法定帳簿を適正に作成・保存していますか?
2024年7月2日
労働者を雇用する事業主には、作成・保存義務が課されている法定帳簿があります。
労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の3帳簿に加え、平成31年4月からは、有給休暇管理簿の作成・保存も必要なっています。
労務管理の基本ともいえる法定帳簿ですが、正しく運用できているでしょうか。
1、労働者名簿(労働基準第107条)
労働者名簿は、各事業場ごとに、各労働者(日々雇入れられる者を除く。)について調整しなければなりません。
また、記入すべき事項に変更があった場合においては、遅滞なく訂正しなければなりません。
<記載項目>
①労働者氏名 ②生年月日 ③履歴(異動や昇進等の社内における履歴) ④性別 ⑤住所 ⑥従事する業務の種類 ⑦雇入れ年月日 ⑧退職や死亡の年月日(解雇の場合はその理由及び死亡の場合はその原因を含む)
<保存期間と起算日>
労働者の死亡・退職・解雇の日から起算して5年(当面の間は3年)
<Check>
●記載項目を網羅していますか?
●入社後の変更について訂正をしていますか?
●退職者の労働者名簿を退職後すぐに廃棄していませんか?
2、賃金台帳(労働基準法第108条)
賃金台帳は、各事業場ごとに調整し、各労働者ごとに、賃金支払いの都度、遅滞なく記入しなければなりません。
<記載項目>
①労働者氏名 ②性別 ③賃金の計算期間 ④労働日数 ⑤労働時間数 ⑥時間外労働時間数 ⑦深夜労働時間数 ⑧休日労働時間数 ⑨基本給や手当等の種類と額 ⑩控除項目と額
<保存期間と起算日>
労働者の最後の賃金について記入した日から5年(当面の間は3年)
※但し、当該記録した日より、当該記録にかかる賃金の支払日が遅い場合は、賃金支払日が起算日になります。
<Check>
●給与明細の作成だけで終わっていませんか?給与明細は賃金台帳の代わりにはなりません。
●記載項目について網羅していますか?(特に、性別及び上記④~⑧の労働時間等に関する記載項目について記載が漏れがちのため注意が必要です。)
3、出勤簿等(労働基準法第108条関係)
使用者には労働者の労働日ごとの労働時間を適正に把握する責務があります。
出勤簿やタイムレコーダー等の記録、使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類、残業命令書及びその報告書、労働者が記録した労働時間報告書等の書類を保存しなければなりません。
<記載事項>
氏名、出勤日、出勤日ごとの始業・終業の時間、休憩時間、残業時間等
<保存期間と起算日>
労働者の最後の出勤日から5年(当面の間は3年)
※但し、当該日より、賃金の支払日が遅い場合は、賃金支払日が起算日になります。
<Check>
●始業・終業の時刻及び休憩時間等が記録されていますか?
●出勤簿等の内容と賃金計算及び賃金台帳の記録内容が一致していますか?
4、年次有給休暇管理簿(労働基準法施行規則第24条の7)
年次有給休暇管理簿は、労働者毎に作成する必要があります。労働者名簿又は賃金台帳と合わせて調整することもできます。
<記載項目>
①時季(実際に有給休暇を取得した日) ②基準日(有給休暇の付与日) ③日数(基準日から1年間に労働者が取得した日数)
<保存期間と起算日>
有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後5年(当面の間は3年)
<Check>
●記載項目を網羅したものを作成していますか?(特に、実際の取得日について記載が漏れがちのため注意が必要です。)
これらの帳簿は、事業の種類、法人・個人の別、従業員数等に関係なく労働者を雇用した全ての使用者に作成、保存の義務があります。
いずれの帳簿にも保存期間が定められていますので、保存期間が経過する前に廃棄することはできません。
また、労働者名簿及び賃金台帳は企業単位ではなく各事業場単位での調整(備え付け)が必要であることに注意が必要です。
帳簿類は厚生労働省のホームページからもダウンロードできますが、記載項目を網羅していれば書式は自由ですので、必ずしも同じ書式である必要はありません。
これらの4帳簿は、労働基準監督署の調査でも求められることが多く、不備については行政指導の対象になる場合があります。
また年次有給休暇管理簿を除く3帳簿については、義務違反に対して罰則が適用される可能性もあります。
この機会に自社の帳簿類の作成や保存が適正に行われているか等、確認してみてはいかがでしょうか。
詳細は、下記ホームページをご参照ください。