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令和6年度 障害者の法定雇用率引き上げと変更点について
2024年6月4日
従業員が一定数以上いる規模の事業主には、障害者を雇用する義務が課せられるとともに、毎年6月1日時点での障害者雇用の状況をハローワークへ報告する義務があります。
仮に障害者雇用が0人であってもその事実を報告しなければなりません。
障害者雇用状況報告書の届出時期となりますので、令和6年度の障害者雇用の変更点等について確認していきましょう。
1、法定雇用率の引き上げ
障害者の法定雇用率が、令和6年4月以降2.5%へ引き上げられました。(令和5年度は2.3%)
これにより、企業全体の常用雇用労働者数(除外率により除外すべき労働者を控除した数)が40.0人以上の事業主に、障害者の雇用義務が生じることになります。
※40.0人のカウントの仕方
週30時間以上の常用雇用労働者を1人カウント、週20時間以上30時間未満の短時間労働者を0.5カウントとします。(週10時間以上20時間未満の特定短時間労働者は計算に含めません。)
<計算例>
■常用雇用労働者30名、短時間労働者10名の場合
30名+10名×0.5×2.5%=0.875
端数切捨ての為0人となり、障害者を雇用する義務はありません。
■常用雇用労働者40名、短時間労働者10名の場合
40名+10名×0.5×2.5%=1.125
端数切捨ての為1人となり、1名以上の障害者を雇用する義務があります。
2、除外率について
除外率は令和7年4月以降、除外率設定業種ごとにそれぞれ10ポイント引き下げられます。(現在除外率が10%以下の業種は除外率制度の対象外になります。)
令和6年度の除外率はこれまでと変更はありません。
3、障害者の算定方法の変更
① 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方)の算定特例の延長
平成30年4月1日より、精神障害者の職場定着を進める観点から精神障害者である短時間労働者(週20時間以上30時間未満)の実雇用率の算定について、令和4年度末まで1人としてカウントする特例措置が設けられていました。
令和5年4月以降もこの特例が延長され令和6年度についても継続されています。
② 令和6年4月1日以降、※特定短時間労働者である障害者の一部について、雇用率へ算定できるようになります。
障害者雇用率の算定にあたり、分母である常用雇用労働者には特定短時間労働者数は含めませんが、分子である常用雇用障害者としては、重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者である特定短時間労働者について、一人の雇用に対して0.5人として算定することができるようになります。(就労継続支援A型の利用の利用者を除く)
※特定短時間労働者とは…
短時間労働者のうち、1週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満である労働者をいいます。
■常用雇用労働者である障害者のカウント方法(対象となる障害者を1人雇用している場合のカウント数)
週所定労働時間 30時間以上 20時間以上 30時間未満
10時間以上 20時間未満
身体障害者 1 0.5 ― 身体障害者重度 2 1 0.5…上記② 知的障害者 1 0.5 ― 知的障害者重度 2 1 0.5…上記② 精神障害者 1 1…上記① 0.5…上記② その他、障害者雇用支援強化を目的とし、令和6年4月以降、助成金の新設や拡充も図られます。
上記の変更点を踏まえて、自社における障害者雇用義務の有無及び達成状況を確認しましょう。
障害者雇用率は令和8年7月には2.7%に引き上げられることも決定しています。
その場合は常用雇用労働者が37.5人以上の事業主に障害者雇用の義務が生じることになります。
障害者雇用の義務がある事業主は、その義務を果たすべき対応が求められますし、今後の雇用率の改定により義務が生じてくる事業主については、雇入れの体制や環境作り等、早めに準備を進めていくことが重要だと思います。
また、障害者の雇入れや雇用管理等の責任者として、障害者雇用推進者を選任することも努力義務となっています。
このような選任をとおして、障害者雇用に対して責任をもって取り組んでいける体制を整えていくことも大切だと思います。
詳細は下記をご参照ください。
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令和6年 労働保険料の申告・納付
2024年6月4日
今年も、労働保険の年度更新の時期になりました。
今年の申告・納付期間は令和6年6月3日(月)~7月10日(水)です。
手続きが遅れると、政府が労働保険料・一般拠出金の額を決定し、さらに追徴金を課すことがありますのでご注意下さい。
年度更新とは
労働保険(労働者災害補償保険・雇用保険)は、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付と、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付の手続きが必要です。
この手続きを「年度更新」と言います。
保険料
労働保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(保険年度といいます。)を単位とし、その間に支払われるすべての労働者の賃金総額に、業種ごとに定められた保険料を乗じて算定します。
賃金総額は、基本給だけでなく、通勤手当(非課税分含む)、各種手当、賞与等、労働の対償として支払うすべてのもので、税金や社会保険料等を控除する前の支払総額をいいます。
慶弔見舞金、出張旅費等の実費弁償、工具手当等の労働者が自己負担で用意した用具に対しての手当等は含まれません。
保険年度中に支払いが確定した賃金は、その保険年度に実際に支払われていなくとも算入してください。
3月1日~3月31日の給与を4月15日に支払っている場合、この給与は4月ではく3月として算入します。
元請により実施した工事がある建設業で、賃金総額が算定しがたい場合は、特例の計算方法により賃金総額とし、保険料を算定することができます。
【 請負金額(消費税除く)×労務比率=賃金総額 】
また、「一括有期事業総括表」と「一括有期事業報告書」もあわせて提出することになります。
申告書
年度更新の申告書は、事業主宛に5月末~6月初に労働局より発送されます。
申告書を作成し、期間内に①~③の方法で提出してください。
①管轄の都道府県労働局・労働基準監督署・金融機関の窓口 ②電子申請 ③管轄の労働局へ郵送
その他、詳細については厚生労働省のホームページでご確認ください。
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36協定の労働者代表の選出
2024年5月8日
~36協定締結において~
「労働者の過半数代表者の選出手続き」と「労働者への周知」を適正に行っていますか?
