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職業安定法改正について
2022年10月4日
2022年10月1日施行 職業安定法改正について
求職者が安心して求職活動を行うことができる環境の整備と、マッチング機能の質の向上を目的とし、今回の改正では、求人等に関する情報の的確な表示の義務化、個人情報の取扱いに関するルール等が整備されました。
また募集情報等提供事業者の定義が拡大し、これまで職業安定法の規制の対象外であった求人メディア等に対しても職業安定法の規制が及ぶように改正されています。
募集情報等提供事業者のうち、求職者に関する情報を収集する募集情報等提供事業者(特定募集情報等提供事業者)には届出の義務化なども新設されています。
改正の対象は、求人企業、職業紹介事業者、募集情報等提供事業者等に及びますが、ここでは求人企業に対する改正について取り上げたいと思います。
○ 改正点1
★求人等に関する情報(①求人情報 ②自社に関する情報)の的確な表示の義務化
新聞・雑誌等に掲載する広告、文書の掲出、書面、FAX、ウェブサイト、放送等、様々な広告・連絡手段が的確な表示の対象です。
①求人情報や自社に関する情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を行ってはいけません。
<虚偽の表示とは~> 意図してその情報と実際の労働条件や自社の情報等を異ならせた表示で具体的には下記のような内容が該当します。(一例です)
●「正社員」と謳いながら、実際には「アルバイトやパート」の募集をする。
● 基本給〇円と表示しながら実際にはその金額よりも低額の賃金を予定している場合
● 実際には採用の予定のない求人を出す場合
● 上場企業でないにも関わらず、上場企業であると表示する。
● 自社の業種について、実際と異なる業種を記載する。
※当事者の合意に基づき、求人等に関する情報から実際の労働条件を変更することとなった場合は、虚偽の表示には該当しません。
<誤解を生じさせる表示とは~> 虚偽の情報でなくとも、一般的・客観的に誤解を生じさせるような表示で具体的には下記のような内容が該当します。(一例です)
● 関係会社・グループ企業が存在している企業が募集を行う場合、実際の募集企業とその他が混同しないように表示しなければなりません。
(例)優れた実績のあるグループ企業の実績を大きく記載し、あたかもその求人企業の 実績であるかのように表示する。
● 雇用契約を前提とした労働者の募集と、フリーランス等の請負契約の受注者の募集が混同されることのないよう表示しなければなりません。
(例)請負契約の案件であることを明示せず、労働者の募集と同じ表示をする。
● 月給・時間給等の賃金形態、基本給、定額の手当、通勤手当、昇給、固定残業代等の賃金等について、実際よりも高額であるかのように表示してはいけません。
(例)社内で高い労働者の基本給を例示し、全ての労働者の基本給であるかのように表示する。
〇万円~〇万円と賃金に幅を持たせることや、モデル収入例を表示すること自体は許容されますが、賃金の幅の上限を実際よりも高額にし、高額な賃金が支払われる可能性があるような表示や、モデル収入例であるのに必ず払われるような表示は「誤解を生じさせる表示」に該当します。
モデル収入例を表示する場合は、同職種社員の給与の平均を例示する等、誤解を生じさせない表示にする必要があります。
(例)固定残業代について基礎となる労働時間数を明示せず、基本給に含めて表示する。
基本給と固定残業代を分け、固定残業代が何時間相当の残業にあたるのか、また残業の有無にかかわらず支給することと、実際の残業時間がその時間を超えた場合は、超えた時間につき別途支給する旨等の記載が必要です。
● 職種や業種について、実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いてはいけません。
(例)営業職が中心の業務について、事務職と表示する。
②正確かつ最新の内容に保つ義務
以下の措置を講じる等、求人情報を正確、最新の情報に保たなければなりません。
● 募集を終了・内容変更した場合、速やかに求人情報を終了又は変更する。
● 求人メディア等を活用している場合は、募集の終了や変更が反映されるよう、速やかに依頼する。
● いつの時点の求人情報か明らかにする。(募集を開始した時点、内容を変更した時点)。
● 求人メディア等の事業者から、求人情報の訂正や変更を依頼された場合は、速やかに対応する。
○ 改正点2
★個人情報の取扱いに関するルールの改正
①個人情報利用目的の明示義務の創設
改正前は、求職者の個人情報を「業務の目的の達成に必要な範囲内で収集・使用・保管しなければならない」と規定されていましたが、今回の改正により、業務の目的の達成に必要な範囲内で、インターネットの利用、書面の交付・掲示、メールの利用等その他適切な方法により「目的を明らかにして」収集・使用・保管することが義務づけられました。
求職者の個人情報がどのような目的で収集され、保管され、又は使用されるのか等、求職者が一般的かつ合理的に想定できる程度、具体的に明示する必要があります。
× グループ企業の採用選考にも使用するにもかかわらず、「自社の採用選考の為に使用します」と表示。
○「当社の募集ポストに関するメールマガジンを配信するために使用します」と表示。
○「面接の日程等に関する連絡に使用します」と表示。
その他、求人企業は、求職者等の秘密を守る義務、個人情報のみだりな第三者提供の禁止義務も負っています。
多くの企業では、自社のホームページ等に求人情報を掲載したり、求人メディア等を利用する機会があると思います。
10月1日以降は、上記改正内容が義務化されていますので、改正を知らずに違反してしまうというようなことがないよう、注意が必要です。
詳細は下記厚生労働省のホームページをご参照ください。
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令和4年度の最低賃金が決定しました。
