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【YouTube動画】年次有給休暇についてアップいたしました。
2025年10月29日
【 年次有給休暇の制度 】 ・年次有給休暇の正社員の付与要件 ・年次有給休暇のパート・アルバイトの付与要件 ・年次有給休暇の時季変更権、年次有給休暇の時季指定義務 ・年次有給休暇の計画的付与 ・年次有給休暇の時間単位付与 ・年次有給休暇の時効、年次有給休暇に対して支払うべき賃金 上記ついて簡単にまとめました。 ぜひ、制度利用の際のご参考にしてください。
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11月は「過労死等防止啓発月間」 労務管理ポイント
2025年11月5日
11月は「過労死等防止啓発月間」
~企業が取り組むべき労務管理ポイント~
毎年11月は厚生労働省が定める「過労死等防止啓発月間」とされ、長時間労働の是正や賃金不払残業等の解消に向けた重点的な監督指導等が実施されます。
働き方改革が進む一方で、長時間労働やメンタルヘルス不調により労災申請は増加傾向にあり、企業としての取り組みはますます重要になっています。
これから迎える12月~1月は、繁忙時期となり残業時間が増えやすく、健康障害や労務トラブルが起こりやすい季節です。この啓発月間を機に、あらためて企業がおさえておきたい労務管理のポイントをまとめました。
1、長時間労働と過労死等の関係について再確認
■過労死の定義
①業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
②業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
③死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
■過労死ラインとされる時間外・休日労働時間の目安(脳・心臓疾患に係る労災認定基準)
● 週40時間を超える時間外・休日労働がおおむね45時間を超えて長くなるほど業務と発症との関連性は徐々に強まる。
● 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価される。
業務の過重性は労働時間のみによって判断されるものではなく、就労態様等の負荷要因も含めて総合的に評価されるものであるため、時間外・休日労働時間の把握はもちろん、単純に時間の長さだけで判断せず、勤務時間の不規則性、業務量、頻繁な出張の有無、緊張や責任負担が強い業務の有無、ハラスメント等による心理的負荷状況、職務環境等、総合的な管理が必要です。
2、労働時間の適正把握
厚生労働省の資料では、過重な長時間労働や割増賃金の未払いなどの問題の背景には、労働時間を適切に管理できていないケースがあるとし、適正な労働時間の把握の重要性があげられています。使用者には、従業員の労働時間を適切に管理し、適正に把握する義務があります。適正把握できていない場合は、早急に体制を整備しましょう。また、月末しか労働時間を確認していないという運用では、月中における労働時間の調整や特別条項の発動手続きを適切に行うことができませんので、こちらも改善が必要です。
3、36協定の締結・周知、及び運用の見直し
法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合、又は休日出勤をさせる場合は、36協定を過半数労働組合(労働組合がない場合は過半数代表者(36協定を締結するための過半数代表者を選出することを明らかにしたうえで投票、挙手等により選出する必要があります。))と締結し、労働基準監督署へ届け出ることが義務になっています。36協定がない場合は、時間外労働や休日労働をさせることができませんのでご注意ください。また、36協定があるからといって無制限に残業させられるわけではありません。
<確認すべきポイント>
● 36協定を適切に締結し、労働基準監督署へ届け出ているか。
● 36協定を従業員の見やすい場所へ掲示するなど、周知しているか。
● 実態が協定時間内に収まっているか。
● 特別条項が「常態化」していないか。
● 特別条項の発動手続きを正しく行っているか。
● 割増賃金が正しく計算・支給されているか。
特に特別条項は、本来“突発的・臨時的”な場合に発動できるものです。常態化している場合は改善が必要です。また、特別条項の発動手続きを踏んでいないケースが見受けられます。特別条項を発動するには、協定で定めた発動手続きを踏むことが必要ですので注意しましょう。
※特別条項とは・・・通常の時間外労働の上限(原則として月45時間・年360時間)を、臨時的、突発的な事情がある場合に限って一時的に超えることを認める特例の労使合意。(時間外労働は年720時間以内、時間外労働・休日労働の合計は単月100時間未満及び2~6か月平均80時間以内。原則の月45時間を超えることができるのは年6回まで)
4、メンタルヘルス対策の強化
精神障害の労災認定件数は年々増加しており、早期対応が非常に重要です。
<企業として取り組める対策例>
● ストレスチェック結果の適切な活用(高ストレス者に対する医師による面接指導の実施)
※労働者数50人未満の事業場にについても令和7年5月公布改正労働安全衛生法によりストレスチェックや高ストレス者への面接指導が義務付けられました。(施行は公布後3年以内)