法定時間外の労働や法定休日に労働をさせる場合、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者と、書面による協定を締結し、労働基準監督署へ届出しなければなりません。
この「労働者の過半数代表者」の選出手続きについて適正に行わずに締結した36協定は無効となり、せっかく届出をしていても、法定時間外の労働や法定休日の労働をさせることができないことになる為、注意が必要です。
また、労働基準監督署へ届け出た36協定は、労働者に周知しなければなりません。
1.36協定の労働者側の締結当事者
①事業場に使用されるすべての労働者(正社員に限らず、パート・アルバイト・出向社員等を含む)の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合が労働者側の締結当事者になります。※事業場に使用されるすべての労働者のうち、その労働組合の組合員数が50%を超えていることを確認する必要があります。
②事業場に過半数で組織する労働組合がない場合に限り、労働者の過半数代表者が労働者側の締結当事者になります。
※36協定を締結する事業場ごとに過半数代表者を選任します。
2.過半数代表者の要件と選出手続き(上記1の②の場合)
<過半数代表者の要件>
①事業場に使用されるすべての労働者(正社員に限らず、パート・アルバイト、出向社員等を含む)の過半数を代表していること。
②選出に当たっては、事業場に使用されるすべての労働者(正社員に限らず、パート・アルバイト、出向社員等を含む)が参加した民主的な手続きが取られていること。
③労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者に該当しないこと。
<過半数代表者の選出手続き>
①選出に当たっては、事業場に使用される全ての労働者が参加する必要があります。
正社員だけでなく、パートやアルバイト、出向社員等も全て含める必要があることに注意が必要です。(時間外労働や休日労働を行う可能性の有無に関係なく)
②36協定の締結のための過半数代表者を選出することを明らかにしたうえで、選出手続きを行う必要があります。
③労働者の過半数がその人の選出を支持していることが明確になる民主的な手続き方法(投票、挙手、労働者同士の話し合い等)をとる必要があります。
※使用者の意向に基づき選出された者であってはなりません。
※労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者は過半数代表者にはなれませんが、過半数労働者選出時の全労働者には含みます。
※雇用形態を問わず、事業場に使用されるすべての労働者は過半数代表者に立候補することができます。(管理監督者を除きます)
※立候補者がいない場合は推薦を受け、信任投票等を行うこともできますが、推薦にあたり使用者の意向が反映されたものであってはなりません。
※立候補者が1名であっても、複数名であっても1回の投票で過半数を得られない場合は、信任投票や決戦投票等により、事業場に使用されるすべての労働者の過半数の支持を得ていることを確認する必要があります。
※メールでの信任投票等において、返信がない場合は信任を得たとみなしたり、返信があった者だけの過半数の支持をもって過半数労働者とすること等は、労働者の過半数が支持していることが明確になるとはいえないため、適切ではないとされています。返信がない場合も必ず労働者の意思確認を行う必要があります。
※使用者は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない。(労働基準法施行規則第6条の2第3項)
正社員のみが選出手続きに参加している、選出手続きの際に協定の目的等を明らかにしていない(労働者は何の協定の過半数代表者を選出しようとしているのか把握していない)、そもそも労働者は選出手続きに参加せず、使用者が一方的に指名している、労働者の親睦会の幹事を自動的に選任している等は、適切な手続きを踏んでいないため、その協定は無効となります。
36協定の締結において、過半数代表者を適切に選任することは、非常に重要な要件となりますので注意が必要です。
※36協定に限らず、就業規則の制定・変更時や、労使で締結する様々な労使協定において、過半数代表者の選出手続きは共通するものになります。(36協定において管理監督者は過半数代表者になれませんが、管理監督者しかいない事業場において、管理監督者が過半数代表者になり得る協定もあります)
また、36協定は締結だけでなく、労働基準監督署への届出が効力の発生要件となります。労働基準監督署の受理日以降に効力が認められることになりますので、締結後は速やかに提出するようにしましょう。
3.労働者への周知義務
更に見落としがちなのは、36協定を労働基準監督署へ届出した後の、労働者への周知です。届出した36協定は、次のいずれかの方法にて労働者に周知しなければなりません。
①作業場の見やすい場所への掲示・備え付け
②文書の交付
③パソコン内にファイルを保存したり、社内イントラネットへ掲示する等、確認できる環境を整備し、かつ、各作業場に確認できるパソコン等の機器を設置すること
36協定を締結した際には、この周知義務までを確実に行うようにしてください。
※就業規則や36協定以外の各種労使協定も同様に周知義務があります。
自社での36協定の締結手続きにおいて、不足している要件がある場合や周知義務が不十分である場合は、この機会に見直し、適正に実施するようにしましょう。
詳細は下記をご参照ください。
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令和6年度 在職老齢年金制度の支給停止調整額が変更されました
