることが公表されています。
■変更内容
支給停止調整額 令和6年度:50万円 ⇒ 令和7年度:51万円
■在職老齢年金制度とは…
働きながら(厚生年金に加入している又は加入義務の年齢を過ぎても加入要件を満たすような働き方をして給与等を得ている場合)老齢厚生年金を受けることができる人については、給与等(賞与含む)と老齢厚生年金の合計額(1か月当たり)が支給停止調整額を超える場合には、老齢厚生年金額について一部支給停止又は全額支給停止等の支給調整が行われます。
これを在職老齢年金制度といいます。
■支給停止調整額とは…
給与等(賞与含む)と老齢厚生年金の合計額(1か月当たり)がこの金額までなら支給停止なく全額支給されるという基準額のことを「支給停止調整額」といいます。
以前は60歳以上65歳未満と65歳以降では、支給停止調整額が異なっていましたが、令和4年4月の年金制度改正により、60歳以上65歳未満も65歳以上と同じ支給停止調整額に改正されています。
この支給停止調整額は毎年4月に見直しがあり、令和7年度は、前年度の50万円から51万円に変更されます。
■令和7年度の在職老齢年金制度による支給停止計算方法
給与等(賞与含む)の1か月あたりの額と老齢厚生年金の1か月あたりの額の合計が51万円以下であれば年金は支給停止なく全額支給され、51万円を超えた場合は、超えた額の半分が支給停止になります。
尚、老齢基礎年金は給与等に関係なく全額受給できます。
支給停止額=(総報酬月額相当額…①+基本月額…②-支給停止調整額(令和7年度は51万円)÷2
<計算例1>
標準報酬月額34万円、1年間の賞与120万円、老齢厚生年金120万円とした場合
①総報酬月額相当額・・・
44万円/月(標準報酬月額34万円+標準賞与額の1か月分(120万円÷12月))
②基本月額・・・10万円/月(老齢厚生年金の1か月分(120万円÷12月))
★支給停止額=(44万円+10万円-51万円)÷2=1万5千円
1か月あたり1万5千円の老齢厚生年金が支給停止されます。
<計算例2>
標準報酬月額22万円、1年間の賞与120万円、老齢厚生年金120万円とした場合
①総報酬月額相当額・・・
32万円/月(標準報酬月額22万円+標準賞与額の1か月分(120万円÷12月))
②基本月額・・・10万円/月(老齢厚生年金の1か月分(120万円÷12月))
★支給停止額=32万円+10万円は42万円となり、51万円以下のため、支給停止はありません。
①総報酬月額相当額とは…
調整の対象となる月におけるその方の「標準報酬月額」と「その月以前1年間の標準賞与額の総額を12で除して得た額」を合算して得た額のことです。
※70歳以上の場合は、標準報酬月額に相当する額、標準賞与額に相当する額。
②基本月額とは…
老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額(加給年金を除く)を12月で除して得た額のことです。(老齢基礎年金は支給調整の対象外です。)
※加給年金は除いて在職老齢年金の支給停止額を計算しますが、老齢厚生年金の一部でも支給されていれば加給年金は全額支給され、老齢厚生年金の全額が支給停止されている場合は加給年金も全額支給停止になります。
■在職定時改定
令和4年4月の年金制度改正により、毎年9月1日に厚生年金に加入中の65歳以上70歳未満の老齢厚生年金受給権者について、前年9月から当年8月までの厚生年金保険加入期間を反映して、年金額を10月分(12月受取分)から改定する仕組みがとられています。
これにより原則として年金額が年に1度増額改定されるため、報酬等に増額がない場合でも在職老齢年金制度による支給停止額には影響が出る可能性があります。
■まとめ
老齢年金を受給していても、加入要件を満たす場合、70歳までは厚生年金に加入し保険料を納めなければなりませんが、その分年金は増えていくことになります。
また、70歳以降厚生年金の加入義務がなくなっても厚生年金の加入要件を満たすような働き方を継続している限り、現行制度においては年齢の上限なく在職老齢年金制度による老齢厚生年金の支給調整は行われることになります。
不動産収入等、給与以外の収入も支給調整の対象に入るか等のご質問をよくいただきますが、支給停止計算方法からもおわかりいただけるように、現行の制度においては、年金と報酬との調整は標準報酬月額や標準賞与額を使用しますので、それ以外の収入は調整の対象外となります。
また、支給停止されていても、将来年金を繰下げ受給する際には、繰下げ増額された老齢厚生年金を受け取れると誤解されているケースもあるかと思います。
繰下げ受給で増額されるのは、受け取れる年金を受け取らずに繰下げした場合であり、支給停止されている部分については増額の対象外ですのでご注意ください。
在職老齢年金の支給停止調整額は、毎年4月に改定されますが、ここ数年の推移は、令和4年度が47万、令和5年度が48万、令和6年度が50万、そして令和7年度が51万となっています。
働いて給与等を得ている方が老齢厚生年金を受給できるようになった時や、給与等を得ながら老齢厚生年金を受給している方が給与等を変更する場合等には、少なからず年金額への影響があるため、在職老齢年金制度をよく理解するとともに、毎年この時期は、支給停止調整額についても改定の有無をチェックするようにしましょう。
また、在職老齢年金制度については、高齢者の就業活躍の重要性と年金の支給停止による就業調整等の問題を背景に、厚生労働省の審議会においても見直しの検討が進められている注目の制度でもあります。
在職老齢年金制度の今後の動きについても注視していきましょう。
詳細は下記をご参照ください。
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協会けんぽの保険料率が改定されました。
2025年3月4日
令和7年度の全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料率の改定が発表されています。
改定後の健康保険料率と介護保険料率の適用は3月分(4月納付分)からとなりますので、給与から控除する保険料の変更を忘れないように注意して下さい。
任意継続被保険者及び日雇特例被保険者の方は4月分(4月納付分)から変更となります。
全国健康保険協会では、都道府県ごとに健康保険料率を設定しています。
都道府県ごとの加入者1人当たりの医療費に応じて保険料率が低くなったり高くなったりしますが、疾病の予防や健康づくりの取組などにより加入者の医療費が下がれば、その分の健康保険料率を下げることが可能となる仕組みです。
<健康づくり>
①健康状態を確認するために健診を毎年受けましょう!!