● 管理職へのラインケア研修の実施
※ラインケアとは、管理職が部下の健康状態を把握し、職場の問題を改善し、不調の早期発見・早期対応を行うことです。
● 職場内でのハラスメント防止対策(ハラスメント防止や相談窓口の周知・研修実施等)
● 業務量の偏り等の把握や相談体制の整備
● 長時間労働者への医師の面接指導(対象者への積極的運用。管理監督者も対象)
メンタル不調の前兆を見逃さない体制づくりがポイントです。
5、長時間労働の早期発見とフォロー、及び事前対策
長時間労働は、放置するとメンタル不調や健康障害につながります。
時間外労働や休日労働が多い従業員の把握、年次有給休暇の取得が進んでいない従業員の把握、業務ミスや遅刻・欠勤状況、表情の変化等のラインケア等を通して、異変を早期に発見する仕組みを作りましょう。
異変を察知した場合は、業務量の調整、休息の確保(代休、年次有給休暇取得促進、勤務管インターバルの確保等)、配置転換、業務分散、面談の実施等、早急にまた柔軟に対応できる体制作りをしておくとよいでしょう。
事前対策では、心身の疲労を蓄積させない職場作りとして、年次有給休暇の計画的な取得促進、連続休暇の設定、インターバル制度の導入等も会社が取り組める有効な手段となります。また、業務の隔たり等の申告、体調不良やハラスメントの相談等、相談体制の整備・周知も大変重要となります。従業員が相談しやすい相談体制(相談窓口が適切に機能している)になっているかどうか等、定期的な検証・整備、周知等も有効だと思います。
6、まとめ
企業には、従業員の生命・健康を守る安全配慮義務があります。過重労働や健康悪化のサインを放置していた場合、損害賠償請求などの責任が生じることがありますので注意が必要です。
過労死防止は「仕組みづくり」と「早めの対応」が重要です。
厚生労働省は、過労死防止のための取組として、「長時間労働の削減、過重労働による健康障害の防止、働き方の見直し、職場におけるメンタルヘルス対策の推進、職場のハラスメント予防・解決、相談体制の整備等」をあげています。これらは過労死防止の為の取組だけではなく、従業員の定着や生産性向上にもつながる取り組みです。11月は、年末年始の繁忙に向けて、要員計画の見直し、担当者の業務偏りの是正、管理職への注意喚起等、過重労働防止の対策を実施するにも良い時期だと思います。
11月の啓発月間をきっかけに、自社の労務管理体制をあらためてチェックしてみてはいかがでしょうか。
詳細は下記、厚生労働省ホームページをご確認ください。
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協会けんぽ 電子申請サービス開始
2025年11月5日
全国健康保険協会(協会けんぽ)が、電子申請サービスを開始することを発表しました。(令和8年1月13日サービス開始予定)
協会けんぽでは、これまで「紙」の申請書によって各種手続きが行われていました。
申請用紙を印刷して、記入して、郵送してと、手間/時間/費用をかけて手続きを行っていいましたが、今後はインターネットを通じて、パソコンやスマートフォンを利用して手続きを完了させることが可能になります。
◆申請できる方
協会けんぽの加入者(「被保険者」と一部の申請においては「被扶養者」)および「社会保険労務士」が利用可能です。
加入者の申請は、マイナンバーカードを利用して、申請者の健康保険資格情報を取得して申請します。
事前に、利用端末(スマートフォン/タブレット端末/パソコン)の準備と、マイナンバーカードの取得が必要です。
(利用できる方)
・健康保険加入の被保険者(一部の申請のみ被扶養者が申請可)
・船員保険加入の被保険者(一部の申請のみ被扶養者が申請可)
※健康保険法第3条第2項(日雇特例)被保険者及びその被扶養者は、電子申請サービスを利用することはできません。
◆対象申請書
協会けんぽが取り扱っている現金給付申請をはじめとする健康保険の主要なお手続きについて利用することができます。
◆結果等の確認
審査結果は、書面で送付されます。届いたら内容を確認してください。
・審査状況は、随時、電子申請サービス内で確認することが可能です。
・申請内容に不備があった場合は、郵送でお知らせするとともに、電子申請サービス内で申請データ等を返却します。(一部の申請では、郵送によるお知らせのみです。)
・再申請する場合などは、返却した申請データを利用して再申請することが可能です。
◆サービス提供時間
平日 8:00 ~ 21:00
・平日の上記時間外および土日祝日、年末年始12/29~1/3はご利用できません。
・17:15以降に送信完了した申請は、翌営業日の受付日扱いになります。
利用手順や操作ガイドの案内はまだ準備中となっていますので、更新されるのを待ちましょう。
詳細や注意事項は、全国健康保険協会(協会けんぽ)のホームページでご確認ください。
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育児・介護支援における周知・意向確認等義務の整理
2025年10月3日
2025年4月・10月改正を踏まえた実務対応
育児・介護支援における周知・意向確認等義務の整理
