雇用保険制度の改正内容について
2024年12月3日
令和6年5月10日、雇用保険法等の一部を改正する法律が成立しました。
多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等を改正の趣旨とし、様々な改正がされています。
その中でも人事労務担当者が特におさえておくべき内容についてご紹介します。
1、雇用保険の適用拡大(施行期日:2028年10月1日)
雇用保険被保険者になるための適用要件の一つである週所定労働時間が、週20時間以上から週10時間以上に引き下げられ、適用対象が拡大されます。
企業規模を問わず対象となります。
またそれに伴い、現在週所定労働時間20時間を基準に設定されている被保険者期間の算定基準(ア)や失業認定基準(イ)が下記のように現行の2分の1に改正されます。
<現行法>
(ア)賃金支払の基礎となる日数が11日以上ある月又は賃金支払いの基礎となった労働時間数が80時間以上ある月を1か月として計算。
(イ)労働した場合でも1日の労働が4時間未満の場合は失業として認定。
<改正後>
(ア)賃金支払の基礎となる日数が6日以上ある月又は賃金支払いの基礎となった労働時間数が40時間以上ある月を1か月として計算。
(イ)労働した場合でも、1日2時間未満の労働の場合は失業日として認定。
2、教育訓練やリ・スキリング支援の充実
①自己都合離職者の給付制限の見直し(施行期日:2025年4月1日)
離職期間中や離職前1年以内に、自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練(教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練等)を行った場合には、給付制限が解除されます。
この他、通達の改正により、自己都合退職の場合の給付制限が現行の2か月から1か月へ短縮されます。
令和2年10月1日より前の退職については自己都合退職の給付制限が3か月でしたが、令和2年10月1日以降の退職からは5年間のうち2回までは給付制限が2か月に短縮されていました。
それが今回の通達の改正によりさらに1か月に短縮されるものです。
5年間に3回以上の自己都合退職の場合の給付制限は現行と変わらず3か月となります。
②教育訓練給付の拡充(施行期日:2024年10月1日)
(ア)専門実践教育訓練給付金の給付率が70%から80%に引き上げられます。
<2024年9月30日まで>
受講費用の50%(年間上限40万円)
資格取得をし、かつ訓練終了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は受講費用の20%(年間上限16万円)が追加支給
<2024年10月1日以降に受講を開始する場合>
上記の追加支給の要件を満たしたうえで訓練終了後の賃金が受講開始前と比較して5%以上上昇した場合は受講費用の10%(年間上限8万円)がさらに追加支給
(イ)特定一般教育訓練給付金の給付率が40%から50%に引き上げられます。
<2024年9月30日まで>
受講費用の40%(年間上限20万円)
<2024年10月1日以降に受講を開始する場合>
資格を取得し、かつ訓練終了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は受講費用の10%(年間上限5万円)が追加支給
③教育訓練中の生活を支えるための給付の創設(施行期日:2025年10月1日)
雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、基本手当に相当する給付として、賃金の一定割合を支給する教育訓練休暇給付金が創設されます。
<要件>
被保険者期間が5年以上ある雇用保険被保険者が、教育訓練のための無給休暇を取得すること。
<給付内容>
離職した場合に支給される基本手当の額と同じ額が、被保険者期間に応じて給付されます。(10年未満90日、10年以上20年未満120日、20年以上150日を上限に休暇日数分)
3、その他雇用保険制度の見直し(施行期日:2025年4月1日)
■2025年3月31日までの暫定措置
①教育訓練支援給付金の給付率の引き下げと期限の延長
教育訓練支援給付金(専門実践教育訓練の受講開始時に45歳未満の失業状態の方の訓練受講を更に支援するために基本手当日額の80%を支給するもの)は令和7年3月31日までの暫定措置でした。
今回の改正により給付率は80%から60%に引き下げの上、2年間(2027年3月31日まで)延長されます。
②雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付の延長
現行法では、雇止めにより離職する特定理由離職者は、特定受給資格者と同様の長さの給付日数が適用となり、また、雇用機会が不足する地域として指定される地域内に居住する一定の要件を満たす方について、所定の給付日数の支給後、給付日数が延長される特例があります。
これらはいずれも2025年3月31日までの暫定措置でしたが、今回の改正により、2年間(2027年3月31日まで)延長されます。
■就業促進手当
③就業手当の廃止と、就業促進定着手当の上限の引き下げ
就業手当 廃止
再就職手当 変更なし
就業促進手当 給付内容の改正
基本手当支給残日数の40%相当額(再就職手当として支給残日数の70%が支給された場合は30%相当額)が上限でしたが、今回の改正により上限が20%に引き下げられます。
企業にとって一番大きな改正はやはり雇用保険の適用拡大ではないでしょうか。
これまで被保険者でなかった方も、その多くが被保険者に該当することとなり、事務手続きの増加等も想定されます。
施行日までにはまだ猶予がありますが、今のうちから理解を深めておきましょう。
詳細は下記厚生労働省のホームページにてご確認ください。