自分自身の生活習慣を見直し、改善に取り組むきっかけとなります。
また、早期に病気を発見し、早期治療につなげることができます。
②健診結果に応じて、引き続きの健康づくり、特定保健指導の利用、医療機関への早期受診といった行動に移しましょう!!
③適度な運動、バランスの良い食生活、禁煙等、日々の健康づくりも大切です。
具体的な都道府県ごとの健康保険料率は、全国健康保険協会のホームページでご確認下さい。
介護保険料率は、全国一律で1.59%に変更となっています。
※健康保険組合や国民健康保険組合に加入の事業主の方は、各組合にご確認下さい。
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給与のデジタル払いがいよいよ現実的に
2025年2月4日
~給与のデジタル払いがいよいよ現実的に~
PayPayが給与のデジタル払いに対応
令和5年4月から、デジタルマネーによる給与の支払いが解禁されています。
これは昨今のキャッシュレス決済等の普及に対応する流れですが、デジタルマネーならどこの事業者のものでも給与のデジタル払いができるというものではなく、厚生労働大臣の審査を受け指定された事業者(指定資金移動業者)のデジタルマネーでのみ給与のデジタル払いが認められるというものです。
実務上、そういった指定を受けた業者がないと導入ができない仕組みです。
令和6年8月にPayPay株式会社が指定資金移動業者第1号として指定されたことを受け、いよいよ現実的に給与のデジタル払い導入の検討が可能な段階に入ってきたといえるでしょう。
ただし、ではすぐに給与のデジタル払いができるのかというとそうではありません。
給与のデジタル払いを導入するには、いくつかの手順を踏む必要があります。
今回は実際に給与デジタル払いを導入するうえで必要な手順について確認していきましょう。
1、導入手順
①厚生労働大臣の指定を受けた指定資金移動業者の確認
指定資金移動業者は厚生労働省のホームページ上で確認できます。(現在指定を受けている業者はPayPay株式会社と株式会社リクルートMUFGビジネスの2社。他に審査中が2社。令和6年12月13日現在:厚生労働省ホームページより)
②導入する事業者の検討
どの事業者を選択するのか、労働者のニーズ及び便宜を考慮のうえ検討します。(複数の事業者を指定することも可能)
③労使協定の締結
給与のデジタル払いの導入について、労使が合意し、あらかじめ労使協定を締結する必要があります。
労使のうち一方でも同意しない場合は導入できません。
<労使協定に記載する内容>
・対象となる労働者の範囲
・対象となる賃金の範囲とその金額
・取扱指定移動業者の範囲
・実施開始時期
④就業規則(給与規定)の変更及び労働基準監督署への届出
※常時10人以上の労働者を使用している事業場は、就業規則を作成し労働基準監督署長へ届出なければなりません。
デジタル払いは給与の支払い方法に関することですので、その内容に対応する規定に改定する必要があります。
⑤労働者への説明
給与のデジタル払いの留意点について労働者に説明しなければなりません。
指定資金移動業者へ説明を委託することもできますが、指定資金移動業者以外には委託できません。
また、説明をする際には、デジタル払いの他に、預金口座や証券総合口座への振り込みも、支払方法の選択肢として同時に提示する必要があります。
労働者への説明を怠ったり、現金かデジタル払いかの二択の選択肢しか与えなかった場合又はデジタル払いを強制したような場合は、労働基準法に違反し、罰則の対象になります。
説明すべき内容は厚生労働省がホームページ上で公表している同意書の裏面に記載されています。
⑥労働者の個別同意
個別の同意を取得します。留意事項の説明を指定資金移動業者へ依頼した場合でも、個別の同意は事業主がとる必要があります。
その際には、デジタル払いを行う上で必要な情報も一緒に取得します。(デジタル給与の振り込みに必要な口座番号、デジタル払いの希望額、デジタル給与が上限を超えた場合に振り込みをする預金口座の口座情報等)
2、PayPay給与デジタル払いの場合
まずは、導入手順で説明した労使協定締結、就業規則の変更・届出及び労働者への留意事項の説明が必要です。
その後PayPayの場合、労働者本人が自分のPayPayアプリから給与受取の申込をします。
PayPayから給与受取口座への入金用口座番号が割り当てられますので、その番号を会社に伝えます。(同意書に記載)
会社がその口座番号へ通常通りの振り込み処理をするだけで労働者のPayPayアカウントに給与がチャージされる仕組みとなっています。
会社がPayPayと契約を交わしたり書類の提出をしたりするようなこともなく、会社の労力的負担があまりかからない設計となっているようです。
PayPayアカウントでの給与保有上限は20万円とされており、それを超える部分についてはあらかじめ登録している銀行口座等に自動で送金されます。
例えば毎月20万円のPayPay払いを希望していても、前月のPayPay給与が5万円残っている場合は、15万円のみPayPayアカウントに支払われ、残りの5万円は登録されている銀行口座等に自動で送金される仕組みです。
さらにはPayPayで受け取った給与も、自分の銀行口座等に送金し、1円以上1円単位で現金化することも可能です。
また、PayPay破綻時には保証機関による保証が提供され、不正取引時にも一定の要件のもと保障を受けることができるようになっています。
詳細は厚生労働省ホームページ及びPayPay株式会社のホームページをご確認ください。
3、まとめ
以上より、デジタル払いは、厚生労働大臣の指定を受けた業者のデジタルマネーでしか行えないこと、またデジタル払いを行うためには必要な手順を踏む必要があるということがお分かりいただけたと思います。
デジタル払いは労使の合意を必要とするものですので、労働者から希望があったからといって必ず導入しなければいけないというものではありませんし、仮に労使の合意によりデジタル払いを導入したとしても従業員全員がデジタル払いをしなければいけないということはなく、もちろん強制することもできません。
利用が普及しているPayPayが給与のデジタル払いに対応したことから、今後労働者からも利用を希望する声や問い合わせが増えてくることも想定されます。
この機会に、デジタル払いの内容や導入手順をよく理解し、適切な対応ができるようにしておきましょう。