2025年は、育児・介護休業法に基づく事業主の周知・意向確認等の義務が段階的に拡大されました。まず、2025年4月1日からは、介護離職防止の観点から、介護に直面した労働者に対し、制度内容の周知や休業取得等の意向確認を個別に行うこと、また介護に直面するよりも早い段階での情報提供が義務化されました。さらに、2025年10月1日からは育児期にある労働者について、柔軟な働き方を実現するための措置の義務化とそれに伴う制度の個別周知・意向確認、及び仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と配慮が義務化され、事業主が対応すべき範囲は大きく広がります。もともと2022年4月から、妊娠・出産を申し出た従業員に対しての制度内容の周知と意向確認は義務化されていましたが、2025年に更に上記が追加されたことで、「どの時点で、どの対象者に、何を行う必要があるのか」がわかりづらくなっています。そこで以下に、育児・介護別に、事業主が行わなければならない周知・意向確認等の時期や内容等をまとめてみました。
施行日 区分 対象者 義務内容 周知等の時期 2022年 4月1日
育児 本人または配偶者の妊娠・出産を申出た労働者 育児休業制度等の個別周知・意向確認 労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき 周知事項 ①育児休業・産後パパ育休に関する制度の内容 ②育児休業・産後パパ育休の申出先
③育児休業給付に関すること
④労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱いについて
施行日 区分 対象者 義務内容 周知等の時期 2025年 4月1日
介護 介護に直面した旨の申出をした労働者 介護休業制度等の個別周知・意向確認 介護に直面した旨の申出があったとき 周知事項 ①介護休業に関する制度、介護両立支援制度等の内容 ②介護休業・介護両立支援制度等の申出先
③介護休業給付金に関すること
施行日 区分 対象者 義務内容 周知等の時期 2025年 4月1日
介護 介護に直面する前の早い段階(40歳等)の労働者 介護休業制度等の情報提供 ①労働者が40歳に達する日 (誕生日前日)の属する年度(1年間)
②労働者が40歳に達する日の翌日
(誕生日)から1年間
のいずれか
情報提供事項 ①介護休業に関する制度、介護両立支援制度等の内容 ②介護休業・介護両立支援制度等の申出先
③介護休業給付金に関すること
施行日 区分 対象者 義務内容 周知等の時期 2025年10月1日 育児 3歳未満の子を養育する労働者 柔軟な働き方を実現するための措置の個別周知・意向確認 労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで 周知事項 ①事業主が選択した「柔軟な働き方を実現するための措置(2つ以上)の内容 ②対象措置の申出先
③所定外労働、時間外労働・深夜業の制限に関する制度の内容
施行日 区分 対象者 義務内容 周知等の時期 2025年10月1日 育児 本人又は配偶者の妊娠・出産を申し出た労働者及び3歳未満の子を養育する労働者 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮 ①労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき ②労働者の子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)
聴取内容 ①勤務時間帯(始業および終業の時刻) ②勤務地(就業の場所)
③両立支援制度等の利用期間
④仕事と育児の両立に資する就業条件(業務量、労働条件の見直し等)
配慮 聴取した意向について、自社の状況に応じて配慮する。 (厚生労働省の資料を元に作成)
※情報提供の方法は、いずれも共通で、面談(オンライン可)、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかです。FAXや電子メールは労働者が希望した場合に限ります。また電子メール等は、画面印刷ができるようなものである必要があります。
※申出時と周知・意向確認や意向聴取等は、上記義務とされるタイミング以外にも、労働者の状況に合わせて定期的に行うことが望ましいとされています。
今回は、改正により拡大していく義務の中でも、特に把握しにくい部分について整理してみました。周知等の時期が同じものは合わせて実施したり、対象者をリスト化する等の工夫をすると良いでしょう。会社が対応すべきことはより煩雑となっていますので、改正内容を正しく把握し、対応漏れのないように体制整備を進めていきましょう。また、育児や介護と仕事の両立は、誰にとっても身近な課題です。2025年から拡充された義務への対応は、単なる法令順守にとどまらず、従業員が安心して働き続けられる職場づくりにつながります。制度を整えるとともに、現場での理解と運用を進めていきましょう。
説明に使用する資料等、厚生労働省のホームページには多くの資料が紹介されていますので参考にされるとよいでしょう。詳細は下記をご確認ください。
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令和7年度の最低賃金が決定しました
2025年10月3日
令和7年度の最低賃金が決定されました。
効力の発行日は各都道府県により異なりますのでご注意ください。
神奈川県の場合は、効力発生日は令和7年10月4日です。