2024年4月2日
令和6年4月より、
在職老齢年金制度の支給停止調整額が、
48万円から50万円に変更されました。■在職老齢年金制度とは…
働きながら(厚生年金に加入している又は加入義務の年齢を過ぎても加入要件を満たすような働き方をして給与等を得ている場合)老齢厚生年金を受けることができる人については、給与等(賞与含む)と老齢厚生年金の合計額(1か月当たり)が支給停止調整額を超える場合には、老齢厚生年金額について一部支給停止又は全額支給停止等の支給調整が行われます。
これを在職老齢年金制度といいます。
■支給停止調整額とは…
給与等(賞与含む)と老齢厚生年金の合計額(1か月当たり)がこの金額までなら支給停止なく全額支給されるという基準額のことを「支給停止調整額」といいます。
以前は60歳以上65歳未満と65歳以降では、支給停止調整額が異なっていましたが、令和4年4月の年金制度改正により、60歳以上65歳未満も65歳以上と同じ支給停止調整額に改正されていました。
この支給停止調整額は毎年4月に見直しがあり、令和6年度は、前年の48万円から50万円に変更されました。
■在職老齢年金制度による支給停止計算方法
給与等(賞与含む)の1か月あたりの額と老齢厚生年金の1か月あたりの額の合計が50万円以下であれば年金は支給停止なく全額支給され、50万円を超えた場合は、超えた額の半分が支給停止になります。
尚、老齢基礎年金は給与等に関係なく全額受給できます。
支給停止月額=(総報酬月額相当額…①+基本月額…②-支給停止調整額(令和6年度は50万円)÷2
<例1>
①総報酬月額相当額・・・50万円/月
②基本月額・・・・・・・14万円/月
支給停止月額=(50万円+14万円-50万円)÷2=7万円
7万円の老齢厚生年金が支給停止されます。
<例2>
①総報酬月額相当額・・・30万円/月
②基本月額・・・・・・・14万円/月
支給停止月額=30万円+14万円は44万と50万以下のため、支給停止はありません。
①総報酬月額相当額とは…
調整の対象となる月におけるその者の「標準報酬月額」と「その月以前1年間の標準賞与額の総額を12で除して得た額」を合算して得た額のことです。
※70歳以上の場合は、標準報酬月額に相当する額、標準賞与額に相当する額。
②基本月額とは…
老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額(加給年金を除く)を12月で除して得た額のことです。(老齢基礎年金は支給調整の対象外です。)
■在職定時改定
令和4年4月の年金制度改正により、毎年9月1日に厚生年金に加入中の65歳以上70歳未満の老齢厚生年金受給権者について、前年9月から当年8月までの厚生年金保険加入期間を反映して、年金額を10月分(12月受取分)から改定する仕組みがとられています。
これにより原則として年金額が年に1度増額改定されるため、報酬等に増額がない場合でも在職老齢年金制度による支給停止額には影響が出る可能性があります。
老齢年金を受給していても、70歳までは加入要件を満たす場合は厚生年金に加入し保険料を納めなければなりませんが、その分年金は増えていくことになります。
また、70歳以降厚生年金の加入義務がなくなっても厚生年金の加入要件を満たすような働き方を継続している限りは、年齢の上限なく在職老齢年金制度による老齢厚生年金の支給調整は行われることになります。
在職老齢年金支給停止調整額は、毎年4月に改定されますが、ここ数年の推移は、令和4年度が47万、令和5年度が48万、そして令和6年度が50万となっています。
働いて給与等を得ている方が老齢厚生年金を受給できるようになった時や給与等を得ながら老齢厚生年金を受給している方が給与等を変更する場合等には、少なからず年金額への影響があるため、在職老齢年金制度をよく理解するとともに、毎年この時期は、支給停止調整額についても改定の有無をチェックするようにしましょう。
詳細は下記をご参照ください。
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労災保険料率の変更
2024年4月2日
令和6年度から労災保険率、労務費率、第2種特別加入保険料率が一部改定になりました。
労災保険とは
労働者が業務上の事由又は通勤によって負傷したり、病気に見舞われたり、あるいは不幸にも死亡された場合に被災労働者や遺族を保護するため必要な保険給付を行うものです。
労災保険料は、労働者に支払う賃金総額に労災保険料率を乗じて得た額で、全額事業主が負担することになっています。
労災保険料率
労災保険料率は、事業の種類(業種)ごとに業務災害及び通勤災害に係る災害率に応じ、54の区分に分類された労災保険料率表により定められています。
労務費率
請負による建設事業において、賃金総額を正確に把握することが困難な場合には、労務費率(工事の請負金額に占める賃金総額の割合)に請負金額を乗じて得た額を賃金総額とすることが認められています。
保険料率、労務費率が変更になった事業所は、今年の年度更新では、令和6年度の労災保険の概算保険料は新しい料率で、令和5年度の確定保険料はこれまでの料率での申告をすることになりますのでご注意ください。
変更後の保険料率・労務費率等、詳細は厚生労働省のホームページでご確認ください。
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新たな化学物質規制(安全衛生法関係法令の改正)
2024年3月4日
新たな化学物質規制(安全衛生法関係法令の改正)
2024年4月1日施行日以降、どう変わる?
