パートタイム・有期雇用労働法が改正されます
2026年7月2日
パートタイム・有期雇用労働法が改正されます
~同一労働同一賃金への対応を改めて確認しましょう~
令和8年10月1日から、パート・有期雇用労働法に関する施行規則、同一労働同一賃金ガイドラインおよび雇用管理指針が改正されます。
パート・有期雇用労働法では、不合理な待遇差を禁止する「同一労働同一賃金」のルールが設けられています。
今回の改正は、このルールをより実効性のあるものとするため、近年の裁判例を踏まえてガイドラインを見直すとともに、労働者が待遇差について説明を受けやすい環境を整えることで、待遇差に関する説明の実効性を高め、公正な待遇の確保を図ることを目的として行われます。
1、同一労働同一賃金ガイドラインの見直し(告示)
今回の改正では、近年の裁判例等を踏まえ、企業が待遇差の合理性を判断しやすいよう、ガイドラインの内容がより具体化されました。
ガイドラインでは、基本給、賞与、退職金、各種手当、福利厚生等について、どのような場合に待遇差が認められるか、その考え方がより明確に示されています。
今回新たに追加された内容は次のとおりです。
(~厚生労働省:同一労働同一賃金ガイドラインの主な改正事項より~)
賞与・退職手当の性質・目的として、労務の対価の後払い、功労褒賞等の様々な性質・目的が含まれる。これらの性質・目的が妥当するにもかかわらず、非正規雇用労働者に対し、通常の労働者との間の職務の内容等の相違に応じた均衡のとれた内容を支給しない場合、不合理と認められるものに当たりうることに留意。
■無事故手当(新規追加)
通常の労働者と業務の内容が同一の非正規雇用労働者には、通常の労働者と同一の無事故手当を支給。
■家族手当(新規追加)
労働契約の更新を繰り返しているなど、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者には、通常の労働者」と同一の家族手当を支給。
■住宅手当(新規追加)
住宅手当であって、転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものについて、通常の労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある非正規雇用労働者には、通常の労働者と同一の住宅手当を支給。
■病気休職・休暇(記載の充実)
労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者にも、通常の労働者と同一の病気休職・休暇(療養への専念を目的とした休暇に限る)期間に係る給与を保障。
■夏季冬季休暇(新規追加)
非正規雇用労働者にも、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与。
■褒賞(新規追加)
褒賞であって、一定の期間勤続した労働者に付与するものについて、通常の労働者と同一の期間勤続した非正規雇用労働者には、通常の労働者と同一の褒賞を付与。
・住宅手当
正社員、パート・有期雇用労働者のいずれも、実態として転居を伴う配置の変更をしていない場合において、正社員だけに住宅手当を支給することの不合理性が示されています。
・正社員人材確保論
正社員の人材確保や定着を図る目的で賞与や退職金の対象を正社員だけにしているというところは多いように思いますが、そのような抽象的な理由だけで直ちに不合理ではないと認められるものではなく、あくまでも待遇の性質や目的に照らして判断されるものであることが示されています。
・無期雇用フルタイム
短時間労働者にも有期雇用労働者にも該当しない、無期雇用フルタイム労働者については均等・均衡待遇の対象外でしたが、その部分についても同一労働同一賃金のガイドラインに留意し、不合理な待遇差を解消することが求められる旨が示されています。
・通常の労働者の待遇引き下げによる待遇差の解消
待遇改善にあたっては、正社員の待遇を引き下げるのではなく、パート・有期雇用労働者の労働条件の改善を図ることで解消することも求められており、これまで以上に企業には丁寧な対応が求められることになります。
・定年後に継続雇用された有期雇用労働者
定年退職したから一様に条件を切り下げてもよいということではなく、定年退職はあくまでも待遇差を考える上での要素の一つであり、待遇差の合理性は、待遇の性質や目的に照らして判断する必要があることが示されています。
待遇差の合理性は「正社員だから、パートだから」という雇用形態のみで判断されるものではありません。職務の内容、責任の程度、人材活用の仕組み等を踏まえ、それぞれの待遇の趣旨や性質に照らして判断されます。