都道府県名 引上額 令和7年最低賃金 令和6年最低賃金 発効年月日 岩手 +79 1,031 952 令和7年12月1日 茨城 +69 1,074 1,005 令和7年10月12日 群馬 +78 1,063 985 令和8年3月1日 埼玉 +63 1,141 1,078 令和7年11月1日 千葉 +64 1,140 1,076 令和7年10月3日 東京 +63 1,226 1,163 令和7年10月3日 神奈川 +63 1,225 1,162 令和7年10月4日 長野 +63 1,061 998 令和7年10月3日 静岡 +63 1,097 1,034 令和7年11月1日 福岡 +65 1,057 992 令和7年11月16日 沖縄 +71 1,023 952 令和7年12月1日 ※単位は円
他の都道府県は厚生労働省や各労働局のホームページでご確認ください。
〇最低賃金の適用される労働者の範囲
地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。(パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。)
〇最低賃金の対象とならない賃金
(1) 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
(2) 1箇月を超える毎に支払われる賃金(賞与等)
(3) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金)
(4) 所定労働日以外の労働日に対して支払われる賃金(休日割増賃金)
(5) 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金計算額を超える部分(深夜割増賃金等)
(6) 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当等
〇最低賃金額以上かどうかを確認する方法
支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較します。
(1) 時間給制の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
(2) 日給制の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、
日給≧最低賃金額(日額)
(3) 月給制の場合
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
(4) 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。
(5) 上記(1)、(2)、(3)、(4)の組み合わせの場合
例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記(2)、(3)の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。
〇最低賃金以上の賃金額を支払わない場合の罰則
最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
全国の地域別最低賃金等、詳細は厚生労働省のホームページをご覧ください。
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令和7年10月1日施行 教育訓練休暇給付金とは?
2025年9月2日
令和7年10月1日施行
教育訓練休暇給付金とは?
1 教育訓練休暇給付金が新設されます。
(令和6年5月10日成立の雇用保険法等の一部を改正する法律により創設)
雇用保険被保険者が、教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、賃金の一部が雇用保険から支給される制度です。
2 施行日
令和7年10月1日
3 概要
(1)教育訓練休暇給付金とは
労働者が離職することなく、教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合、その訓練・休暇期間中の生活費を保障するため、失業給付に相当する給付として賃金の一定割合を支給する制度です。
(2)支給対象者
以下の①②両方の要件を満たす一般被保険者(在職中)です。
① 休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があること
(原則11日以上の賃金支払いの基礎となった日数がある月)
② 休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間があること
(離職期間があっても、12か月以内であれば前後を通算できますが、失業給付等を受給している場合は通算できません。また、過去に失業手当や教育訓練休暇給付金、育児休業給付金、出生時育児休業給付金を受けたことがある場合、通算できない期間が生じる場合があります。)
※一般被保険者とは・・・65歳未満の通常の被保険者をさします。
(3)支給対象となる休暇
以下の全ての要件を満たす休暇が対象です。
① 就業規則や労働協約等に規定された休暇制度に基づく休暇
※休暇開始前までに、就業規則等に規定されている必要があります。
② 労働者本人が教育訓練を受講するため自発的に取得することを希望し、事業主の承認を得て取得する30日以上の無給の休暇
※自発的にがポイントです。業務命令で資格を取得させる場合の休暇は対象外とされています。
