36協定の労働者代表の選出
2024年5月8日
~36協定締結において~
「労働者の過半数代表者の選出手続き」と「労働者への周知」を適正に行っていますか?
法定時間外の労働や法定休日に労働をさせる場合、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者と、書面による協定を締結し、労働基準監督署へ届出しなければなりません。
この「労働者の過半数代表者」の選出手続きについて適正に行わずに締結した36協定は無効となり、せっかく届出をしていても、法定時間外の労働や法定休日の労働をさせることができないことになる為、注意が必要です。
また、労働基準監督署へ届け出た36協定は、労働者に周知しなければなりません。
1.36協定の労働者側の締結当事者
①事業場に使用されるすべての労働者(正社員に限らず、パート・アルバイト・出向社員等を含む)の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合が労働者側の締結当事者になります。※事業場に使用されるすべての労働者のうち、その労働組合の組合員数が50%を超えていることを確認する必要があります。
②事業場に過半数で組織する労働組合がない場合に限り、労働者の過半数代表者が労働者側の締結当事者になります。
※36協定を締結する事業場ごとに過半数代表者を選任します。
2.過半数代表者の要件と選出手続き(上記1の②の場合)
<過半数代表者の要件>
①事業場に使用されるすべての労働者(正社員に限らず、パート・アルバイト、出向社員等を含む)の過半数を代表していること。
②選出に当たっては、事業場に使用されるすべての労働者(正社員に限らず、パート・アルバイト、出向社員等を含む)が参加した民主的な手続きが取られていること。
③労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者に該当しないこと。
<過半数代表者の選出手続き>
①選出に当たっては、事業場に使用される全ての労働者が参加する必要があります。
正社員だけでなく、パートやアルバイト、出向社員等も全て含める必要があることに注意が必要です。(時間外労働や休日労働を行う可能性の有無に関係なく)
②36協定の締結のための過半数代表者を選出することを明らかにしたうえで、選出手続きを行う必要があります。
③労働者の過半数がその人の選出を支持していることが明確になる民主的な手続き方法(投票、挙手、労働者同士の話し合い等)をとる必要があります。
※使用者の意向に基づき選出された者であってはなりません。
※労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者は過半数代表者にはなれませんが、過半数労働者選出時の全労働者には含みます。
※雇用形態を問わず、事業場に使用されるすべての労働者は過半数代表者に立候補することができます。(管理監督者を除きます)
※立候補者がいない場合は推薦を受け、信任投票等を行うこともできますが、推薦にあたり使用者の意向が反映されたものであってはなりません。
※立候補者が1名であっても、複数名であっても1回の投票で過半数を得られない場合は、信任投票や決戦投票等により、事業場に使用されるすべての労働者の過半数の支持を得ていることを確認する必要があります。
※メールでの信任投票等において、返信がない場合は信任を得たとみなしたり、返信があった者だけの過半数の支持をもって過半数労働者とすること等は、労働者の過半数が支持していることが明確になるとはいえないため、適切ではないとされています。返信がない場合も必ず労働者の意思確認を行う必要があります。
※使用者は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない。(労働基準法施行規則第6条の2第3項)
正社員のみが選出手続きに参加している、選出手続きの際に協定の目的等を明らかにしていない(労働者は何の協定の過半数代表者を選出しようとしているのか把握していない)、そもそも労働者は選出手続きに参加せず、使用者が一方的に指名している、労働者の親睦会の幹事を自動的に選任している等は、適切な手続きを踏んでいないため、その協定は無効となります。
36協定の締結において、過半数代表者を適切に選任することは、非常に重要な要件となりますので注意が必要です。
※36協定に限らず、就業規則の制定・変更時や、労使で締結する様々な労使協定において、過半数代表者の選出手続きは共通するものになります。(36協定において管理監督者は過半数代表者になれませんが、管理監督者しかいない事業場において、管理監督者が過半数代表者になり得る協定もあります)
また、36協定は締結だけでなく、労働基準監督署への届出が効力の発生要件となります。労働基準監督署の受理日以降に効力が認められることになりますので、締結後は速やかに提出するようにしましょう。
3.労働者への周知義務
更に見落としがちなのは、36協定を労働基準監督署へ届出した後の、労働者への周知です。届出した36協定は、次のいずれかの方法にて労働者に周知しなければなりません。
①作業場の見やすい場所への掲示・備え付け
②文書の交付
③パソコン内にファイルを保存したり、社内イントラネットへ掲示する等、確認できる環境を整備し、かつ、各作業場に確認できるパソコン等の機器を設置すること
36協定を締結した際には、この周知義務までを確実に行うようにしてください。
※就業規則や36協定以外の各種労使協定も同様に周知義務があります。
自社での36協定の締結手続きにおいて、不足している要件がある場合や周知義務が不十分である場合は、この機会に見直し、適正に実施するようにしましょう。
詳細は下記をご参照ください。