賃金のデジタル払いについて
2023年1月10日
労働基準法施行規則の一部を改正する省令により施行規則の一部が改正されました。
これにより、賃金支払いの例外として、厚生労働大臣が指定する資金移動業者の口座への資金移動による賃金の支払い方法(賃金のデジタル払い)があらたに選択できるよう定められました。
今回の改正の基礎となっている労働基準法第24条に規定されている賃金支払いのルールから確認していきましょう。
1.労働基準法第24条(賃金支払いについて)
「賃金は、通貨で、全額を、労働者に直接、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。」
つまり、賃金は、「海外通貨や現物ではなく日本円の現金で」、「法令で定められた税金や社会保険料等及び事前に労使協定で控除することを協定しているもの以外は賃金から控除することなくその全額を」、「代理人や保護者ではなく、労働者の年齢にかかわらず直接労働者本人に」、「毎月1日から末日までの間に1回以上支払うこと」、そして「その支払い日は特定の日(毎月15日、毎月末日等)を決定して振り込むことが必要」とされています。
各項目に一定の例外はあるものの、概ね原則としてこのように定められています。
通常よく行っている銀行振り込みによる賃金支払いも、本来は日本円の現金で支給することを原則としているところ、その例外として本人の同意があることを前提に認められているものとなります。
今回の賃金のデジタル払いは、この従前から認められていた賃金の振込み等に加えて新たに認められることとなった例外の定めとなります。
2.令和5年4月1日 資金移動業者口座への賃金支払い(賃金のデジタル払い)解禁
賃金の支払い方法について、原則は通貨としつつ、例外として本人の同意がある場合は銀行その他金融機関の預貯金口座への振込みや、証券総合口座への払込みによることができるとされています。
便宜上、賃金支払いの多くは金融機関等の預貯金口座への振込の方法がとられていると思います。
ここに令和5年4月1日以降、QRコード決裁や電子マネー決裁等のキャッシュレス決裁の普及や送金サービスの多様化に対応する形で、デジタルマネーでの支払い方法(厚生労働大臣が指定する資金移動業者への賃金の資金移動による支払い)が例外として追加されることになります。
あくまで選択肢が一つ増えるということであり、強制するものでも義務でもありません。
従業員が希望した場合でも会社に応じる義務があるものでもなく、会社が希望していない従業員に強制することもできません。
また導入するには、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、ない場合は労働者の過半数を代表する者と、賃金デジタル払いの対象となる労働者の範囲や取扱指定資金移動業者の範囲等を記載した労使協定を締結する必要があります。
その上で、賃金のデジタル払いを希望する個々の労働者は、留意事項等の説明受け、制度を理解した上で、同意書に賃金のデジタル払いで受け取る賃金額や、資金移動業者口座番号、代替口座情報等を記載して、使用者に提出することが必要になります。
また、資金移動業者ならどこでも利用できるわけではなく、厚生労働省の審査後、指定を受けた指定資金移動業者の中から選択することになります。
令和5年4月1日から、資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請を行うことができ、指定された事業者については厚生労働省のホームページ内に掲示されていくようです。
審査には数カ月の期間を要する場合があるとされていることから、実務上の運用開始はもう少し先になることが予測されます。
会社として制度の導入をどうしていくか、従業員から問い合わせがあった際の対応、また制度を取り入れる場合はその準備等を、現段階から検討していくことが望ましいと思います。
詳細は下記厚生労働省ホームページをご参照下さい。