詳細は下記をご確認ください。
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育児休業給付延長手続きが変わります
2025年2月4日
2025年4月から、保育所等に入れなかったことを理由とする雇用保険育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります。
◆育児休業給付金とは
育児休業給付金は、雇用保険の被保険者の方が、原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得して、一定の要件を満たした場合に支給されます。
また、1歳時点で保育所等に入れなかったため等の延長事由が生じ、育児休業給付金の支給対象期間を延長した場合は、1歳6か月に達する日前まで(再延長で2歳に達する日前まで)支給を受けることができます。
◆支給対象期間延長手続き
育児休業給付金の支給対象期間を延長するには手続きが必要です。
保育所等に入れなかったために延長する場合、これまでは、保育所等の利用を申し込んだものの、当面入所できないことについて、市区町村の発行する入所保留通知書などにより確認していました。
2025年4月からは、これまでの確認に加え、保育所等の利用申し込みが、速やかな職場復帰のために行われたものであると認められることが必要になります。
◆見直しの背景・経緯
・保育所等への入所意思がなく、給付延長のために申し込みを行う者への対応に時間が割かれる
・意に反して保育所等への入所が内定となった方の苦情対応に時間を要している
市区町村から、上記のような意見・見直しの要望があがっていました。
育児休業及び給付金の延長を目的として、保育所等の利用の意思がないにもかかわらず市区町村に入所を申し込むことは、制度趣旨に沿わない行為です。
保育所等の利用調整における市町村の事務負担を軽減するとともに、制度の適切な運用を図るため、保育所等の利用申し込みが速やかな職場復帰のために行われたものであったか等を、公共職業安定所(ハローワーク)において判断し、延長可否を決めることになりました。
◆必要な書類
2025年4月以後の保育所等に入れなかったための延長の際は、下記の書類が必要です。
1.育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
2.市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
①市区町村への保育所等の入所申し込みは、子が1歳に達する日までに行っていること
②入所希望日を、子が1歳に達する日の翌日以前の日付として入所申し込みを行っていること
※市区町村の申込期限に間に合わなかったために、要件を満たす入所申し込みができなかった場合は、延長の対象とはなりません。
※市区町村に入所可能か問い合わせただけでは支給対象期間の延長の対象とはなりません。
申込期限までに入所の申し込みを行うことが必要です。
※子が病気や障害により特別な配慮が必要であるため、保育体制が整備されていない等の理由で入
所申し込みを市区町村が受け付けない場合は、申告書の理由欄にその旨を記載した上で、必要な書類を添付してください。
3.市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)
◆支給対象期間延長要件
2025年4月以後の保育所等に入れなかったための延長の際は、下記の1~3すべてを満たす必要があります。
1.あらかじめ市区町村に対して保育利用の申し込みを行っていること
2.速やかな職場復帰のために保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認めること(①~③すべてを満たす必要があります)
①原則として子が1歳に達する日の翌日以前の日を入所希望日として入所申し込みをしていること。
②申し込んだ保育所等が、合理的な理由なく自宅から通所に片道 30 分以上要する施設のみとなっていないこと
③市区町村に対する保育利用の申し込みに当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示をしていないこと
3.子が1歳に達する日(1歳6か月に達する日後の延長の場合は子が1歳6か月に達する日)の翌日時点で保育所等の利用ができる見込みがないこと
※「子が1歳に達する日」とは「子の1歳の誕生日の前日」のことです。
その他、詳細は厚生労働省のホームページでご確認ください。
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高年齢雇用継続給付の支給率変更について
2025年1月7日
令和7年4月1日より、高年齢雇用継続給付の支給率が15%→10%へ変更されます。
※令和7年4月1日以降に60歳に達した日(その日時点で被保険者であった期間が5年ない場合はその期間が5年を満たすこととなった日)を迎えた方が対象です。
令和7年3月31日以前に60歳に達した方等は現行の支給率から変更はありません。
1に変更内容を、2に制度全体の概要を示しています。この機会にぜひご確認ください。
(※60歳に達した日:60歳の誕生日の前日)
1、高年齢雇用継続給付の変更内容
令和7年3月31日以前 令和7年4月1日以降 各月に支払われた賃金の低下率 61%以下
各月に支払われた賃金額の15% 各月に支払われた賃金の低下率 64%以下
各月に支払われた賃金額の10% 各月に支払われた賃金の低下率 61%超75%未満
各月に支払われた賃金額の15%から0%の間で、賃金の低下率に応じ、賃金と給付額の合計が75%を超えない範囲で設定される率 各月に支払われた賃金の低下率 64%超75%未満
各月に支払われた賃金額の10%から0%の間で、賃金の低下率に応じ、賃金と給付額の合計が75%を超えない範囲で設定される率 各月に支払われた賃金の低下率 75%以上
不支給 各月に支払われた賃金の低下率 75%以上
不支給 ※支給限度額・最低限度額の取扱いに変更はありません。
(令和6年8月1日からの支給限度額は376,750円、最低限度額は2,295円です。支払いを受けた賃金額が支給限度額以上の場合、及び高年齢雇用継続給として算定された額が最低限度額を超えない場合は、高年齢雇用継続給付は支給されません。)
2、高年齢雇用継続給付の概要
(1)雇用継続給付とは?
