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医師の働き方改革~時間外労働の上限規制等~ (A水準医療機関について)

2023年10月3日

お役立ち情報

5年間猶予されてきた医業に従事する医師の時間外・休日労働の上限規制の適用猶予が2024年3月末で終了し、2024年4月1日以降、医業に従事する医師についても時間外・休日労働の上限規制が適用されます。

尚、時間外労働とは、1日8時間、週40時間を超える法定時間外労働であり、休日労働とは法定休日労働を意味しています。

 

1.2024年4月1日以降、適用される医師の上限規制

 

(特定医師)

病院等で医療を受ける者に対する診療を直接の目的とする医師等。各水準に応じた医師の時間外・休日労働の上限規制が適用されます。

(特定医師以外)

産業医や検診センターの医師等、診察を直接の目的としない医師等。一般業種と同じ、時間外・休日労働の上限規制が適用されます。

 

 

2.上限規制の適用分類

 

病院の機能等に応じてAからC水準に分類され、それぞれ上限規制の時間や追加的健康確保措置の内容等が変わってきます。

B、C水準については、事前の指定申請等が必要となります。

また各水準の上限時間は、指定を受けた医療機関に従事する全ての医師に適用されるのではなく、指定される事由となった業務に従事する医師のみに適用されます。

 

A水準 原則。院内において患者の診療にあたる勤務医等の業務が時間外労働と休日労働の合算において年960時間を超えない。

■上限(時間外労働+休日労働の合算):年960時間以下/月100時間未満※

B水準 救急医療や高度な医療を提供する等、地域医療を確保する為

■上限(時間外労働+休日労働の合算):年1860時間以下/月100時間未満※

連携B水準 他院と兼業する医師の労働時間を通算すると長時間労働となるため(医師の派遣等を通じて地域医療提供体制を確保する為に必要な役割を担う)

■上限(時間外労働+休日労働の合算):個々の医療機関の上限は年960時間以下、複数医療機関との通算では1860時間以下/月100時間未満※

C-1水準 臨床研修医、専攻医等の研修のため

■上限(時間外労働+休日労働の合算):年1860時間以下/月100時間未満※

C-2水準 先進的な手術方法等高度な技能の習得のため

■上限(時間外労働+休日労働の合算):年1860時間以下/月100時間未満※

※時間外労働と休日労働の合算が月100時間以上となることが見込まれる特定医師に対して、面接指導の実施及び適切な就業上の措置(労働時間の短縮、宿直回数の減少等)を講ずる場合は月100時間未満の規制は適用されず年960時間(B・C水準1860時間)のみ適用されます。

 

3.A水準医療機関の上限規制等について

 

ここからは、一般的な医療機関等で診療を行う勤務医の原則的な上限時間である「A水準医療機関」の上限規制等について説明します。

 

①1か月の時間外労働の上限

1か月45時間以下、1年間360時間以下。(1年単位の変形労働時間制の場合は1か月42時間、1年間320時間)ここについては一般の業種と同じです。

 

②1か月の時間外労働・休日労働等の上限規制(特別条項)

特別条項を締結した場合は、①の時間外労働の上限を超えて労働させることが可能となります。

協定の上限は時間外労働と休日労働の合算で、1か月100時間未満、1年間960時間以下です。

ただし面接指導を実施し、健康確保の為に適切な措置を講ずることとしている場合は1か月100時間を超える時間を協定することも可能です。

時間の上限はありませんが1年間の上限は960時間以下との定めがありますので、その範囲内で労使にて決定することになります。

一般業種が1か月の上限時間を超える特別条項を発動することができるのは最大で年6回までと定められていますが、特定医師には回数の制限がありません。

但し、特定医師の場合でも、特別条項は通常予見できないような臨時的な特別の事情があるときに限り発動できるということは一般業種と同じです。

回数の制限がないから恒常的に毎月発動できるという趣旨のものではないことに注意が必要です。

回数については上記の趣旨を踏まえたうえで労使にて決定することになります。

また使用者には従業員の健康を確保する安全配慮義務がありますので、時間外労働・休日労働はできるだけ最小限に抑える必要があることはいうまでもありません。

 

