新たな化学物質規制(安全衛生法関係法令の改正)
2024年3月4日
新たな化学物質規制(安全衛生法関係法令の改正)
2024年4月1日施行日以降、どう変わる?
安全衛生法関係法令の改正に伴い、2023年4月より、新たな化学物質規制が導入されていますが、2024年4月1日に施行を控えているものもあります。
本記事では、主な改正内容について注意点とともに解説します。
■2024年4月1日施行、主な改正内容
ラベル表示・SDS等による通知とリスクアセスメント実施の義務対象物質に、国によるGHS分類で危険性・有毒性が確認されたすべての物質が順次追加され、対象物質が大幅に増加します。
これにより、事業場において取り扱っている化学物質が新たに上記下線の義務に該当してくる可能性が出てきますので、対象物質に該当するか否かの確認をする必要があります。
厚生労働大臣が定める物質(濃度基準値設定物質)は、リスクアセスメント結果を踏まえ、労働者がばく露される濃度を基準値以下とすることが義務付けされます。…①
尚、濃度基準未設定物質については、2023年4月1日に施行されているとおり、労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される程度を以下の方法等で最小限にしなければなりません。…②
(1)代替物等を使用する。
(2)発散源を密閉する設備、局所排気装置または全体喚起装置を設置し、稼働する。
(3)作業の方法を改善する。
(4)有効な呼吸器保護具を使用する。
※(1)→(4)の順に手段を検討し、事業者自らが選択の上、実施します。
3、ばく露低減措置等の意見聴取、記録作成・保存
2に基づく措置の内容と労働者のばく露の状況について労働者の意見を聴く機会を設け、記録を作成し、3年間保存しなければなりません。(厚生労働大臣が定めるがん性物質は30年間保存)
※2の②は2023年4月1日施行、2の①は2024年4月1日施行)
4、リスクアセスメントに基づく健康診断の実施・記録作成等
リスクアセスメントの結果に基づき講ずるばく露低減措置の一環として、リスクアセスメント対象物による健康影響の確認のため、必要があると認めるときは、医師等が必要と認める項目の健康診断を行い、その結果に基づき必要な措置を講じなければなりません。
また、濃度基準値設定物質について、基準値を超えてばく露したおそれがあるときは、速やかに医師等による健康診断を実施しなければなりません。
上記の健康診断を実施した場合は、その記録を作成し、5年間(がん原生物質に関する健康診断は30年間)保存しなければなりません。
5、衛生委員会の付議事項の追加
上記2及び4により講ずる措置に関することを衛生委員会の付議事項に追加し、化学物質の自律的な管理の実施状況の調査審議を行うことが義務付けされます。(2の②については2023年4月1日施行)
※衛生委員会の設置義務がない労働者50人未満の事業場も、意見聴取の機会を設けなければなりません。
皮膚等への障害を引き起こしうる化学物質を製造・取り扱う業務に労働者を従事させる場合、物質の有害性に応じて、労働者に障害等防止用保護具(保護眼鏡、不浸透性の保護衣、保護手袋又は履物等適切な保護具)を使用させなければなりません。
(1)健康障害を起こす恐れがあることが明らかな物質の製造・取り扱い
2023年4月1日~保護具の使用が努力義務 → 2024年4月1日~保護具の使用が義務。
(2)健康障害を起こす恐れがないことが明らかなもの以外の物質の製造・取り扱い
2023年4月1日~保護具の使用が努力義務。
■選任が必要な事業場
リスクアセスメント対象物を製造、取り扱い、または譲渡提供をする事業場(業種・規模要件なし)
※選任義務は、個別の作業場ごとでなく、工場、営業所等の事業場ごと。
※一般消費者の生活の用に供される製品のみを取り扱う事業場は、対象外。
※事業場の状況に応じ、複数名の選任も可能。
■選任要件
(1)リスクアセスメント対象物の製造事業場
専門的講習の終了者(講義カリキュラムは、科目・時間等が定められています)
(2)リスクアセスメント対象物の製造事業場以外の事業場
資格要件なし(専門的講習等の受講を推奨)
※専門的講習は外部の任意の専門機関の講習を受講することができ、また、カリキュラムを満たしていれば事業場内教育で行うことも可能です。
■職務
①ラベル・SDS等の確認
②化学物質に関わるリスクアセスメントの実施管理
③リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の選択、実施の管理
④化学物質の自律的な管理に関わる各種記録の作成・保存
⑤化学物質の自律的な管理に関わる労働者への周知、教育
⑥ラベル・SDSの作成(リスクアセスメントの製造事業場の場合)
⑦リスクアセスメント対象物による労働災害が発生した場合の対応
■選任・周知
選任義務が発生した日から14日以内に選任し、化学物質管理者に必要な権限を与えるとともに、化学物質管理者の氏名を事業場の見えやすい箇所に掲示する等して、労働者に周知しなければなりません。(労働基準監督署への届出義務はありません)
■選任が必要な事業場
リスクアセスメントに基づく措置として労働者に保護具を使用させる事業場
■選任要件
保護具について一定の経験及び知識を有するもの(具体的な要件は令和4年5月31日付け基発0531第9号通達を参照)※資格要件を満たすものを選任する場合でも保護具の管理に関する教育を受けることが望ましいとされています。
また、資格要件を満たすものを選任できない場合でも、保護具の管理に関する教育を受講した者を選任することができます。
■職務
①保護具の適正な選択に関すること
②労働者の保護具の適正な使用に関すること
③保護具の保守管理に関すること
■選任・周知
選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、保護具着用管理責任者に必要な権限を与えるとともに、保護具着用管理責任者の氏名を事業場の見えやすい箇所に掲示するなどして、労働者に周知しなければなりません。(労働基準監督署への届出義務はありません)
雇入時又は作業内容の変更の際に行う教育のうち、特定の業種では一部教育項目の省略が認められていましたが、この省略規定が廃止され、危険性・有害性のある化学物質を製造し、または取り扱う全ての事業場で、化学物質の安全衛生に関する必要な教育を行わなければなりません。
上記の他にも2024年4月1日施行の改正として、SDS等による通知事項の追加及び含有量表示の変更、作業環境測定結果が第3管理区分の事業場に対する措置の強化等があります。
2023年4月1日に既に施行されているものも含め、詳細は厚生労働省のホームページで確認してください。
普段意識せずに職場で使用している商品や製品に含まれる化学物質によって思わぬ労働災害が発生するケースもあります。
安全データシート(SDS)の適用法令を確認し、安全衛生法の適用の有無及びどのジャンルに該当する化学物質なのかを確認することで、自社において対策すべき事項を確認していきましょう。
厚生労働省のホームページでは確認の手順なども紹介されています。化学物質による労働災害を防ぎ、労働者が安全に働くことができるよう、2024年4月1日施行に備えて、再確認していきましょう。
詳細は下記、厚生労働省ホームページをご確認ください。