60歳到達等時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者に対して支給される給付です。
賃金低下によるモチベーションの低下を防ぎ、高年齢者がいきいきと活躍できるよう、65歳までの継続雇用を援助・促進することを目的としています。
(2)高年齢雇用継続給付金の種類
高年齢雇用継続給付金には、基本手当等を受給していない方を対象とした「高年齢雇用継続基本給付金」と、基本手当等を受給中に再就職した方を対象とした「高年齢再就職給付金」の2種類があります。
①高年齢雇用継続基本給付金
<受給資格>
■60歳到達日において被保険者であった場合
イ 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること。
ロ 被保険者であった期間が通算して5年以上あること。
■60歳到達日において被保険者でなく、それ以降の再就職により被保険者となった場合
イ 60歳到達前の離職した時点で、被保険者であった期間が通算して5年以上あること。
ロ 60歳到達前の離職した日の翌日が、60歳到達後に再雇用された日の前日から起算して1年以内にあること。
ハ ロの期間に求職者給付及び就業促進手当を受給していないこと。
<支給要件>
イ 支給対象月の初日から末日まで被保険者であること。
ロ 支給対象月中に支払われた賃金が、60歳到達時等の賃金月額の75%未満に低下していること。
ハ 支給対象月に支払われた賃金額が、支給限度額未満であること。
ニ 申請後、算出された基本給付金の額が、最低限度額を超えていること。
ホ 支給対象月の全期間にわたって、育児休業給付又は介護休業給付の支給対象となっていないこと。
<支給対象期間>
イ 60歳到達日の属する月から、65歳に到達する日の属する月までの間
ロ 60歳到達時に受給資格を満たしていない場合は、受給資格を満たした日の属する月から65歳に到達する日の属する月までの間
ハ 60歳到達時に被保険者でなかった者は、新たに被保険者資格を取得した日又は受給資格を満たした日の属する月から65歳に到達する日の属する月までの間
<支給額>
1に記載した、「高年齢雇用継続給付の変更内容」のとおり
※特別支給の老齢厚生年金との併給調整あり。(高年齢雇用継続給付の額に応じて年金の一部が支給停止される場合がある。)
②高年齢再就職給付金
<受給資格>
イ 60歳以上65歳未満で再就職した一般被保険者であること。
ロ 1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる安定した職業に就いたこと。
ハ 再就職する前に雇用保険に基本手当等の支給を受け、その受給期間内に再就職し、かつ支給残日数が100日以上あること。
ニ 直前の離職時において、被保険者であった期間が通算して5年以上あること。
ホ その再就職について、再就職手当を受給していないこと。
<支給要件>
高年齢雇用継続給付と同様。
<支給対象期間>
イ 雇用保険に基本手当の残日数が200日以上の場合は、当該被保険者となった日の翌日から2年を経過する日の属する月まで。
ロ 雇用保険に基本手当の残日数が100日以上200日未満の場合は、当該被保険者となった日の翌日から1年を経過する日の属する月まで。
ハ イ及びロにおいて、2年又は1年を経過する前に65歳に達した場合は、支給対象期間に関わらず、65歳に達した日の属する月まで。
<支給額>
高年齢雇用継続給付と同様。
※特別支給の老齢厚生年金との併給調整あり。(高年齢雇用継続給付の額に応じて年金の一部が支給停止される場合がある。)
※高年齢再就職給付金と再就職手当は併給できないためどちらか一方を被保険者が選択することになる。再就職手当は一括で支給され、また年金との併給調整がない等それぞれに違いがある。支給決定を受けた後は変更等ができないため選択時は注意が必要。
3、まとめ
高年齢者雇用安定法による高年齢者の雇用確保措置の進展や、同一労働同一賃金による公正な待遇の確保等を背景に、高年齢雇用継続給付がこの先の廃止等も含めて検討される中、令和7年度は給付率の変更(引き下げ)となりました。
そのような中でも高年齢者がモチベーションを保ち、やりがいをもって働き続けることができる待遇や環境を整備していくことが、今後の会社の課題となっていくのではないでしょうか。
詳細は下記厚生労働省のホームページをご確認ください。
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【YouTube動画】社会保険・労働保険の加入要件をアップいたしました。
2024年12月5日
社会保険・労働保険の加入要件について基本事項と、 問い合わせの多い内容についてまとめました。 ぜひ、ご参考にしてください。
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雇用保険制度の改正内容について
2024年12月3日
令和6年5月10日、雇用保険法等の一部を改正する法律が成立しました。
多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等を改正の趣旨とし、様々な改正がされています。
その中でも人事労務担当者が特におさえておくべき内容についてご紹介します。
1、雇用保険の適用拡大(施行期日:2028年10月1日)
雇用保険被保険者になるための適用要件の一つである週所定労働時間が、週20時間以上から週10時間以上に引き下げられ、適用対象が拡大されます。
企業規模を問わず対象となります。
またそれに伴い、現在週所定労働時間20時間を基準に設定されている被保険者期間の算定基準(ア)や失業認定基準(イ)が下記のように現行の2分の1に改正されます。
<現行法>
(ア)賃金支払の基礎となる日数が11日以上ある月又は賃金支払いの基礎となった労働時間数が80時間以上ある月を1か月として計算。
(イ)労働した場合でも1日の労働が4時間未満の場合は失業として認定。