※教育訓練に専念してもらうため30日以上連続して無給休暇を取得する必要があり、教育訓練休暇中に出勤を求めることはできないとされています。(例えば週に1日は出勤を求めるというようなことはできません。休暇開始時点では想定していなかった理由により結果として就労し収入を得た場合、その日については支給を受けられません。)
※収入を伴う就労を行った日(副業も含む)、教育訓練休暇とは異なる休暇・休業(有給休暇や育児休業等)を取得した日は教育訓練のための休暇とは認められず、その日については支給を受けられません。
③ 次に定める教育訓練を受けるための休暇
・学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校又は各種学校が提供する教育訓練等
・教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等
・職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得等)
(4)受給期間
■ 休暇開始日から起算して1年間です。
※受給期間内と所定給付日数の範囲内であれば、教育訓練休暇を複数回に分割して取得した場合であっても給付金の支給を受けることができます。ただし、期間のカウントは、最初の休暇取得日から1年間です。所定給付日数が残っていても受給期間を過ぎた場合は給付を受けられません。(妊娠・出産・育児・疾病・負傷等の理由により30日以上教育訓練を受けることができない場合等で、ハローワークにより受給期間の延長を認められた場合を除きます)
(5)給付日数
■ 給付日数は、雇用保険に加入していた期間に応じて異なります。
加入期間 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上 所定給付日数 90日 120日 150日 (6)給付日額
■ 原則休暇開始日前6か月の賃金日額に応じて算定されます。
(失業給付の算定方法と同様です)
※賃金日額のほか、年齢と雇用保険に加入していた期間によっても変動します。
(7)その他 注意事項
・解雇等を予定している労働者について、教育訓練休暇給付金の支給対象となる教育訓練休暇を取得させることは認められません。万が一虚偽の申告をした場合は罰則の対象になる場合がありますので注意が必要です。
・教育訓練休暇給付を受給した場合、休暇開始日より前の被保険者期間がなかったものとみなされるため、(リセットされる)原則として一定期間は失業給付等の被保険者期間を要件とする給付金の受給ができなくなります。(ただし、育児休業給付や介護休業給付に係るみなし被保険者期間、教育訓練給付金に係る支給要件期間には影響せず、教育訓練休暇開始前の期間も通算できるとされています。)教育訓練休暇給付金を受給して間もなく自己都合退職した場合等、失業給付がもらえないケースや、勤続年数に応じて区分されている所定給付日数が少なくなる等のケースが想定されますので、その時に、知らなかった等のトラブルにならないよう、労使ともに、事前によく制度を理解したうえですすめていくことが重要だと思います。
(8)まとめ
教育訓練休暇給付金は、これまで存在しなかった「休暇中の生活費を支援する仕組み」を補う目的で新設される制度になります。従業員が安心して自主的に能力開発に取り組めるようにするために生まれたものであり、国が人材育成を後押ししている流れの一つとも言えます。
実際に休暇を取得させるとなると、その間の人員体制の確保や、就業規則の整備等、準備が必要になります。導入には一定のハードルがありますが、従業員が学び直しを通じて成長意欲を高めれば、結果的に会社の成長につながったり、企業の魅力向上につながる可能性もあると思います。また、教育訓練給付制度(教育訓練等の受講費の一部が給付される制度)との併用も、それぞれの支給要件を満たす限り可能とのことです。
新しい仕組みの一つとして検討してみてもよいのではないでしょうか。
手続き方法等、詳細は下記をご確認ください。
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19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定
2025年9月2日
19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における
年間収入要件が変わります。
令和7年度税制改正において、現下の厳しい人手不足の状況における就業調整対策等の観点から、19歳以上23歳未満の親族等を扶養する場合における特定扶養控除の要件の見直し等が行われています。
これを踏まえ、扶養認定日が令和7年10月1日以降で、扶養認定を受ける方が19歳以上23歳未満の場合(被保険者の配偶者を除く)は、現行の「年間収入130万円未満」が「年間収入150万円未満」に変わります。
なお、この「年間収入要件」以外の要件に変更はありません。
◆被扶養者の年間収入要件
<現行>
年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は年間収入180万円未満)および
・同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
・別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
