月60時間超の割増賃金率の変更に伴う社会保険の「随時改定」について
2023年6月2日
~割増賃金率が変わると社会保険の随時改定(月額変更)の対象になる?!~
2023年4月1日以降の労働分より、中小企業においても月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が25%から50%に引き上げられました。
それに伴い、就業規則の変更、労働条件通知書の変更、給与計算の変更等様々な対応が求められています。
また、社会保険への影響としては随時改定(月額変更)があげられます。
■ 社会保険の随時改定(月額変更)とは?
被保険者の報酬が固定的賃金の変動に伴って大幅に変わったときは、定時決定を待たずに標準報酬月額が改定されます。
1.随時改定の3つの要件
① 昇給または降給等により固定的賃金に変動があった。
② 変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
③ 3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。
2.固定的賃金とは
支給額や支給率が決まっているものをいい、主に以下のようなケースがあります。
① 昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
② 給与体系の変更(日給から月給への変更等)
③ 日給や時間給の基礎単価(日当、単価)の変更
④ 請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
⑤ 住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更
■ 割増率の変更に伴う随時改定(月額変更)
単に残業時間の変動による賃金の変動だけの場合は随時改定の対象になりませんが、今回のように割増率の変更の場合は随時改定の対象になります。
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱に関する事例集、随時改定の問2」においても、超過勤務手当の支給単価(支給率)が変更された場合は随時改定の対象になることが記されています。
■ 2023年4月改正、月60時間超の割増賃金率の引き上げに伴う随時改定(月額変更)の対応について
①起算月と対象者
引き上げた割増率によって計算される割増賃金の支給開始月が起算月となり、起算月以降継続した3か月のうちいずれかの月において、月60時間超の割増賃金が支給されている場合は随時改定の対象になります。
逆にいずれの月も支給されていない場合は随時改定の対象になりません。
起算月は、実際の支給の有無に関係なく、改正後の割増率が反映される最初の賃金支給月ということになります。
②月額変更のタイミング
・4月労働の割増賃金を4月に支給する場合(4月が起算月)
4月、5月、6月の3か月のうちいずれかの月に月60時間超の割増賃金が支給された場合は、7月月額変更
・4月労働の割増賃金を5月に支給する場合(5月が起算月)
5月、6月、7月の3か月のうちいずれかの月に月60時間超の割増賃金が支給された場合は、8月月額変更
いずれの場合も随時改定(月額変更)の3つの要件に該当した場合のみ月額変更届を提出することになります。
残業代は非固定的賃金のため随時改定は関係ないと思われがちですが、割増率の変動は随時改定の契機になるため注意が必要です。
2023年4月改正により割増賃金率を引き上げ、かつ実際に月60時間を超える残業を行った場合は、社会保険の随時改定(月額変更)についても該当者がいないかどうか確認しましょう。
詳細は下記、日本年金機構のHPをご参照ください。