<改正後>
(ア)賃金支払の基礎となる日数が6日以上ある月又は賃金支払いの基礎となった労働時間数が40時間以上ある月を1か月として計算。
(イ)労働した場合でも、1日2時間未満の労働の場合は失業日として認定。
2、教育訓練やリ・スキリング支援の充実
①自己都合離職者の給付制限の見直し(施行期日:2025年4月1日)
離職期間中や離職前1年以内に、自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練(教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練等)を行った場合には、給付制限が解除されます。
この他、通達の改正により、自己都合退職の場合の給付制限が現行の2か月から1か月へ短縮されます。
令和2年10月1日より前の退職については自己都合退職の給付制限が3か月でしたが、令和2年10月1日以降の退職からは5年間のうち2回までは給付制限が2か月に短縮されていました。
それが今回の通達の改正によりさらに1か月に短縮されるものです。
5年間に3回以上の自己都合退職の場合の給付制限は現行と変わらず3か月となります。
②教育訓練給付の拡充(施行期日:2024年10月1日)
(ア)専門実践教育訓練給付金の給付率が70%から80%に引き上げられます。
<2024年9月30日まで>
受講費用の50%(年間上限40万円)
資格取得をし、かつ訓練終了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は受講費用の20%(年間上限16万円)が追加支給
<2024年10月1日以降に受講を開始する場合>
上記の追加支給の要件を満たしたうえで訓練終了後の賃金が受講開始前と比較して5%以上上昇した場合は受講費用の10%(年間上限8万円)がさらに追加支給
(イ)特定一般教育訓練給付金の給付率が40%から50%に引き上げられます。
<2024年9月30日まで>
受講費用の40%(年間上限20万円)
<2024年10月1日以降に受講を開始する場合>
資格を取得し、かつ訓練終了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は受講費用の10%(年間上限5万円)が追加支給
③教育訓練中の生活を支えるための給付の創設(施行期日:2025年10月1日)
雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、基本手当に相当する給付として、賃金の一定割合を支給する教育訓練休暇給付金が創設されます。
<要件>
被保険者期間が5年以上ある雇用保険被保険者が、教育訓練のための無給休暇を取得すること。
<給付内容>
離職した場合に支給される基本手当の額と同じ額が、被保険者期間に応じて給付されます。(10年未満90日、10年以上20年未満120日、20年以上150日を上限に休暇日数分)
3、その他雇用保険制度の見直し(施行期日:2025年4月1日)
■2025年3月31日までの暫定措置
①教育訓練支援給付金の給付率の引き下げと期限の延長
教育訓練支援給付金(専門実践教育訓練の受講開始時に45歳未満の失業状態の方の訓練受講を更に支援するために基本手当日額の80%を支給するもの)は令和7年3月31日までの暫定措置でした。
今回の改正により給付率は80%から60%に引き下げの上、2年間(2027年3月31日まで)延長されます。
②雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付の延長
現行法では、雇止めにより離職する特定理由離職者は、特定受給資格者と同様の長さの給付日数が適用となり、また、雇用機会が不足する地域として指定される地域内に居住する一定の要件を満たす方について、所定の給付日数の支給後、給付日数が延長される特例があります。
これらはいずれも2025年3月31日までの暫定措置でしたが、今回の改正により、2年間(2027年3月31日まで)延長されます。
■就業促進手当
③就業手当の廃止と、就業促進定着手当の上限の引き下げ
就業手当 廃止
再就職手当 変更なし
就業促進手当 給付内容の改正
基本手当支給残日数の40%相当額(再就職手当として支給残日数の70%が支給された場合は30%相当額)が上限でしたが、今回の改正により上限が20%に引き下げられます。
企業にとって一番大きな改正はやはり雇用保険の適用拡大ではないでしょうか。
これまで被保険者でなかった方も、その多くが被保険者に該当することとなり、事務手続きの増加等も想定されます。
施行日までにはまだ猶予がありますが、今のうちから理解を深めておきましょう。
詳細は下記厚生労働省のホームページにてご確認ください。
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マイナ保険証への移行が始まります②
2024年12月3日
前回、マイナ保険証への移行開始についてご案内しましたが、「そもそもマイナ保険証はどうやって作るの?」「12月からマイナ保険証が無いと医療機関等を受診出来ないの?」等、いくつか問い合わせをいただきました。
今回は、問い合わせがあったものについてご案内していきます。
マイナ保険証の作り方
お持ちのマイナンバーカードが、健康保険証利用申請・登録することで、健康保険証としても利用できるようになります。
マイナンバーカードをお持ちでない方は、まずはマイナンバーカードの取得が必要です。
1.マイナンバーカードを取得する
2.マイナンバーカードの健康保険証利用を申請・登録する
マイナンバーカードを健康保険証として利用するためには登録が必要です。
申請には以下3つの方法があります。
①医療機関・薬局の受付(顔認証付きカードリーダー)からの申請
②マイナポータルからの申請
③セブン銀行ATMからの申請
3.医療機関・薬局で、マイナンバーカードで受付をする
12月2日からマイナ保険証が無いと医療機関等を受診出来ないの?
