36協定「特別条項」の発動手続きを適切に行っていますか?
2023年9月4日
■36協定及び特別条項について
36協定の締結(労使)・届出(労働基準監督署)がないと、時間外労働(※1法定時間外労働)や休日労働(※2法定休日労働)をさせることができません。
※1法定労働時間・・・・・1日8時間、週40時間以内
※2法定休日・・・・・・・週に1日の休日(変形休日制の場合は4週に4日の休日)
36協定を締結すれば無限に時間外労働をさせることができるわけではなく、上限時間が定められています。
2019年4月施行(中小企業は2020年4月~)の時間外労働の上限規制により、罰則付きの上限が法律に規定され、臨時的な特別の事情がある場合にも上回ることのできない上限が設けられました。
(2024年3月31日まで、建設事業、自動車運転の業務、医師等は時間外労働の上限規制の適用が猶予されています。)
<36協定の上限>
時間外労働の合計が月45時間、年360時間(1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間、年320時間)を上限とし、臨時的特別な事情がなければこれを超えることはできません。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合、特別条項付きの36協定を締結・届出することで、上記の36協定の上限時間を超えて時間外労働をさせることができます。
ただし、この場合も上限が定められています。
<特別条項の上限>
時間外労働が年720時間以内
時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
時間外労働と休日労働の合計について2~6か月の平均がすべて80時間以内
時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月が限度
(※時間外労働・・・法定労働時間を超える労働 休日労働・・・法定休日の労働)
■特別条項の発動手続きについて
特別条項付きの36協定の中で、「限度時間を超えて労働させる場合における手続き」を協定しています。
特別条項を発動する際にはこの手続きを踏むことが必要になりますので注意が必要です。
限度時間を超えて労働させる場合における手続きは、労働者代表に対する事前通知や協議などとしていることが多いと思います。
協議としている場合は労使間での協議が必要ですし、労働者代表への通知としている場合は一方的に通知することで手続き要件を満たすことになります。
いずれの場合も口頭ではなく書面等で行い、特別条項の発動手続きを適切に行っている記録を残すことが労務管理上必要です。
<特別条項発動協議書又は通知書の記載事項の例>
・対象労働者 〇〇課 〇〇 〇〇
・特別条項の発動事由 大規模なクレーム対応
・特別条項発動期間 〇年〇月〇日~〇年〇月〇日
・特別延長時間 1か月〇時間以内(含休日労働))
・健康福祉措置 特別条項発動期間中、11時間の勤務間インターバルを適用
毎月、各労働者の特別条項の発動タイミングごとに上記手続きを行う必要があります。
そのためには、労働者の前日までの時間外労働と休日労働の時間を把握している必要があります。
そして特別条項の発動は年に6回を限度(個人ごと)としているため、労働者毎に特別条項の発動回数を記録していく必要もあります。
また、特別条項の中では、「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」も定めています。
特別条項を発動した際には、健康・福祉確保措置の実施状況の記録も作成して保存しておく必要があります。
今回は、見落としがちな特別条項の発動手続きについて取り上げました。
特別条項の発動手続きを適切に行っているかどうかは、労働基準監督署の調査時等にも問われる部分となりますので、やっていなかったという場合はぜひ今後適切に手続きを行うようにしていただきたいと思います。
また、使用者には安全配慮義務があり、労働者が長時間労働で健康を害すること等がないよう配慮し、時間外労働や休日労働は最小限にとどめるよう努めることも必要とされています。
いずれにしても各労働者の日々の労働時間管理や時間外労働の手続き等が適切に行われていないとできない内容となります。
2024年4月からは、時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた、建設事業、自動車運転の業務、医師等についても上限規制の適用が始まります。
この機会に、自社の労働時間の管理方法、36協定の締結・届出(協定内容含む)、特別条項の発動手続き等が適切かどうか確認してみてはいかがでしょうか。
詳細は下記をご参照ください。