給与のデジタル払いがいよいよ現実的に
2025年2月4日
~給与のデジタル払いがいよいよ現実的に~
PayPayが給与のデジタル払いに対応
令和5年4月から、デジタルマネーによる給与の支払いが解禁されています。
これは昨今のキャッシュレス決済等の普及に対応する流れですが、デジタルマネーならどこの事業者のものでも給与のデジタル払いができるというものではなく、厚生労働大臣の審査を受け指定された事業者(指定資金移動業者)のデジタルマネーでのみ給与のデジタル払いが認められるというものです。
実務上、そういった指定を受けた業者がないと導入ができない仕組みです。
令和6年8月にPayPay株式会社が指定資金移動業者第1号として指定されたことを受け、いよいよ現実的に給与のデジタル払い導入の検討が可能な段階に入ってきたといえるでしょう。
ただし、ではすぐに給与のデジタル払いができるのかというとそうではありません。
給与のデジタル払いを導入するには、いくつかの手順を踏む必要があります。
今回は実際に給与デジタル払いを導入するうえで必要な手順について確認していきましょう。
1、導入手順
①厚生労働大臣の指定を受けた指定資金移動業者の確認
指定資金移動業者は厚生労働省のホームページ上で確認できます。(現在指定を受けている業者はPayPay株式会社と株式会社リクルートMUFGビジネスの2社。他に審査中が2社。令和6年12月13日現在:厚生労働省ホームページより)
②導入する事業者の検討
どの事業者を選択するのか、労働者のニーズ及び便宜を考慮のうえ検討します。(複数の事業者を指定することも可能)
③労使協定の締結
給与のデジタル払いの導入について、労使が合意し、あらかじめ労使協定を締結する必要があります。
労使のうち一方でも同意しない場合は導入できません。
<労使協定に記載する内容>
・対象となる労働者の範囲
・対象となる賃金の範囲とその金額
・取扱指定移動業者の範囲
・実施開始時期
④就業規則(給与規定)の変更及び労働基準監督署への届出
※常時10人以上の労働者を使用している事業場は、就業規則を作成し労働基準監督署長へ届出なければなりません。
デジタル払いは給与の支払い方法に関することですので、その内容に対応する規定に改定する必要があります。
⑤労働者への説明
給与のデジタル払いの留意点について労働者に説明しなければなりません。
指定資金移動業者へ説明を委託することもできますが、指定資金移動業者以外には委託できません。
また、説明をする際には、デジタル払いの他に、預金口座や証券総合口座への振り込みも、支払方法の選択肢として同時に提示する必要があります。
労働者への説明を怠ったり、現金かデジタル払いかの二択の選択肢しか与えなかった場合又はデジタル払いを強制したような場合は、労働基準法に違反し、罰則の対象になります。
説明すべき内容は厚生労働省がホームページ上で公表している同意書の裏面に記載されています。
⑥労働者の個別同意
個別の同意を取得します。留意事項の説明を指定資金移動業者へ依頼した場合でも、個別の同意は事業主がとる必要があります。
その際には、デジタル払いを行う上で必要な情報も一緒に取得します。(デジタル給与の振り込みに必要な口座番号、デジタル払いの希望額、デジタル給与が上限を超えた場合に振り込みをする預金口座の口座情報等)
2、PayPay給与デジタル払いの場合
まずは、導入手順で説明した労使協定締結、就業規則の変更・届出及び労働者への留意事項の説明が必要です。
その後PayPayの場合、労働者本人が自分のPayPayアプリから給与受取の申込をします。
PayPayから給与受取口座への入金用口座番号が割り当てられますので、その番号を会社に伝えます。(同意書に記載)
会社がその口座番号へ通常通りの振り込み処理をするだけで労働者のPayPayアカウントに給与がチャージされる仕組みとなっています。
会社がPayPayと契約を交わしたり書類の提出をしたりするようなこともなく、会社の労力的負担があまりかからない設計となっているようです。
PayPayアカウントでの給与保有上限は20万円とされており、それを超える部分についてはあらかじめ登録している銀行口座等に自動で送金されます。
例えば毎月20万円のPayPay払いを希望していても、前月のPayPay給与が5万円残っている場合は、15万円のみPayPayアカウントに支払われ、残りの5万円は登録されている銀行口座等に自動で送金される仕組みです。
さらにはPayPayで受け取った給与も、自分の銀行口座等に送金し、1円以上1円単位で現金化することも可能です。
また、PayPay破綻時には保証機関による保証が提供され、不正取引時にも一定の要件のもと保障を受けることができるようになっています。
詳細は厚生労働省ホームページ及びPayPay株式会社のホームページをご確認ください。
3、まとめ
以上より、デジタル払いは、厚生労働大臣の指定を受けた業者のデジタルマネーでしか行えないこと、またデジタル払いを行うためには必要な手順を踏む必要があるということがお分かりいただけたと思います。
デジタル払いは労使の合意を必要とするものですので、労働者から希望があったからといって必ず導入しなければいけないというものではありませんし、仮に労使の合意によりデジタル払いを導入したとしても従業員全員がデジタル払いをしなければいけないということはなく、もちろん強制することもできません。
利用が普及しているPayPayが給与のデジタル払いに対応したことから、今後労働者からも利用を希望する声や問い合わせが増えてくることも想定されます。
この機会に、デジタル払いの内容や導入手順をよく理解し、適切な対応ができるようにしておきましょう。
詳細は下記をご確認ください。