令和6年12月2日から健康保険証が使用できなくなると勘違いをして、健康保険証を捨ててしまったり、市区町村役場へマイナンバーカードの申請をする人が増えているとニュースにもなっています。
令和6年12月2日以降、健康保険証の新規発行(資格取得・扶養追加・再交付・氏名変更)が廃止となりますが、現在お持ちの健康保険証については、令和7年12月1日まで今までどおり使用することができます。
令和7年12月2日以降は使用できなくなるので、令和7年9月頃から、マイナ保険証をお持ちでない方、マイナンバーが未登録の方などには資格確認書が発行されます。
ただし、令和7年12月1日より前に、退職等により健康保険の資格を喪失した場合は、現在お持ちの健康保険証はその時までとなりますが、その後、新たに資格を取得した健康保険で資格確認書を交付してもらえば、マイナ保険証が無くても引き続き資格確認書で医療機関等を受診出来ます。
資格確認情報のお知らせはいつ届いた?
「資格確認情報のお知らせ」は、マイナ保険証を利用できない医療機関等をマイナ保険証で受診するときに、マイナ保険証とセットで提示することで保険診療を受けられるようになるカードです。
1回目は、令和6年9月頃に各事業所へ発送済で、事業所から各自へ配布することになっています。
協会けんぽでは、1回目は令和6年6月7日時点の加入者分を発送しています。
令和6年6月10日(月曜日)以降に加入した11月29日(金曜日)時点の加入者分については、2回目として、令和7年1月22日~令和7年2月3日に発送予定とのことです。
毎年1月に発送される「医療費のお知らせ」が届いたと勘違いをして、開封せずに仕舞い込んだり、捨ててしまったり、どこにやったか分からないという方が多いようです。
身の回りを確認して、見つからないようであれば再交付申請をしてください。
なお、資格情報のお知らせだけでは医療機関等を受診することはできませんのでご注意ください。
今後は医療機関等に何でかかればいいか
今後は、次の4つの方法で保険診療を受けることができます。
①マイナ保険証
②お手元の健康保険証(令和7年12月1日まで)
③マイナ保険証 + 資格情報のお知らせ(マイナ保険証を利用できない医療機関等)
④資格確認書
その他、詳細は下記ホームページでご確認ください。
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2024年11月1日 フリーランスの新法が施行されます
2024年11月5日
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が、2024年11月1日に施行されます。
近年働き方の多様化が進み、フリーランスという働き方が社会に普及してきた一方で、フリーランスと発注事業者との間で起こる報酬未払いやハラスメント等の様々なトラブルも問題とされてきました。
この法律は、そのような背景をうけて、(A)フリーランスの方と(B)発注事業者との取引の適正化とフリーランスの方の就業環境の整備を図ることを目的として制定されたものです。
この法律は、取引の適正化を目的とした2つの義務と7つの禁止行為、そして就業環境の整備を目的として4つの義務から構成されています。
1、対象事業者
(A)フリーランスとは・・・
(仕事を委託される事業者でフリーランス新法により守られる側)
■特定受託事業者
業務委託の相手方であり、次の①又は②に該当するもの
① 個人であって従業員を使用しないもの
② 法人であって代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しないもの
※従業員とは、週20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる労働者をいいます。同居の親族のみを使用している場合は該当しません。
(B)発注事業者とは・・・
(フリーランスに業務を委託する事業者で、フリーランス新法により、義務を課せられる側)
■特定業務委託事業者
フリーランスに業務委託をする事業者で次のいずれかに該当するもの
① 個人であって、従業員を使用するもの
② 法人であって、役員がいる又は従業員を使用するもの
■業務委託事業者
フリーランスに業務委託をする事業者で従業員を使用していないもの
(フリーランスからフリーランスへ業務委託する場合はここに該当します。フリーランスであっても、他のフリーランスへ業務を委託する場合は、この法律により義務が課される側にもなります)
2、適用対象業務
業種・業界の限定なく、発注事業者からフリーランスへ委託する全ての業務が対象です。
3、義務と禁止行為
■取引の適正化・・・2つの義務と7つの禁止行為
(1)取引条件の明示義務
フリーランスに業務を委託する際には、取引の条件を書面又は電磁的方法(電子メール、SNSのメッセージ、チャットツール等)にて明示しなければなりません。
どちらの方法にするかは、発注事業者が選択できます。
また、明示すべき事項が網羅されていれば、書式の定めは特にありません。
<明示すべき事項>
① 発注事業者とフリーランスの名称
② 業務委託をした日(業務委託をすることを合意した日)
③ 業務の内容(品目、品種、数量(回数)、規格、仕様等を具体的に記載する)
※知的財産権を譲渡、許諾させる際には、譲渡・許諾の範囲も明確に記載する。
④ 給付を受領または役務提供を受ける日
(いつまでに納品するのか、いつ作業をするのか)
⑤ 給付を受領又は役務の提供を受ける場所
(どこに納品するのか、どこで作業をするのか)
⑥ 給付の内容について検査をする場合は、検査を完了する期日
(検査をする場合のみ記載する必要がある事項)
⑦ 報酬の額及び支払期日
(具体的な報酬額を記載することが難しい場合は算定方法でも可。支払期日は具体的な支払日を特定する必要がある)
※フリーランスの知的財産権の譲渡・許諾がある場合はその対価を報酬に加える必要がある。フリーランスの業務に必要な経費を発注事業者が負担する場合は、報酬の額は諸経費を含めた総額が把握できるように明示する必要がある。