2022年10月4日
令和4年度の最低賃金が決定されました。
効力の発行日は各都道府県により異なりますのでご注意ください。
神奈川県の場合は、効力発生日は令和4年10月1日です。
※単位は円(近隣の都道府県のみ)
都道府県名 令和4年最低賃金 令和3年最低賃金 発効年月日 群馬 895 865 令和4年10月8日 埼玉 987 956 令和4年10月1日 千葉 984 953 令和4年10月1日 東京 1,072 1,041 令和4年10月1日 神奈川 1,071 1,040 令和4年10月1日 静岡 944 913 令和4年10月5日 全国の地域別最低賃金は厚生労働省のホームページをご覧ください。
最低賃金の適用される労働者の範囲
地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。(パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。)
最低賃金の対象とならない賃金
①臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
②1箇月を超える毎に支払われる賃金(賞与等)
③所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金)
④所定労働日以外の労働日に対して支払われる賃金(休日割増賃金)
⑤午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金計算額を超える部分(深夜割増賃金等)
⑥精皆勤手当、通勤手当及び家族手当等
最低賃金以上の賃金額を支払わない場合の罰則
最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。
また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
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育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されます
2022年9月2日
育児休業等期間中は、被保険者からの申出により事業主が申請することによって、社会保険料(被保険者負担分と事業主負担分の両方)が免除になる制度があります。
令和4年10月よりこの育児休業等期間中の保険料の免除要件が改正されます。(10月1日以後に開始する育児休業等について適用されます)
★改正点①
短期間の育児休業等を取得した場合の、月額保険料の取扱いについて
<改正前>
月末時点で育児休業等を取得している場合は、短期間であっても免除される一方で、月途中で取得して月末の前日に終了した場合は免除されない。
<改正後>
従来の要件に加え、同月内に14日以上の育児休業等を取得した場合にも社会保険料が免除される。
同月内に取得と終了があり、その期間が14日以上の育児休業期間であれば、月末に育児休業を取得していなくてもその月の社会保険料が免除されるということです。
月末に育児休業を取得していれば、従来の要件どおり、14日以上の育児休業期間がなくてもその月の社会保険料は免除になります。
同月内に2回に分割して取得・終了していても、その合計が14日以上であれば、社会保険料免除の対象になります。
又、連続する二つの育児休業等を取得している場合は、二つの育児休業等を一つの育児休業とみなして保険料免除の制度を適用します。
★改正点②
賞与月に育児休業等を取得している場合の取扱いについて
<改正前>
月末時点で育児休業等を取得している場合は、短期間であっても当月の賞与に係る保険料が免除される。
<改正後>
育児休業等の期間が1ヵ月超の場合に限り、賞与に係る保険料が免除される。
この1ヵ月超とは連続した育児休業期間(暦日判定)を指します。
これまでは月末に育児休業を取得していれば、育児休業期間の日数に関係なくその月の賞与の社会保険料が免除されていましたが、改正により育児休業の期間が1ヵ月を超えていなければ、たとえ月末に育児休業を取得していても、賞与については社会保険料が免除にならないということになります。
令和4年4月1日より、妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別周知・意向確認が義務化されたことに伴い、育児休業期間中の社会保険料の取扱いに関する内容も説明すべき事項になっています。
今回の育児休業等期間中における社会保険料の免除要件の改正についても、10月1日以降開始の育児休業取得者については、説明内容に反映させるよう注意が必要です。
また、改正に伴い、育児休業取得者申出書の届出様式も変更になりますのでご注意下さい。
詳細は下記をご参照下さい。
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雇用保険料の変更を忘れずに!!
2022年9月2日
5月のお役立ち情報でもお知らせしましたが、「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が令和4年3月30日に国会で成立し、令和4年度の雇用保険料率が段階的に引き上げられます。
第一段階として、令和4年4月から事業主負担の保険料率が変更になりましたが、労働者負担は変更が無かったため、給与計算には影響はありませんでした。
第二段階として、令和4年10月から労働者負担・事業主負担の保険料率が変更になります。
今回は労働者負担も変更になりますので、給与から控除する雇用保険料の変更が必要です。
賃金締日が10月中にある給与から雇用保険料を変更してください。
保険料は、毎月の給与総支給額に、業種ごとに定められた保険料を乗じて計算します。
(例)20日締の場合 9/21~10/20の給与 / 末締の場合 10/1~10/31の給与
変更し忘れないようにご注意ください!!
