職業安定法改正について
2022年10月4日
2022年10月1日施行 職業安定法改正について
求職者が安心して求職活動を行うことができる環境の整備と、マッチング機能の質の向上を目的とし、今回の改正では、求人等に関する情報の的確な表示の義務化、個人情報の取扱いに関するルール等が整備されました。
また募集情報等提供事業者の定義が拡大し、これまで職業安定法の規制の対象外であった求人メディア等に対しても職業安定法の規制が及ぶように改正されています。
募集情報等提供事業者のうち、求職者に関する情報を収集する募集情報等提供事業者(特定募集情報等提供事業者)には届出の義務化なども新設されています。
改正の対象は、求人企業、職業紹介事業者、募集情報等提供事業者等に及びますが、ここでは求人企業に対する改正について取り上げたいと思います。
○ 改正点1
★求人等に関する情報(①求人情報 ②自社に関する情報)の的確な表示の義務化
新聞・雑誌等に掲載する広告、文書の掲出、書面、FAX、ウェブサイト、放送等、様々な広告・連絡手段が的確な表示の対象です。
①求人情報や自社に関する情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を行ってはいけません。
<虚偽の表示とは~> 意図してその情報と実際の労働条件や自社の情報等を異ならせた表示で具体的には下記のような内容が該当します。(一例です)
●「正社員」と謳いながら、実際には「アルバイトやパート」の募集をする。
● 基本給〇円と表示しながら実際にはその金額よりも低額の賃金を予定している場合
● 実際には採用の予定のない求人を出す場合
● 上場企業でないにも関わらず、上場企業であると表示する。
● 自社の業種について、実際と異なる業種を記載する。
※当事者の合意に基づき、求人等に関する情報から実際の労働条件を変更することとなった場合は、虚偽の表示には該当しません。
<誤解を生じさせる表示とは~> 虚偽の情報でなくとも、一般的・客観的に誤解を生じさせるような表示で具体的には下記のような内容が該当します。(一例です)
● 関係会社・グループ企業が存在している企業が募集を行う場合、実際の募集企業とその他が混同しないように表示しなければなりません。
(例)優れた実績のあるグループ企業の実績を大きく記載し、あたかもその求人企業の 実績であるかのように表示する。
● 雇用契約を前提とした労働者の募集と、フリーランス等の請負契約の受注者の募集が混同されることのないよう表示しなければなりません。
(例)請負契約の案件であることを明示せず、労働者の募集と同じ表示をする。
● 月給・時間給等の賃金形態、基本給、定額の手当、通勤手当、昇給、固定残業代等の賃金等について、実際よりも高額であるかのように表示してはいけません。
(例)社内で高い労働者の基本給を例示し、全ての労働者の基本給であるかのように表示する。
〇万円~〇万円と賃金に幅を持たせることや、モデル収入例を表示すること自体は許容されますが、賃金の幅の上限を実際よりも高額にし、高額な賃金が支払われる可能性があるような表示や、モデル収入例であるのに必ず払われるような表示は「誤解を生じさせる表示」に該当します。
モデル収入例を表示する場合は、同職種社員の給与の平均を例示する等、誤解を生じさせない表示にする必要があります。
(例)固定残業代について基礎となる労働時間数を明示せず、基本給に含めて表示する。
基本給と固定残業代を分け、固定残業代が何時間相当の残業にあたるのか、また残業の有無にかかわらず支給することと、実際の残業時間がその時間を超えた場合は、超えた時間につき別途支給する旨等の記載が必要です。
● 職種や業種について、実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いてはいけません。
(例)営業職が中心の業務について、事務職と表示する。
②正確かつ最新の内容に保つ義務
以下の措置を講じる等、求人情報を正確、最新の情報に保たなければなりません。
● 募集を終了・内容変更した場合、速やかに求人情報を終了又は変更する。
● 求人メディア等を活用している場合は、募集の終了や変更が反映されるよう、速やかに依頼する。
● いつの時点の求人情報か明らかにする。(募集を開始した時点、内容を変更した時点)。
● 求人メディア等の事業者から、求人情報の訂正や変更を依頼された場合は、速やかに対応する。
○ 改正点2
★個人情報の取扱いに関するルールの改正
①個人情報利用目的の明示義務の創設
改正前は、求職者の個人情報を「業務の目的の達成に必要な範囲内で収集・使用・保管しなければならない」と規定されていましたが、今回の改正により、業務の目的の達成に必要な範囲内で、インターネットの利用、書面の交付・掲示、メールの利用等その他適切な方法により「目的を明らかにして」収集・使用・保管することが義務づけられました。
求職者の個人情報がどのような目的で収集され、保管され、又は使用されるのか等、求職者が一般的かつ合理的に想定できる程度、具体的に明示する必要があります。
× グループ企業の採用選考にも使用するにもかかわらず、「自社の採用選考の為に使用します」と表示。
○「当社の募集ポストに関するメールマガジンを配信するために使用します」と表示。
○「面接の日程等に関する連絡に使用します」と表示。
その他、求人企業は、求職者等の秘密を守る義務、個人情報のみだりな第三者提供の禁止義務も負っています。
多くの企業では、自社のホームページ等に求人情報を掲載したり、求人メディア等を利用する機会があると思います。
10月1日以降は、上記改正内容が義務化されていますので、改正を知らずに違反してしまうというようなことがないよう、注意が必要です。
詳細は下記厚生労働省のホームページをご参照ください。