安全衛生法関係法令の改正に伴い、2023年4月より、新たな化学物質規制が導入されていますが、2024年4月1日に施行を控えているものもあります。
本記事では、主な改正内容について注意点とともに解説します。■2024年4月1日施行、主な改正内容
1、ラベル表示・通知をしなければならない化学物質の追加
ラベル表示・SDS等による通知とリスクアセスメント実施の義務対象物質に、国によるGHS分類で危険性・有毒性が確認されたすべての物質が順次追加され、対象物質が大幅に増加します。
これにより、事業場において取り扱っている化学物質が新たに上記下線の義務に該当してくる可能性が出てきますので、対象物質に該当するか否かの確認をする必要があります。2、ばく露を最小限にすること(ばく露を濃度基準値以下にすること)
厚生労働大臣が定める物質(濃度基準値設定物質)は、リスクアセスメント結果を踏まえ、労働者がばく露される濃度を基準値以下とすることが義務付けされます。…①
尚、濃度基準未設定物質については、2023年4月1日に施行されているとおり、労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される程度を以下の方法等で最小限にしなければなりません。…②
(1)代替物等を使用する。
(2)発散源を密閉する設備、局所排気装置または全体喚起装置を設置し、稼働する。
(3)作業の方法を改善する。
(4)有効な呼吸器保護具を使用する。
※(1)→(4)の順に手段を検討し、事業者自らが選択の上、実施します。3、ばく露低減措置等の意見聴取、記録作成・保存
2に基づく措置の内容と労働者のばく露の状況について労働者の意見を聴く機会を設け、記録を作成し、3年間保存しなければなりません。(厚生労働大臣が定めるがん性物質は30年間保存)
※2の②は2023年4月1日施行、2の①は2024年4月1日施行)4、リスクアセスメントに基づく健康診断の実施・記録作成等
リスクアセスメントの結果に基づき講ずるばく露低減措置の一環として、リスクアセスメント対象物による健康影響の確認のため、必要があると認めるときは、医師等が必要と認める項目の健康診断を行い、その結果に基づき必要な措置を講じなければなりません。
また、濃度基準値設定物質について、基準値を超えてばく露したおそれがあるときは、速やかに医師等による健康診断を実施しなければなりません。
上記の健康診断を実施した場合は、その記録を作成し、5年間(がん原生物質に関する健康診断は30年間)保存しなければなりません。5、衛生委員会の付議事項の追加
上記2及び4により講ずる措置に関することを衛生委員会の付議事項に追加し、化学物質の自律的な管理の実施状況の調査審議を行うことが義務付けされます。(2の②については2023年4月1日施行)
※衛生委員会の設置義務がない労働者50人未満の事業場も、意見聴取の機会を設けなければなりません。6、皮膚等障害化学物質への直接接触の防止(健康障害を起こすおそれのある物質関係)
皮膚等への障害を引き起こしうる化学物質を製造・取り扱う業務に労働者を従事させる場合、物質の有害性に応じて、労働者に障害等防止用保護具(保護眼鏡、不浸透性の保護衣、保護手袋又は履物等適切な保護具)を使用させなければなりません。
(1)健康障害を起こす恐れがあることが明らかな物質の製造・取り扱い
2023年4月1日~保護具の使用が努力義務 → 2024年4月1日~保護具の使用が義務。
(2)健康障害を起こす恐れがないことが明らかなもの以外の物質の製造・取り扱い
2023年4月1日~保護具の使用が努力義務。7、化学物質管理者の選任の義務化
■選任が必要な事業場
リスクアセスメント対象物を製造、取り扱い、または譲渡提供をする事業場(業種・規模要件なし)
※選任義務は、個別の作業場ごとでなく、工場、営業所等の事業場ごと。
※一般消費者の生活の用に供される製品のみを取り扱う事業場は、対象外。
※事業場の状況に応じ、複数名の選任も可能。
■選任要件
(1)リスクアセスメント対象物の製造事業場
専門的講習の終了者(講義カリキュラムは、科目・時間等が定められています)
(2)リスクアセスメント対象物の製造事業場以外の事業場
資格要件なし(専門的講習等の受講を推奨)
※専門的講習は外部の任意の専門機関の講習を受講することができ、また、カリキュラムを満たしていれば事業場内教育で行うことも可能です。
■職務
