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令和6年4月1日施行 改正障害者差別解消法

2024年1月9日

お役立ち情報

令和6年4月1日施行 改正障害者差別解消法

~合理的配慮の提供が「事業者」についても義務化されます~

 

1.概要

 

障害を理由とする差別の解消を推進し、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会(共生社会)の実現に資することを目的として、平成25年6月、障害者差別解消法が制定され、平成28年4月施行されました。

この法律は、事業者等(サービスや商品の提供者)による障害のある人(サービス利用者)への①不当な差別的取り扱いを禁止し、②「合理的配慮の提供」を行うことを義務化するものです。

当初、この合理的配慮の提供は国・地方公共団体等には法的義務とされていましたが、事業者については努力義務に留まっていました。

令和3年改正、令和6年4月1日施行の改正障害者差別解消法では、合理的配慮の提供が事業者についても義務化されます。※

 

国・地方公共団体等 事業者
①不当な差別的取り扱い 禁止 禁止
②合理的配慮の提供 義務 努力義務 ⇒ 義務※

 

 

2.障害者差別解消法における「障害者」とは

 

障害者手帳をもっている人だけでなく、身体障害、知的障害、精神障害等がある人で、障害や社会の中にある障壁によって日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人全てが対象です。(性別・年齢を問いません)

 

 

3.障害者差別解消法における「事業者」とは

 

商業その他の事業を行う企業や団体、店舗等であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同じサービス等を反復継続する意思をもって行う者です。(個人事業主やボランティア活動をするグループ等も含みます)

 

 

4.不当な差別的取り扱いの禁止とは

 

企業や店舗等の事業者がそのサービス提供等を行うに当たり、障害を理由として、サービスの提供を拒否したり、提供するにあたり場所や時間を制限するなど、障害者でない者と比較して、不当な(正当な理由なく)差別的取り扱いをすること等により、障害のある人の権利利益を侵害することが禁止されています。

正当な理由がある場合は不当な差別的取り扱いには該当しませんが、その判断は個別の事案ごとに慎重に判断すべきであり、また正当な理由があると判断した場合はその理由を丁寧に説明し理解を得ることが必要です。

 

<正当な理由の判断の視点>

①客観的にみて正当な目的の下に行われたものか

障害者・事業者・第三者の権利利益の観点から検討します。

(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等)

②その目的に照らしてやむを得ないといえるか

・①の目的のために必要な範囲のものとなっているか

・必要な範囲を超え不必要な制限を課すものとなっていないか

 

 

5.合理的配慮の提供とは

 

日常生活、社会生活において提供されている設備やサービス等については、障害のない人は簡単に利用できても障害のある人にとっては利用が難しく結果として活動が制限されたり、障害者の権利利益が侵害されてしまう場合があります。

このような場合において、個々の場面で、障害者から社会的な障壁を取り除いてほしい旨の意思の表明があった場合(※①)にはその実施に伴う負担が過重でないとき(※②)は、障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的な障壁を取り除くために必要かつ合理的な配慮(※3)を講ずることが求められています。

 

※①意思の表明

本人からの意思表明が困難な場合、家族や支援者・介護者が本人を補佐して行う意思の表明も含まれます。

 

※②過重な負担の判断要素等

・事業への影響の程度

・実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)

・費用・負担の程度

・事務・事業規模

・財政・財務状況

 

※③必要かつ合理的な配慮とは

事業者の事業の目的・内容・機能に照らし、以下の3つすべてを満たす必要があります。

(1)必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること

(2)障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること

(3)事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと

 

社会的障壁を除去する意思の表明があり、その内容が「必要かつ合理的な配慮」に該当する場合、過重な負担に該当しない限り合理的配慮の提供が必要です。

仮に必要かつ合理的な配慮や過重な負担に該当しない場合でも、建設的な対話により、代替案等の対応策を検討していくことが重要です。(建設的対話を一方的に拒むことは合理的配慮の提供義務違反となる可能性もあるため注意が必要です。)

 

 

6.障害者差別解消法と障害者雇用促進法との違い

 

今回施行になる改正障害者差別解消法は、主に商品やサービスを提供する民間の事業者や行政機関に対する禁止事項や義務を定めたものとなります。

雇用や就業に関しては、障害者雇用促進法にて別に定められています。

平成28年4月施行の雇用促進法において、雇用分野での不当な差別的取り扱い、合理的配慮の提供等は、既に事業主に対して法的義務となっています。

 

障害者差別解消法 障害者雇用促進法
所 管 内閣府 厚生労働省
分 野 雇用分野以外の全般 雇用分野
目 的 障害を理由とする差別の解消 障害者の職業の安定

 

7.まとめ

 

教育、医療、福祉、公共交通等、日常生活及び社会生活全般に係る分野が広く対象となります。

これまでの対応・運用では知らずに義務違反になってしまう可能性もあります。

また、従業員が知らずに対応してしまうこともあるかもしれません。

義務違反になるような対応をすることは、企業の社会的信用にかかわる問題となります。

企業や店舗等においては、どのような対応が不当な差別的取り扱いに該当する可能性があるか、どのようなことが障壁になりうるか、そしてその障壁を取り除くにはどのような対応が考えられるか等、社内で検討し勉強会を開くなどして社内での認識や意識の統一を図ることが必要だと思います。

同時に、障害者から相談があったときの相談窓口等を事前に決めておき、組織的な対応ができるようにしておくことも重要でしょう。

内閣府のホームページでは、ケーススタディなども掲載されています。

令和6年4月1日の施行日までに、準備を進めていきましょう。

そして、障害のある人もない人も、互いにその人らしさを認め合いながら、共に生きる社会の実現を目指していきましょう。

 

詳細は下記をご参照ください。

 

リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」全体版/内閣府

障害を理由とする差別の解消の推進相談対応 ケーススタディ集 令和5年(2023年)3月/内閣府

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