労働基準法施行規則改正 ~2024年4月から労働条件の明示のルールが変更されます~
2023年7月4日
労働基準法第15条
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
上記のとおり労働条件の明示は労働基準法にて定められており、明示すべき内容等については労働基準法施行規則第5条に定められています。
今回の労働基準法施行規則改正により、労働契約締結時及び有期労働契約更新時に明示すべき労働条件が追加されることになります。
改正内容(追加される明示事項や手続き要件)
1.全ての労働者に対する明示事項
① 就業場所、業務の変更の範囲の明示(労働基準法施行規則第5条の改正)
雇入れ直後の就業場所と業務の範囲に加えて、その後の変更の範囲まで記載することが義務付けられます。
変更の範囲とは、将来の配置転換等によって変更することが想定できる就業場所や業務の範囲を指します。
2.有期契約労働者に対する明示事項
① 有期労働契約の更新上限の明示(労働基準法施行規則第5条の改正)
有期労働契約の契約締結時及び契約更新時ごとに、更新上限(有期労働契約の通算契約期間又は更新回数の上限)の有無とその内容の明示が義務付けられます。
■手続き要件の追加(雇止め告示の改正)
併せて、①の更新上限について最初の契約時から明示されておらず、途中の更新時等から上限を設ける場合や、最初に設けていた更新上限を短く変更する場合等は、有期契約労働者にあらかじめその理由等を説明することが必要になります。
② 無期転換申込機会の明示(労働基準法施行規則第5条の改正)
無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨の明示が必要です。(※無期転換制度とは、同一使用者との有期雇用契約が通算5年を超える場合に、有期契約労働者からの申出により有期契約から期間の定めのない無期契約に転換することができる制度)
③ 無期転換後の労働条件の明示(労働基準法施行規則第5条の改正)
無期転換申込権が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。(無期転換権が発生する最初の契約時に限らず、その後も無期転換権が発生する契約を更新する場合は明示する必要があります。)
■手続き要件の追加(雇止め告示の改正)
併せて、無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件を決定するに当たって、他の通常の労働者(正社員や無期雇用フルタイム労働者等)とのバランスを考慮した事項(業務の内容、責任の程度、異動の有無や範囲等)について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないこととなります。
2024年4月1日以降に締結(契約更新を含む)する労働契約から上記の改正を反映させる必要があります。
今後の労務トラブルを防ぐためにも、自社ではどのように定めることが良いのか複合的に検討したほうがよいのではないかと思います。
また、改正前までは、無期転換のルールを会社から対象労働者に積極的に周知することまでは義務とされていないため制度を知らない有期契約労働者も多くいるのではないかと想像できます。
条件を満たした有期契約労働者から無期転換の申出があった場合は、会社はこれを拒むことができません。
今回の義務化により無期転換希望者が増えてくることも予想されるため、無期転換制度についての理解も整理しておく必要があるでしょう。
同様に2024年4月1日施行、職業安定法施行規則も改正されています。ハローワークへの求人申し込みや自社ホームページでの募集、求人広告の掲載を行う場合も今回の労働基準法施行規則改正の労働条件明示と同様の明示を行う必要がありますので注意が必要です。
詳細は、厚生労働省のホームページをご参照ください。