①ラベル・SDS等の確認
②化学物質に関わるリスクアセスメントの実施管理
③リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の選択、実施の管理
④化学物質の自律的な管理に関わる各種記録の作成・保存
⑤化学物質の自律的な管理に関わる労働者への周知、教育
⑥ラベル・SDSの作成(リスクアセスメントの製造事業場の場合)
⑦リスクアセスメント対象物による労働災害が発生した場合の対応
■選任・周知
選任義務が発生した日から14日以内に選任し、化学物質管理者に必要な権限を与えるとともに、化学物質管理者の氏名を事業場の見えやすい箇所に掲示する等して、労働者に周知しなければなりません。(労働基準監督署への届出義務はありません)8、保護具着用管理責任者の選任の義務化
■選任が必要な事業場
リスクアセスメントに基づく措置として労働者に保護具を使用させる事業場
■選任要件
保護具について一定の経験及び知識を有するもの(具体的な要件は令和4年5月31日付け基発0531第9号通達を参照)※資格要件を満たすものを選任する場合でも保護具の管理に関する教育を受けることが望ましいとされています。
また、資格要件を満たすものを選任できない場合でも、保護具の管理に関する教育を受講した者を選任することができます。
■職務
①保護具の適正な選択に関すること
②労働者の保護具の適正な使用に関すること
③保護具の保守管理に関すること
■選任・周知
選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、保護具着用管理責任者に必要な権限を与えるとともに、保護具着用管理責任者の氏名を事業場の見えやすい箇所に掲示するなどして、労働者に周知しなければなりません。(労働基準監督署への届出義務はありません)9、雇い入れ時教育の拡充
雇入時又は作業内容の変更の際に行う教育のうち、特定の業種では一部教育項目の省略が認められていましたが、この省略規定が廃止され、危険性・有害性のある化学物質を製造し、または取り扱う全ての事業場で、化学物質の安全衛生に関する必要な教育を行わなければなりません。上記の他にも2024年4月1日施行の改正として、SDS等による通知事項の追加及び含有量表示の変更、作業環境測定結果が第3管理区分の事業場に対する措置の強化等があります。
2023年4月1日に既に施行されているものも含め、詳細は厚生労働省のホームページで確認してください。
普段意識せずに職場で使用している商品や製品に含まれる化学物質によって思わぬ労働災害が発生するケースもあります。
安全データシート(SDS)の適用法令を確認し、安全衛生法の適用の有無及びどのジャンルに該当する化学物質なのかを確認することで、自社において対策すべき事項を確認していきましょう。
厚生労働省のホームページでは確認の手順なども紹介されています。化学物質による労働災害を防ぎ、労働者が安全に働くことができるよう、2024年4月1日施行に備えて、再確認していきましょう。
詳細は下記、厚生労働省ホームページをご確認ください。
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協会けんぽの保険料率が改定されました。
2024年3月4日
令和6年度の全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料率の改定が発表されています。
改定後の健康保険料率と介護保険料率の適用は3月分(4月納付分)からとなりますので、給与から控除する保険料の変更を忘れないように注意してください。
任意継続被保険者及び日雇特例被保険者の方は4月分(4月納付分)から変更となります。
全国健康保険協会では、都道府県ごとに健康保険料率を設定しています。
都道府県ごとの加入者1人当たりの医療費に応じて保険料率が低くなったり高くなったりしますが、疾病の予防や健康づくりの取組などにより加入者の医療費が下がれば、その分の健康保険料率を下げることが可能となる仕組みです。
<健康づくり>
①健康状態を確認するために健診を毎年受けましょう!!
自分自身の生活習慣を見直し、改善に取り組むきっかけとなります。
また、早期に病気を発見し、早期治療につなげることができます。
②健診結果に応じて、引き続きの健康づくり、特定保健指導の利用、医療機関への早期受診といった行動に移しましょう!!