⑧ 現金以外の方法で報酬を支払う場合は、支払い方法に関すること。
(現金以外の方法で支払う場合のみ記載する必要がある事項)
(2)期日における報酬支払義務
発注事業者は、フリーランスに発注した給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で支払日を定め、その定めた支払期日までに報酬を支払わなければなりません。(再委託の場合は例外として、一定の要件を満たした場合、元委託支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で定めることができます。)
例:期日を特定(〇月〇日支払)
月単位の締切制度(毎月〇日締め、翌月〇日支払)
※〇月〇日まで/〇日以内のような表現は、具体的な日を特定できないため不可(法違反)
(3)発注事業者の禁止行為
<7つの禁止行為>
① 受領拒否(フリーランスに責任がないのに、発注事業者の都合で受取を拒否したり、あらかじめ定めた納期に受け取らないこと)
② 報酬の減額(フリーランスに責任がないのに、あらかじめ定めた報酬を後から減らして支払うこと)
③ 返品(フリーランスに責任がないのに、委託した物品や成果物を受領後にフリーランスにひきとらせること。不良品等の場合は受領後6か月以内に限り返品が認められるが、それを超える返品は法違反)
④ 買いたたき(フリーランスと十分な協議をせず、通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬額を一方的に定めること。)
⑤ 購入・利用強制(正当な理由なく、フリーランスに対して発注事業者が指定する物を購入させたり、利用させたりすること)
※強制したつもりはなくても、立場的にフリーランスが断ることができないような状況により購入等を余儀なくされる場合もこれに該当する。)
⑥ 不当な経済上の利益の提供要請(委託業務に含まれていない業務を無償で行わせたり、無償で知的財産権を譲渡させるなど、フリーランスの利益にならないことをさせたり、提供させたりすること)
⑦ 不当な給付内容の変更・やり直し(フリーランスに責任がないのに、費用の負担をせずに給付の内容を変更させたり、受領後にやり直し等をせ、フリーランスの利益を害すること。)
■就業環境の整備・・・4つの義務
(1)募集情報の的確表示義務
発注事業者が、広告等でフリーランスを募集する際には、次のことが義務とされます。
① 虚偽の表示の禁止
(意図して実際の条件と異なる表示をしたり、存在しない業務の募集情報を提供すること等)
② 誤解を生じさせる表示の禁止
(実際の報酬額等より高額であるかのような表示や、実際の業務と著しく乖離する名称の使用等。労働者と混同されるような表示もこれに該当)
③ 正確かつ最新の表示の義務
(募集の終了、内容の変更を正確に最新情報になるように変更すること)
(2)育児介護等と業務の両立に対する配慮義務
発注事業者は、フリーランスの申出に応じて、6か月以上の期間で行う業務委託について、フリーランスが妊娠、出産、育児又は介護と業務を両立できるよう必要な配慮をしなければなりません。(6か月未満の期間で行う業務委託については配慮するよう努めなけらばなりません)
① フリーランスから申し出があった場合は、その内容を十分に把握することが必要。(申出があったにもかかわらず申出を無視することは法違反)
② フリーランスの希望する配慮や、取り得る対応を十分に検討することが必要。(申出のあった配慮の実施について可能かどうかの検討をしないのは法違反)
③ 配慮ができる場合はその内容を伝え、できない場合はその理由について説明することが必要。(配慮しないとしたにも関わらずその理由を説明しない場合は法違反)
(3)ハラスメント対策に係る体制整備義務
ハラスメントによりフリーランスの就業環境を害することのないよう次の措置を講ずる必要があります。(労働者に対するものと同様の措置となっています)
① ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発
労働者に対するものと同様に方針の周知及びハラスメント行為者等に対して厳正に対処する旨の方針を就業規則に規定する。
② 相談窓口の設置等、フリーランスが相談できる体制の整備
労働者に対して設置している相談窓口を活用することも可能。相談窓口があることをフリーランスに周知すること。また、相談担当者が適切に対応できるようにすることが必要。
③ ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
迅速かつ正確な事実の確認、被害者への配慮・措置の速やかな実施、行為者への適正な措置、再発防止の取り組み等を実施すること。
④ 併せて講ずべき措置
相談者や行為者のプライバシー保護、及びフリーランスが相談したこと等を理由に契約解除等の不利益な取り扱いがされない旨を定め、周知すること。
(4) 中途解除等の事前告知・理由開示義務
① 発注事業者は、6か月以上の期間で行う業務委託について、契約の解除又は更新しないこととする場合は、解除日又は満了日から30日前までにその旨を予告しなければなりません。(一部例外事由あり)② 予告の日から解除日までにフリーランスから理由の開示の請求があった場合は、遅滞なく理由の開示をしなければなりません。(一部例外事由あり)
4、義務の適用範囲
1人でやっているような発注事業者よりも、従業員を使用している発注事業者の方が課される義務が多くなり、また、業務委託の期間の長さにより、課される義務も変わります。
① 従業員を使用していない発注事業者
取引条件の明示義務のみが義務となります。
② 従業員を使用している発注事業者
取引条件の明示義務、期日における報酬支払義務、募集情報の的確表示義務、ハラスメント対策に係る体制整備義務の4つが義務となります。
③ 従業員を使用しており、一定の期間以上行う業務委託である場合上記②の義務に加え、業務委託の期間に応じて、次の3つが義務となります。