そのため、企業では次のような点を改めて確認しておくことが重要です。
・住宅手当や家族手当は、どのような趣旨で支給しているのか。
・賞与や退職金は、何に対して支給する制度なのか。
・正社員とパート・有期雇用労働者との待遇差は、その趣旨に照らして合理的に説明できるか。
ガイドラインがより詳細に示され、企業にはこれまで以上に丁寧な対応が求められることになります。各待遇の考え方を整理し、不合理な待遇差となっていないか点検しておきましょう。
2、労働条件通知書への記載事項の追加(パート・有期法施行規則)
令和8年10月1日以降、パート・有期雇用労働者に交付する労働条件通知書には、新たに「通常の労働者との待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨を記載することが必要となります。
なお、事業主が説明する義務自体は従来から定められており、今回新たに創設されたものではありません。今回の改正は、労働者にその権利を周知し説明を受けやすい環境を整えることを目的としています。そのため、通知書の様式を改定するだけでなく、説明を求められた際に、待遇差の内容や理由等をわかりやすく説明できるよう、説明資料や社内の運用を準備しておくことが大切です。
パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際や契約更新の際には、現行制度のもとにおいても、通常の労働条件に加えて、次の事項の明示が必要です。
<昇給の有無>・<退職手当の有無>・<賞与の有無>・<相談窓口>
■令和8年10月から追加される事項
上記に加えて、令和8年10月1日からは次の事項の明示が必要になります。
・待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨
| <労働条件通知書の記載例>
次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)などについて説明を求めることができる。 部署名 担当者職氏名 (連絡先 ) |
(厚生労働省パンフレットより)
3、雇用管理の改善等に関する措置の見直し(告示(雇用管理指針))
事業主が講ずべき雇用管理上の措置についても見直しが行われ、公正な賃金の決定に向けた取組や労使間の話し合いの促進、相談体制の整備、教育訓練・福利厚生の利用機会の確保等に関する内容が追加・充実されています。
※その他の改正内容については、厚生労働省公表資料をご確認ください。
4、まとめ
今回の改正を受けて、企業が取り組むべき主な内容は、次のとおりです。
1、正社員、パート・有期雇用労働者の待遇差の有無を検証するために、それぞれの賃金や福利厚生面等の現状の待遇を洗い出します。
2、待遇差が合理的なものかどうか検証するために、基本給の決定方法、諸手当の支給基準、賞与、退職手当、福利厚生(施設の利用、休暇、休職等)等、その一つ一つに対し、趣旨や目的を整理します。
3、待遇一つ一つの趣旨や目的に照らして、現状ある待遇差が合理的かどうか検証します。合理的だと判断できた場合は、従業員にその説明ができるよう、説明資料等の準備をします。
4、不合理な待遇差があった場合は、待遇差の解消に向けた制度の構築・整備を行う必要があります。そしてその内容を明確にし、従業員へ周知するためには、就業規則や賃金規程等に落とし込むことも重要な作業の一つとなります。
5、10月1日以降の労働条件通知書は、「待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」を追加した書式に変更することを忘れないようにしましょう。同時に、待遇差の説明が従業員に対してわかりやすく行えるよう、必要資料や説明用の書面を整えておくことも必要です。
厚生労働省のホームページには、ガイドラインはじめ、改正後の労働条件通知書のひな形等も公開されています。
各種手当や待遇の趣旨を改めて整理し、合理的に説明できる制度へと見直すことは、不合理な待遇差の解消だけでなく、従業員の安心感や働きがいの向上にもつながると思います。従業員が安心して能力を発揮できる職場は、企業への信頼や貢献意欲を高め、結果として組織全体の活性化にもつながるのではないでしょうか。
今回の改正を、見直しの好機として積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。
詳細は下記厚生労働省のホームページをご確認ください。