③適度な運動、バランスの良い食生活、禁煙等、日々の健康づくりも大切です。
具体的な都道府県ごとの健康保険料率は、全国健康保険協会のホームページでご確認下さい。
介護保険料率は、全国一律で1.60%に変更となっています。
※健康保険組合や国民健康保険組合に加入の事業主の方は、各組合にご確認下さい。
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専門業務型裁量労働制の導入・継続の手続き方法等 一部改正について
2024年2月2日
2024年4月1日施行
専門業務型裁量労働制の導入・継続の手続き方法等 一部改正について
~専門業務型裁量労働制とは~
業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として省令及び告示によって定められた20(改正により下記※が追加になり19から20業務に変更)の業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間を働いたものとみなす制度です。
対象業務には、研究開発等専門性の高い分野や、プロデューサー等のクリエイティブな業務が含まれます。(※2024年4月1日以降、銀行または証券会社におけるM&Aアドバイザー業務も対象として追加されました)法改正により、専門業務型裁量労働制の協定内容・手続き方法等について一部変更が生じます。
2024年4月1日以降、専門業務型裁量労働制を新たに導入、あるいは、既に導入しており2024年4月1日以降も継続する場合、以下の対応をしていただく必要があります。
■対応の手順
STEP1:改正に対応した労使協定の締結(過半数労働組合又は過半数代表者と結ぶ)
専門業務型裁量労働制を継続導入する場合は、仮に現在の労使協定が有効期間内であったとしても2024年3月末日までに改正後の協定内容で協定しなければなりません。
協定は作業場への掲示等により労働者に周知しなければなりません。
<協定内容> ※下記、赤字が令和6年4月1日以降追加で必要となる項目です。
1.対象業務
対象業務は業務の性質上その遂行の方法等を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、使用者が業務遂行の手段や時間配分等について指示をすることが困難なものとして省令及び告示によって20業務が定められています。
対象業務として労使協定で定めても、実態として業務の遂行方法や時間配分等、労働者の裁量に委ねることができない場合等は適用できません。
個別の業務内容や実態に応じて慎重に判断する必要があります。
2.1日の労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
1日についての適用労働者の労働時間数として具体的に定めます。1週間や1か月単位の時間を協定することはできません。
みなし労働時間の設定に当たっては、対象業務の内容並びに適用労働者に適用される賃金・評価制度を考慮して適切な水準のものとし、相応の処遇を確保することが必要です。
3.対象業務の遂行手段や時間配分の決定などに関し、使用者が適用労働者に具体的な指示をしないこと
時間配分の決定には、始業・終業の時刻の決定も含まれます。
使用者から始業・終業の時刻の一方でも指示される場合は対象業務に該当しません。
また、業務量が過大である場合や、期限の設定が不適切である場合等は、労働者による時間配分の裁量がないものと判断される可能性があります。
そのようなおそれがある場合は適切に見直しを行うことが必要です。
4.適用労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉確保措置の具体的内容
労働時間の状況の把握が必要です。そしてその状況に基づいて、どのような健康・福祉確保措置を講ずるかを明確に協定する必要があります。
健康確保措置は、適用労働者全員を対象とする措置から一つ以上、かつ個々の適用労働者の状況に応じて講ずる措置から一つ以上を実施することが望ましいとされています。
中でも特に③の措置を実施することが望ましいとされています。
<適用労働者全員を対象とする措置>
①勤務間インターバル
②深夜勤務の回数制限
③労働時間の上限設定、超えた場合の制度適用の解除
④有休の連続消化の促進
<個々の適用労働者の状況に応じて講ずる措置>
①一定の労働時間を超える適用労働者に対する医師の面接指導の実施
②代償休日又は特別な休暇の付与
③健康診断の実施
④心とからだの健康相談窓口の設置
⑤適切な部署への配置転換
⑥産業医による助言・指導、保険指導の実施
5.適用労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
適用労働者からの苦情の処理に関する措置を使用者が実施すること及びその具体的内容を協定しなければなりません。
6.制度の適用に当たって労働者本人の同意を得なければならないこと
7.制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取り扱いをしてはならないこと
8.制度の適用に関する同意の撤回手続き
撤回の申出先となる部署及び担当者、撤回の申出の方法等その具体的内容を明らかにすることが必要です。
9.労使協定の有効期限(3年以内とすることが望ましい)
自動更新する旨を協定することは認められません。労使協定の有効期間の満了に当たっては、再び協定する必要があります。
また、労使協定の内容は一定の期間ごとに見直すことが適当です。
10.労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を労使協定の有効期間中及びその期間満了後3年間保存すること
STEP2:改正に対応した就業規則・労働契約の整備
裁量労働制を適用するには労働契約上の根拠が必要なため、協定とは別に就業規則や労働契約等に裁量労働制に関する規定を定める必要があります。
労働者の同意を得る前に、就業規則や労働契約について改正に対応した内容に変更する必要があります。
