高年齢労働者の労働災害防止の推進(令和8年4月1日施行)
2026年4月2日
高年齢労働者の労働災害防止の推進(令和8年4月1日施行)
~高年齢労働者の労働災害の防止を図るため、事業者に努力義務が課されます~
1、なぜ今、高年齢労働者の労災対策が求められるのか
近年、高年齢者の雇用が増える中で、労働災害の発生も増加傾向にあります。
特に特徴的なのが、転倒等の事故が起きやすいことや、怪我が重症化しやすく、また回復に時間がかかり休業が長期化しやすいことです。
企業にとっては、人手不足への対応として高年齢者の活躍が重要になる一方で、安全面への配慮はこれまで以上に求められる状況となっています。
こうした背景を踏まえ、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律に基づき、令和8年4月1日より、高年齢労働者の労働災害防止について、事業者に努力義務が課されることとなりました。
2、まず押さえておきたい5つの対応
(1)安全衛生管理体制の確立等
①安全衛生管理体制の確立
経営トップによる方針表明や高年齢者労働災害防止対策の実施体制を明確にすること。また、安全衛生委員会や労働者の意見を聴く機会を通じて、高年齢者労働災害防止対策について労使で話し合うこと。
②危険源の特定等のリスクアセスメントの実施
高年齢者の身体機能等の低下等による労働災害の発生リスクを洗い出し、リスクの高さを考慮して、防止対策の優先順位を検討する。
(2)職場環境の改善
①身体機能の低下を補う設備・装置の導入
身体機能が低下した高年齢者であっても安全に働き続けることができるよう、事業場の施設、設備、装置等の改善を検討し、必要な措置を講ずること。
②高年齢者の特性を考慮した作業管理
筋力、バランス能力、敏捷性、全身持久力、感覚機能及び認知機能の低下等の高年齢者の特性を考慮して、作業内容等の見直しを検討し、実施すること。
(3)高年齢者の健康や体力の状況の把握
①健康状況の把握
安全衛生法で定める雇入時及び定期健康診断を確実に実施すること。
②体力の状況の把握
事業者、高年齢者の双方が高年齢者の体力の状況を客観的に把握し、事業者はその体力に合った作業に従事させるとともに、高年齢者が自らの身体機能の維持向上に取り組めるよう体力チェック等を継続的に行うことが望ましい。(青年、壮年期から実施することが望ましい。)
(4)高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応
①個々の高年齢者の健康や体力の状況を踏まえた措置
個々の高年齢者の健康や体力の状況を踏まえて必要に応じ就業上の措置を講じること。
②高年齢者の状況に応じた業務の提供
高年齢者に適切な就労の場を提供するため、職場環境の改善を進めるとともに、職場における一定の働き方のルールを構築するよう努めること。
③心身両面にわたる健康保持増進措置
集団及び個々の高年齢者を対象として、身体機能等の維持向上のための取組を実施することが望ましい。(運動指導、栄養指導、保健指導、メンタルヘルスケア等の実施)
(5)安全衛生教育
①高年齢者に対する教育
安全衛生法で定める雇入れ時等の安全衛生教育、一定の危険有害業務において必要となる技能講習や特別教育を確実に行うこと。
②管理監督者等に対する教育
事業場内で教育を行う者や高年齢者が従事する業務の管理監督者、高年齢者と共に働く各年代の労働者に対しても、高年齢者の特性と高年齢者に対する安全衛生対策についての教育を行うことが望ましい。
3、高年齢者の労災は「特別な場面」で起きるわけではありません
高年齢者の労災は、特別な危険作業だけで発生するものではありません。
例えば、
・小さな段差につまづく
・濡れた床で足を滑らせる
・暗い場所で足元が見えにくい
・重いものを持ち上げて腰を痛める
といった、日常的な業務の中で起こります。
だからこそ、「うちは大丈夫」と考えるのではなく、身近な環境から見直していくことが大切です。
4、安全配慮義務との関係
企業にはもともと、従業員が安全に働けるよう配慮する安全配慮義務があります。
今回の努力義務の制度化により、
・高年齢者には特有のリスクがあること
・そのための対策が必要であること
が制度として明確に示された点に意味があります。
努力義務と聞くと、対応が任意のように感じられるかもしれませんが、高年齢者のリスクが広く認識されていること、国が対策の必要性を示していることを踏まえると、十分な対策を講じていなかった場合には、予見できたリスクと判断され、労災発生時に会社の責任が問われやすくなる可能性があると思います。
5、まとめ
高年齢者は体力の低下や、健康・身体状況の変化により、特有のリスクがあるということを職場全体で理解し、そのためには通常のリスクアセスメントや安全教育では足りず、高年齢者特有のリスクに対応した対策をとっていくことが必要だということがおわかりいただけたと思います。
高年齢労働者の労災防止は、今後の職場づくりにおいて重要なテーマです。昨今の人手不足、在職老齢年金の支給停止調整額の引き上げ等、職場における高年齢者の活躍の場はますます広がっていくものと思われます。
今回の制度は努力義務ではありますが、もともと会社には労働者が健康で安全に働けるよう配慮する義務があること、また高齢者の労災リスクが高いことを踏まえると、対応の重要性は確実に高まっています。
まずはできることから見直し、安全に働ける環境づくりを進めていくことが大切です。
それは高年齢者だけでなく、全ての労働者の安全につながります。
詳細は下記をご確認ください。

