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建設事業の時間外労働の上限規制について(2024年4月1日適用)

2023年11月2日

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2019年4月1日(中小企業においては2020年4月1日)から施行されている時間外労働の上限規制について、建設事業はその適用が5年間猶予されていましたが、いよいよ適用猶予期間が終了し、2024年4月1日より、他の業種同様に上限規制の適用が開始となります。

 

1.労働時間・休日に関する原則

 

①法定で定められた労働時間の限度(法定労働時間)
1日については8時間、週については40時間が限度です。
②法定で定められた休日(法定休日)
少なくとも週に1回はお休みを与えなければなりません。

 

上記①を超えて、又は②の休日に労働させる場合は、36協定の締結及び労働基準監督署への届出が必要です。

 

 

2.時間外労働の上限規制の内容

 

原則1~3については、他の業種の上限規制と同様の内容となり、例外については建設の事業に限る内容となります。

ここでいう時間外労働とは法定労働時間を超える労働時間をいい、休日労働とは週に1日の法定休日の労働をいいます。

 

<原則1>

時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができません。(1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、月42時間、年320時間が上限です)

 

<原則2>

臨時的な特別の事情があり労使が合意する場合(特別条項)でも下記を守らなければなりません。

①時間外労働が年720時間以内

②時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

③時間外労働と休日労働の合計について、2~6か月の平均が月80時間以内

④時間外労働が月45時間(1年単位の変形労働時間制を採用する場合は月42時間)を超えることができるのは年6回が限度。

 

<原則3>

特別条項の有無に関わらず、1年を通して常に、時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満、2~6か月の平均は月80時間以内にしなければなりません。

 

<例 外>

建設の事業のうち、災害時における復旧及び復興の事業に限り、2024年4月1日以降も下記の規制は適用されません。

①時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

②時間外労働と休日労働の合計について、2~6か月の平均が月80時間以内

※ただし、時間外労働が年720時間以内、時間外労働が月45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間)を超えることができる上限回数(年6回)は適用になります。

 

 

3.36協定の書式について

 

建設の事業はこれまで9号の4を使用していたところが多いと思いますが、2024年4月1日以降に締結する36協定については、次のいずれかの条件に該当する書式にて、時間外労働上限規制の内容に則り作成・締結することになります。

 

①(様式第9号)

月45時間超(1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間)の時間外労働が見込まれず、災害時の復旧・復興の対応が見込まれない場合

②(様式第9号の2)

月45時間超(1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間)の時間外労働が見込まれ、災害時の復旧・復興の対応が見込まれない場合

③(様式第9号の3の2)

月45時間超(1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間)の時間外労働が見込まれず、災害時の復旧・復興の対応が見込まれる場合

④(様式第9号の3の3)

月45時間超(1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間)の時間外労働が見込まれ、災害時の復旧・復興の対応が見込まれる場合

 

施行にあたっては経過措置が設けられており、2024年4月1日以降の期間のみを定めた36協定に対して上限規制が適用されます。

2024年3月31日を含む期間について定めた36協定については、その協定の初日から1年間は引き続き有効となり、上限規制は適用されません。

  

 

4.労働基準法第33条(災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合)と、労働基準法第139条(災害時における復旧及び復興の事業)の違いと関係

 

労基法第33条

(目的):人命・公益の保護のため
(対象):災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合。業務運営上通常予見し得ない災害等が発生した場合が対象。(災害への対応、急病への対応、事業の運営を不可能とさせるような突発的な機械・設備の故障修理、システム障害の復旧等)(建設の事業に限らない)
(手続):事前の許可又は事後の届出
(効果):36協定で定める限度とは別に時間外休日労働をさせることができる。
(上限規制):適用なし

 

労基法第139条(目的):社会的要請が強いため

(対象):災害時における復旧・復興の事業(災害により被害を受けた工作物の復旧及び復興を目的として発注を受けた建設の事業。工事の名称に関わらず、特定の災害による被害を受けた道路や鉄道の復旧、仮設住宅や復興支援道路の建設等の復旧及び復興の事業)(建設の事業に限る)

(手続):36協定の中で、特別条項として「災害時における復旧及び復興の事業に従事する場合」について協定する。

(効果):36協定で定める範囲内で時間外・休日労働をさせることができる。

(上限規制):時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2~6か月の平均で月80時間以内の規制は適用されない。ただし、時間外労働が年720時間以内と、時間外労働が月45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)を超える限度(年6回)の適用はある。

 

基本的に、災害時の復旧及び復興の事業を行う可能性のある事業場においては、その時間も含めて36協定(様式9号の3の2又は9号の3の3)を締結する必要がありますが、すでに締結していた36協定で協定された延長時間を超えて労働させる臨時の必要がある場合や36協定を締結していなかった場合などにおいては、労基法第33条の許可申請を行うことになります。

労基法第33条、労基法第139条いずれの場合も、上限規制の適用は受けなくても、労働した時間についての割増賃金の支払いは必要です。

また、労基法第139条(復旧及び復興の事業)に従事した労働時間と一般の工事に従事した労働時間が同月内に混在した場合は、復旧及び復興の事業に従事した時間については、時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間未満、2~6か月の平均で月80時間以内の規制からは除くことができますが、一般の工事に従事した労働時間は除くことができません。

また、時間外労働が年720時間以内と時間外労働が月45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)を超えることができる回数の限度(年6回)のカウントにはどちらの労働時間も含めることになります。

この管理をするためには、それぞれの労働時間を分けて把握できるようにしておく必要があります。

 

 

時間外労働、休日労働の上限規制に対応するためには、正確な労働時間の把握が必須となります。

それに伴い労働時間の管理の方法や、業務工程・人員配置の見直し等も必要になってくるかもしれません。

適用開始が迫ってきていますので、今一度制度について理解を深め、時間外労働の上限規制に備えていきましょう。

 

 

詳細は下記、厚生労働省のホームページをご参照ください。

建設業時間外労働の上限規制わかりやすい解説

労働基準法第139条と労働基準法第33条の違い

労働基準法第33条

建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A

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