常時10人以上の労働者を使用する事業場において就業規則の変更をした場合は、管轄の労働基準監督署への届出も必要です。
STEP3:専門業務型裁量労働に関する協定届の届け出(労働基準監督署へ)
改正省令に対応した所定の様式(様式第13号))により所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
すでに専門型業務型裁量労働制を採用しており、改正後も継続して採用する場合は、たとえ現在の協定届が有効期間内であっても、改正に対応した協定届を2024年3月末までに届け出る必要があるため注意が必要です。
STEP4:労働者本人の同意取得
2024年4月1日以降、労働者に専門業務型裁量労働制を適用するためには、下記①~③の内容を説明したうえで、労働者本人の同意を得ることが必要です。
①対象業務の内容や労使協定の有効期間を始めとする労使協定の内容等
②同意した場合に適用される賃金・評価制度の内容
③同意をしなかった場合の配置及び処遇
同意は、記録の保存の観点からも書面で得ることが必要です。
また、上記の内容説明においてもトラブル防止の観点から書面で行うことが望ましいでしょう。
本人の同意は労働者ごとに、かつ労使協定の有効期間ごとに得る必要があります。
労働者自身が制度をよく理解したうえで同意をすることが重要です。
同意をしなかった労働者に対して、解雇その他不利益な取り扱いをしてはなりません。
また同意をしない労働者に対してはこの制度を適用できませんので、通常の労働時間による時間管理を行う必要があります。
専門業務型の対象業務は、もともと事業主による時間管理が馴染まない業務になっているため、通常の労働時間管理の下では対応が難しい可能性が高いと思います。
そのような場合、どのような業務に就いていただくのか、そして賃金などの処遇はどのようになるのか等もあらかじめ説明しておく必要があります。
STEP5:制度の実施
使用者は、健康・福祉確保措置や苦情処理措置の実施、記録の保存など労使協定で定めた措置を実施するなど、労使協定を遵守しなければなりません。
STEP6:労使協定の有効期間満了後の措置
①STEP1<協定内容>10に記載した記録の保存義務を遵守すること。
②有効期間満了後、専門業務型裁量労働制を継続する場合は、上記STEP1及びSTEP3~STEP6-①を再度行う必要があります。
STEP1の労使協定の自動更新は認められていませんし、STEP4の個別の同意も労使協定の有効期間ごとに得る必要があります。
一度行えばよいというものではなく、有効期間ごとに毎回行う必要があることに注意が必要です。
改正期日が迫ってきましたので、2024年4月1日以降専門業務型裁量労働制を導入予定、又は2024年4月1日以降も継続して導入する予定の事業場においては、対応に漏れがないか早めに確認されると良いでしょう。
詳細は下記、厚生労働省のホームページをご確認下さい。
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被災したとき
2024年2月2日
被災した方が利用できる社会保険等の制度についてのご案内です。
1.国民年金保険料の免除
国民年金に加入の方は、震災・風水害・火災その他これらに類する災害により、被保険者の所有する住宅、家財その他の財産につき、被害金額がその価格の概ね2分の1以上の損害を受けたときは、ご本人からの申請に基づき国民年金保険料が免除になります。
2.社会保険料の納付の猶予
事業主、船舶所有者の方は、震災・風水害・火災その他これらに類する災害により財産に相当の損害を受け、納付者が納付すべき保険料(厚生年金保険料、健康保険料、船員保険料、子ども・子育て拠出金)の納付が困難となった場合は、事業主の申請に基づき、保険料の納付の猶予を受けることができる場合があります。
この納付の猶予を受けず、保険料等を納付しないままにしておくと、納付期限を経過し、督促状の送付を受け、さらには指定期限を経過し、延滞金が発生する場合がありますので、お早めにお近くの年金事務所へご相談ください。
3.年金受給権者の方
次の年金・給付金の受給権者等(※)で、所得があるために年金の一部または全部が支給停止されている方で、震災・風水害・火災その他これらに類する災害により、住宅、家財その他の財産について概ね2分の1以上の損害を受けたときは、申請に基づきその損害を受けた月から翌年の7月までの支給停止を行いません。
なお、翌年に、その前年の所得確認を行いますが、前年の所得が年金・給付金の所得制限額を超えていたことが判明した場合には、損害を受けた月まで遡って支給停止が行われますので、あらかじめご了承願います。
(※)対象となる年金・給付金の受給権者等
・20歳前に初診日がある傷病の障害基礎年金の受給権者(年金コード2650、6350)
・老齢福祉年金の受給権者
・特別障害給付金の受給資格者
4.被災に伴う各種手続き
その他の被災に伴う各種手続きについては、年金事務所へご相談ください。
・被災に伴い保険料の納付書を紛失したとき(再発行の手続き)
・被災に伴い年金証書、年金手帳を紛失したとき(再発行の手続き)
・家屋の流失等により郵便物が届かないとき(現況届、生計維持確認届、年金請求書等)
・年金受給者である家族が行方不明、または死亡したとき
その他詳細は、日本年金機構のホームページでご確認ください。
※国民健康保険については、各市区町村役場へご相談ください。
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令和6年4月1日施行 改正障害者差別解消法
2024年1月9日
令和6年4月1日施行 改正障害者差別解消法
~合理的配慮の提供が「事業者」についても義務化されます~
1.概要
障害を理由とする差別の解消を推進し、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会(共生社会)の実現に資することを目的として、平成25年6月、障害者差別解消法が制定され、平成28年4月施行されました。