③36協定の様式

特定医師がいない場合の36協定は、一般の9号(特別条項を締結する場合は9号の2)を使用します。

特定医師を1人でも含む場合は9号の4(特別条項を締結する場合は9号の5)を使用します。

 

④副業・兼業の時間外・休日労働の上限規制

個々の医療機関の36協定に定めた上限時間におさまっているかどうかの判断の際には副業・兼業先の労働時間は通算しません。

一方、時間外・休日労働の上限については特定医師個人に対する上限時間であるため、副業・兼業先の労働時間も通算されます。

複数医療機関に勤務する医師が実際に働くことができる通算上限時間(年)は他の医療機関の適用水準により異なります。

①いずれの医療機関においてもA水準が適用されている医師については、勤務する全ての事業場での労働時間を通算した時間外・休日労働の上限は960時間となります。

②いずれかの医療機関においてB・連携B、C水準が適用されている医師については、勤務する全ての事業場での労働時間を通算した時間外・休日労働の上限は1860時間となります。

 

4.追加的健康確保措置

 

A水準において、時間外・休日労働が、月の上限(100時間)以上になると見込まれる場合(副業、兼業をしている医師については通算して月100時間以上となる見込みが ある場合)

 

<義務>

面接指導実施医師による面接指導

面接指導及び必要に応じて勤務時間の短縮、宿直の回数の減少等、就業上の措置を講じる。

★面接指導実施医師の要件

①勤務している医療機関の管理者でないこと

②面接指導実施医師養成講習会を受講していること

 

面接指導を行った場合、その結果及び意見書は、自院の管理者のみならず副業・兼業先の管理者にも提出します。

その場合、兼業先で別に面接指導を行う必要はありません。

ただし、結果等の提出がなかった場合は、副業・兼業先の医療機関の管理者は別途面接指導を実施する必要があります。

 

<努力義務>

・勤務間インターバル(始業から24時間以内に9時間確保)

・連続勤務時間は28時間まで

・代償休息を与える

 

5.宿日直許可申請

 

本来業務の終了後等に宿直や日直の勤務を行う場合で、当該宿日直勤務が断続的な労働と認められる場合は、労働基準監督署の許可を受けることにより労働時間や休憩に関する規定は適用されないことになります。

ただし、宿日直許可を受けていても、該当時間中に通常の業務を行った場合は、その時間については労働時間とする必要があります。

 

<許可基準>

①勤務の態様・・・ 常態としてほとんど労働をする必要のない勤務であること。

②宿日直手当・・・ 宿日直手当の最低額は、当該事業場において宿日直勤務に就くことの予定されている医師に対して支払われている賃金の一人一日平均額の3分の1以上であること。

③宿日直の回数・・ 宿直は週に1回、日直は月に1回を限度とする。(例外あり)

④その他・・・・・ 睡眠設備が設置されていること

宿日直許可を取得していない場合はすべて労働時間としてカウントされ、割増賃金等の支給も必要となってきます。

時間外・休日労働の上限規制では、副業・兼業先の労働時間も通算されることから宿日直許可を取得しているか否かは非常に重要なポイントとなります

2024年4月に向けて申請が増加することが想定されます。早め(2023年中に)許可申請をしておくことをお勧めします。

 

 

医師の時間外労働の上限規制スタートに向けて、制度の理解、医師の労働時間の把握に向けた準備(タイムカード等の導入等)、36協定の締結準備、宿日直許可申請、副業兼業の把握等、様々な取り組みが必要です。医師の働き方改革は内容が複雑ですので、今回はA水準だけに絞って要点を説明致しました。

 

 

制度の詳細は、下記厚生労働省のホームページをご確認ください。

医師の働き方改革|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

面接指導実施医師養成ナビ (mhlw.go.jp)

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