特例的な繰下げみなし増額制度の開始
2023年2月2日
令和4年4月の年金制度改正により、繰下げ受給の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられました。
原則として老齢基礎年金、老齢厚生年金は65歳から受給できますが、66歳以降75歳の間の希望する月から繰下げ受給することができます。
この場合繰下げた月数1月につき0.7%の割合で年金が増額され、この増額率は一生涯変わりません。
65歳以降に受給権を取得した場合についても、繰下げの上限が5年から10年に引き上げられています。対象は令和4年3月31日時点で70歳に達していない方(昭和27年4月2日以降生まれの方)又は受給権を取得した日から5年を経過していない方です。
上記改正を踏まえて、令和5年4月1日より「特例的な繰下げみなし増額制度」が施行されます。
今回の改正により、70歳到達後に繰下げ申出をせずに遡って年金を受け取ることを選択した場合、請求の5年前の日に繰下げ申出したとみなし、増額された年金の5年分を一括して受け取ることができるようになります。
これは70歳以降も安心して繰下げ待機を選択することができるように制度改正されたものです。
65歳で老齢年金の受給権が発生し繰下げ待機をした場合は、繰下げ申出月の翌月から増額した老齢年金を受給するか、65歳(最大5年)に遡って増額なしの老齢年金を一括受給するかのいずれかになります。
現行のままでは、仮に71歳の時に繰下げせずに一括受給を選択した場合、最大で5年分を増額なしで受給することになりますので、65歳から66歳の1年分が時効で消滅してしまうことになります。
今回の改正により、仮に71歳で一括受給を選択した場合は、5年前の66歳時点で繰下げ申出があったとみなし、65歳から66歳までの1年分の繰下げ加算(0.7%×12月=8.4%増額)がついた老齢年金額をまとめて5年分受け取ることが可能となります。
そしてこの割増率により加算された年金額をその後受給していくことになります。
在職老齢年金制度により、報酬と年金額との調整で年金の一部または全部が支給停止になっているケースがありますが、この支給停止になっている部分については、繰下げしても増額の対象にはなりません。
特に勘違いしやすいところですので注意が必要です。
この改正の対象者は、昭和27年4月2日以降生まれの方(令和5年3月31日時点で71歳未満の方)又は、老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給権を取得した日が平成29年4月1日以降の方(令和5年3月31日時点で老齢基礎・老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して6年を経過していない方)です。
ただし、80歳以降に請求する場合や、請求の5年前の日以前から障害年金や遺族年金を受け取る権利がある場合は、特例的な繰下げみなし増額制度は適用されません。
特例的な繰下げみなし増額制度の手続きは令和5年4月1日から可能となります。
繰下げ制度は年金が増額されるというメリットもありますが、個人の状況によりデメリットになることもあります。
制度を十分に理解したうえで、ご自身のライフプランに合わせて慎重にご判断されることをお勧め致します。
その他、詳細は日本年金機構のホームページをご参照ください。