禁止行為(1か月以上の業務委託)、育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(6か月以上の業務委託)、中途解除等の事前告知・理由開示義務(6か月以上の業務委託)
5、違反行為への対応
フリーランスは、発注事業者に本法違反と思われる行為があった場合は、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省に対して申し出ることができるとされています。
それに応じて担当省庁が調査を行い、指導・助言又は勧告を行い、勧告に従わない場合は、命令・公表をすることができます。
命令違反には50万円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
6、まとめ
取引の適正化による2つの義務と7つの禁止行為により、フリーランスが弱い立場で不当な条件を強いられて業務を行うことがないよう守られることになります。
また、就業環境の整備は労働者に対するものとほぼ同様の内容が求められています。
就業規則のハラスメント禁止条項等に、ハラスメントの対象が労働者だけになっている場合は、フリーランスも追記する必要があります。
フリーランスに業務委託を行う事業者は、フリーランス新法の内容を理解し、法違反にならないように注意しましょう。
また、形式的には業務委託契約を締結している場合でも、実質的には労働基準法上の労働者と判断される場合は、本法が適用されず、労働基準関係法令が適用されますので注意が必要です。
労働基準法における「労働者」についても判断基準等が公開されていますので、この機会に合わせて確認しましょう。
詳細は、下記ホームページをご参照ください。
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マイナ保険証への移行が始まります
2024年11月5日
マイナンバーカードと健康保険証の一体化により、令和6年12月2日から現行の健康保険証に替えて、健康保険証として利用登録したマイナンバーカード(マイナ保険証)を基本とする仕組みになります。
事業主、労務担当として従業員への周知が必要となってきますので、今後の流れを確認していきましょう。
マイナ保険証のメリット
マイナンバーカードを健康保険証として利用することで、いつもの通院においても、その他の場面でも様々なメリットがあります。
①過去のお薬の情報や健診結果をふまえた医療を受けられる
過去に処方されたお薬や特定健診等の情報を、初めて受診する医療機関・薬局でも、患者本人が情報提供に同意すれば、医師・薬剤師がデータを確認することができるため、より良い医療が受けられます。
②手続きなしで高額な窓口負担が不要に
医療費が高額になる場合に申請する「限度額適用認定証」が不要になります。
また、70歳から75歳までの方に交付されている「高齢受給者証」の持参も必要なくなります。
③確定申告の医療費控除申請がカンタンになる
確定申告の医療費控除申請をする場合、医療費の領収証を管理・保管しなくてもマイナポータルで医療費通知情報の管理が可能となり、マイナポータルとe-Taxを連携することで、データを自動入力できます。
健康保険証の新規発行が廃止
令和6年12月2日以降、健康保険証の新規発行(資格取得・扶養追加・再交付・氏名変更)が廃止となりますが、現在お持ちの健康保険証については、令和7年12月1日まで今までどおり使用することができます。
ただし、令和7年12月1日より前に、退職等により健康保険の資格を喪失した場合は、その時までとなります。
新たに被保険者や被扶養者になる方
令和6年12月2日以降、新たに被保険者や被扶養者になる方には、健康保険証が発行されません。
◆マイナ保険証の利用登録をしている方
資格取得や扶養追加手続き完了後5営業日程度でデータが登録され、マイナ保険証で医療機関等を受診できるようになります。
データが登録される前に医療機関等を受診してしまうと、オンライン資格確認時に「資格(無効)」や「資格情報なし」と表示され、自費診療(全額自己負担)での受診となってしまいます。
受診前にマイナポータルにログインをして、健康保険証のページの資格情報が最新の情報に更新されているか確認してもらうとよいでしょう。
◆マイナンバーカードを持っていない、またはマイナ保険証利用登録をしていない方
資格取得や扶養追加手続き後に保険者から交付される「資格確認書」を提示すれば、マイナ保険証のメリットはありませんが、これまで通り医療機関等を受診することができます。
資格取得や扶養追加手続きをするときに、届書に「資格確認書発行要否」欄が新たに設けられ、新たに被保険者や被扶養者になる方が資格確認書を必要とする場合は、届書の「□発行が必要」にチェックを入れると、資格確認書が早めに発行されます。
チェックを入れなかった場合も、マイナ保険証をお持ちでない方、マイナンバーが未登録の方などには資格確認書が発行されますが、相当な期間(2ヶ月程度)を要します。
急いでいる場合は特に、「□発行が必要」にチェックを入れ忘れないように注意しましよう。
既存の被保険者や被扶養者の方
現在お持ちの健康保険証については、令和7年12月1日まで今までどおり使用することができます。
令和7年12月2日以降は使用できなくなるので、令和7年9月頃から、マイナ保険証をお持ちでない方、マイナンバーが未登録の方などには資格確認書が発行されます。
※令和6年9月頃に事業所に送られてきた「資格情報のお知らせ」は、資格確認書ではありません。マイナ保険証を利用できない医療機関等を受診するときに、マイナ保険証と資格情報のお知らせをセットで提示することで保険診療を受けられます。資格情報のお知らせだけでは医療機関等を受診することはできませんのでご注意ください。
今後は医療機関等に何でかかればいいか
今後は、次の4つの方法で保険診療を受けることができます。
①マイナ保険証
②お手元の健康保険証(令和7年12月1日まで)
③マイナ保険証 + 資格情報のお知らせ(マイナ保険証を利用できない医療機関等)
④資格確認書
マイナ保険証の利用登録方法等、詳細は下記ホームページでご確認ください。