<扶養認定日が令和7年10月1日以降>
年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は年間収入180万円未満、19歳以上23歳未満の場合は年間収入150万円未満)および
・同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
・別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
◆年齢要件(19歳以上23歳未満)の判定
年齢要件(19歳以上23歳未満)は、扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。
例えば、扶養認定を受ける方が令和7年11月に19歳の誕生日を迎える場合には、令和7年(暦年)における年間収入要件は150万円未満となります。
令和7年度税制改正の趣旨との整合性を図る観点から、あくまでも年齢によって判断し、学生であることの要件は求めません。
◆注意事項
令和7年10月1日以降の届出で、令和7年10月1日より前の期間について認定する場合、19歳以上23歳未満の被扶養者にかかる年間収入の要件は130万円未満で判定します。
詳細は、下記ホームページでご確認ください。
従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き/日本年金機構
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年金制度改正法成立(在職老齢年金制度の見直し)
2025年8月4日
令和7年5月16日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が国会に提出され、衆議院の修正を経て、令和7年6月13日に成立しました。
■主な改正内容は・・・
① 社会保険の加入対象の拡大② 在職老齢年金の見直し
③ 遺族年金の見直し
④ 厚生年金等の標準報酬月額上限の段階的引上げ
⑤ その他の見直し(私的年金の員直し等)
今回は、上記の中でも施行日が早い「在職老齢年金制度の見直し」について改正内容を確認していきましょう。
■在職老齢年金の見直しの内容
在職老齢年金の支給停止の基準額を、50万円(2024年度価格)から62万円(2024年度価格)へ引上げ(2026年度までの賃金変動に応じて改定)■施行日
令和8年4月1日
■在職老齢年金見直しの効果
働きながら(厚生年金に加入している又は加入義務の年齢を過ぎても加入要件を満たすような働き方をして給与等を得ている場合)老齢厚生年金を受けることができる人については、給与等(賞与含む)と老齢厚生年金の合計額(1か月当たり)が支給停止調整額(支給停止の基準額)を超える場合には、超えた金額の半分の老齢厚生年金額について支給停止が行われます。
支給停止調整額(支給停止の基準額)が引きあがるということは、これまでよりも多く給与を得ても老齢厚生年金が支給停止にならないということになります。
<計算例>標準報酬月額:400,000円、賞与年額600,000円 厚生年金の月額100,000円の場合を例にとって計算すると・・・
標準報酬月額400,000円+賞与月額50,000円(600,000円÷12月)+厚生年金月額100,000=550,000円
令和7年度の場合、支給停止調整額が510,000円のため、510,000円を超えた40,000円の半分にあたる20,000円が支給停止になります。
令和8年度施行日以降は、支給停止調整額が620,000円(これは2024年度価格のため、実際は賃金変動に応じて改定されます)になるため、同じ賃金等を得ても年金が全額支給されることになります。
■在職老齢年金の支給停止調整額(支給停止の基準額)の直近の推移
在職老齢年金の支給停止調整額(支給停止の基準額)は毎年度賃金変動に応じて改定されますが、ここ数年の推移は、2022年度47万円、2023年度48万円、2024年度50万円、2025年度51万円となっています。
2026年度は62万円と改正されましたが、これは2024年度の賃金水準に対しての価格になりますので、2026年4月1日施行日時点の支給停止調整額は2026年度までの賃金変動等に応じた額で決定されます。例年ですと、翌年度(4月1日以降)の支給停止調整額については、1月中旬から下旬頃に厚生労働省のホームページ内、報道発表資料(令和○年度の年金額の改定について)にて公表されていますので、最終的な額はそちらで確認するとよいでしょう。
■まとめ
在職老齢年金制度については、高齢者の就業活躍の重要性と年金の支給停止による就業調整等の問題を背景に、見直しが検討されていましたが、今回の改正により、高齢者の方が、働きながらより年金を受給しやすい仕組みになります。
現状、年金が支給停止にならないように就業調整している方や今後そのような予定をされている方には、特に注目すべき改正だと思います。
また、賃金や所定労働時間を増やした際の標準報酬月額は、変更後の給与支給月からすぐに変わるわけではなく変更後3か月の賃金総額及び勤怠状況によって判断され、随時改定に該当した場合で実際に変更になるのは4か月目の標準報酬月額からということになります。
計画される際にはそのあたりも含めて検討されると良いでしょう。これまでよりも、高齢者の就業における選択の幅が広がるのではないでしょうか。
詳細は下記をご確認ください。