この法律は、事業者等(サービスや商品の提供者)による障害のある人(サービス利用者)への①不当な差別的取り扱いを禁止し、②「合理的配慮の提供」を行うことを義務化するものです。
当初、この合理的配慮の提供は国・地方公共団体等には法的義務とされていましたが、事業者については努力義務に留まっていました。
令和3年改正、令和6年4月1日施行の改正障害者差別解消法では、合理的配慮の提供が事業者についても義務化されます。※
国・地方公共団体等 事業者 ①不当な差別的取り扱い 禁止 禁止 ②合理的配慮の提供 義務 努力義務 ⇒ 義務※ 2.障害者差別解消法における「障害者」とは
障害者手帳をもっている人だけでなく、身体障害、知的障害、精神障害等がある人で、障害や社会の中にある障壁によって日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人全てが対象です。(性別・年齢を問いません)
3.障害者差別解消法における「事業者」とは
商業その他の事業を行う企業や団体、店舗等であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同じサービス等を反復継続する意思をもって行う者です。(個人事業主やボランティア活動をするグループ等も含みます)
4.不当な差別的取り扱いの禁止とは
企業や店舗等の事業者がそのサービス提供等を行うに当たり、障害を理由として、サービスの提供を拒否したり、提供するにあたり場所や時間を制限するなど、障害者でない者と比較して、不当な(正当な理由なく)差別的取り扱いをすること等により、障害のある人の権利利益を侵害することが禁止されています。
正当な理由がある場合は不当な差別的取り扱いには該当しませんが、その判断は個別の事案ごとに慎重に判断すべきであり、また正当な理由があると判断した場合はその理由を丁寧に説明し理解を得ることが必要です。
<正当な理由の判断の視点>
①客観的にみて正当な目的の下に行われたものか
障害者・事業者・第三者の権利利益の観点から検討します。
(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等)
②その目的に照らしてやむを得ないといえるか
・①の目的のために必要な範囲のものとなっているか
・必要な範囲を超え不必要な制限を課すものとなっていないか
5.合理的配慮の提供とは
日常生活、社会生活において提供されている設備やサービス等については、障害のない人は簡単に利用できても障害のある人にとっては利用が難しく結果として活動が制限されたり、障害者の権利利益が侵害されてしまう場合があります。
このような場合において、個々の場面で、障害者から社会的な障壁を取り除いてほしい旨の意思の表明があった場合(※①)にはその実施に伴う負担が過重でないとき(※②)は、障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的な障壁を取り除くために必要かつ合理的な配慮(※3)を講ずることが求められています。
※①意思の表明
本人からの意思表明が困難な場合、家族や支援者・介護者が本人を補佐して行う意思の表明も含まれます。
※②過重な負担の判断要素等
・事業への影響の程度
・実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
・費用・負担の程度
・事務・事業規模
・財政・財務状況
※③必要かつ合理的な配慮とは
事業者の事業の目的・内容・機能に照らし、以下の3つすべてを満たす必要があります。
(1)必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること
(2)障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること
(3)事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと
社会的障壁を除去する意思の表明があり、その内容が「必要かつ合理的な配慮」に該当する場合、過重な負担に該当しない限り合理的配慮の提供が必要です。
仮に必要かつ合理的な配慮や過重な負担に該当しない場合でも、建設的な対話により、代替案等の対応策を検討していくことが重要です。(建設的対話を一方的に拒むことは合理的配慮の提供義務違反となる可能性もあるため注意が必要です。)
6.障害者差別解消法と障害者雇用促進法との違い
今回施行になる改正障害者差別解消法は、主に商品やサービスを提供する民間の事業者や行政機関に対する禁止事項や義務を定めたものとなります。
雇用や就業に関しては、障害者雇用促進法にて別に定められています。
平成28年4月施行の雇用促進法において、雇用分野での不当な差別的取り扱い、合理的配慮の提供等は、既に事業主に対して法的義務となっています。
障害者差別解消法 障害者雇用促進法 所 管 内閣府 厚生労働省 分 野 雇用分野以外の全般 雇用分野 目 的 障害を理由とする差別の解消 障害者の職業の安定 7.まとめ
教育、医療、福祉、公共交通等、日常生活及び社会生活全般に係る分野が広く対象となります。
これまでの対応・運用では知らずに義務違反になってしまう可能性もあります。
また、従業員が知らずに対応してしまうこともあるかもしれません。
義務違反になるような対応をすることは、企業の社会的信用にかかわる問題となります。
企業や店舗等においては、どのような対応が不当な差別的取り扱いに該当する可能性があるか、どのようなことが障壁になりうるか、そしてその障壁を取り除くにはどのような対応が考えられるか等、社内で検討し勉強会を開くなどして社内での認識や意識の統一を図ることが必要だと思います。
同時に、障害者から相談があったときの相談窓口等を事前に決めておき、組織的な対応ができるようにしておくことも重要でしょう。
内閣府のホームページでは、ケーススタディなども掲載されています。
令和6年4月1日の施行日までに、準備を進めていきましょう。
そして、障害のある人もない人も、互いにその人らしさを認め合いながら、共に生きる社会の実現を目指していきましょう。
詳細は下記をご参照ください。