業種ごとの料率等、詳細は厚生労働省のホームページでご確認ください。
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育児・介護休業法の改正②(令和4年10月1日施行)
2022年8月2日
令和4年4月1日の施行に引き続き、令和4年10月1日施行の改正が迫ってきました。
★令和4年10月1日施行 改正内容
①育児休業の分割取得
<改正前>
子が1歳に達するまでの育児休業の取得回数は、配偶者の死亡等特別な事情がない限り、原則として子1人につき1回までとされ、申出ることができる休業は連続したひとまとまりの期間です。(出生日又は出産予定日のいずれか遅い方から8週間以内に取得するパパ休暇は1回とカウントされないため、その後通常の育児休業を1回取得することが可能です。)
<改正後>
子が1歳に達するまでの育児休業の取得は、理由を問わず2回まで分割して取得することが可能になります。3回目の取得については改正前と同様に特別の事情がある場合にのみ可能とされます。(パパ休暇は廃止されます)
2回に分割取得する場合は、育児休業の開始日の繰り上げ変更及び育児休業の終了日の繰り下げ変更もそれぞれ各1回できることになります。
②育児休業の撤回のルールの見直し
<改正前>
子が1歳までの育児休業、1歳から1歳6ヶ月、1歳6ヶ月から2歳までの育児休業において、それぞれの期間における休業の申出を一度撤回すると、その期間における再度の休業の申出は特別な事情がある場合でなければできません。
<改正後>
子が1歳までの育児休業が2回に分割取得できるようになることに伴い、1回目の申出を撤回した場合は、1回目は取得したこととみなされ再度の申し出ではできませんが、2回取得できる為、2回目を申し出ることは可能です。1歳から1歳6ヶ月、1歳6ヶ月から2歳までの育児休業の申出を撤回した場合は、改正前と同様に特別の事情がある場合を除き、再度の申出はできません。
③1歳以降の育児休業の見直し
<改正前>
育児休業の開始日は1歳、1歳6ヶ月の時点に限定されているため、育児休業を期間の途中で交代することはできません。また、1歳以降の育児休業の再取得は不可とされています。
<改正後>
育児休業の開始日が柔軟化され、原則は改正前と同様としつつ、配偶者が1歳又は1歳6ヶ月以降育児休業をしている場合は、配偶者の休業終了予定日の翌日以前の日を育児休業開始予定日とすることができるようになります。
これにより、期間の途中に夫婦が交代で育児休業を取得できるようになります。又、それに伴い1歳以降の育児休業(1歳から1歳6ヶ月、1歳6ヶ月から2歳)の取得については原則として各1回と定められるとともに、他の子についての産前・産後休業、産後パパ育休、介護休業又は新たな育児休業の開始により育児休業が終了した場合で、産休等の対象だった子等が死亡した等の特別な事情があるときは、再度育児休業を取得できることとなります。
④出生時育児休業(産後パパ育休)の創設
<改正後>
パパ休暇(出生日又は出産予定日のいずれか遅いほうから8週間以内に取得を開始し、8週間以内に休業を終了した場合は、この休業を1回とカウントせず、これとは別に1回の育児休業の申出をすることができる。)は廃止され、出生時育児休業(産後パパ育休)が創設されます。
産後パパ育休は、子が1歳に達するまでの育児休業とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで休業が取得できる制度です。分割して2回まで取得可能ですが、2回分をまとめて最初に申し出る必要があります。2回分をまとめて申し出なかった場合は、事業主は2回目の申出を拒むことができるとされています。申出は原則休業の2週間前までですが、雇用環境の整備等について、法を上回る取り組みを労使協定で定めている場合は、1ヶ月前までとすることもできます。
育児休業中は原則就業不可とし、労使合意のもとあくまで一時的、臨時的なものに限り可能とされていますが、産後パパ育休においては、労使協定の締結を条件とし、事前調整の上、一定の範囲内での就業を可能としています。臨時的でなくとも就業が可能という点では通常の育児休業とは異なる部分となります。産後パパ育休中の就業を不可と定めることも可能です。
★就業可能上限
〇休業期間中の所定労働日数、所定労働時間の半分以下
〇休業開始・終了日を就業日とする場合はその日の所定労働時間数未満
★手続きの流れ
〇労使協定の締結
〇労働者が就業を希望する場合は、産後パパ育休開始日の前日までに、就業可能日と就業可能日における就業可能な時間帯、その他労働条件を申出。
〇事業主は就業したい旨の申出を受けたときは、就業可能日のうち就業させることを希望する日(希望しない場合はその旨)、就業させることを希望する日にかかる時間帯その他の労働条件を速やかに提示。この提示に対して休業開始日の前日までに労働者が同意を行った範囲内で就業させることが可能。
〇事業主は上記の同意を得た場合は、同意を得た旨と就業させることとした日時、時間帯その他労働条件を労働者に通知。産後パパ育休中は一定の要件のもと就業が可能とはいえ、育児休業中は就業しないことが原則であるため、事業主から就業の申出を一方的に求めることや、労働者の意に反するような取扱いは認められないことに注意が必要です。また、育児休業中の就業日数により、育児休業給付や育児休業中の社会保険料免除等の要件を満たさなくなる可能性があることも事前に説明し、労働者が制度を理解した上で就業の希望の有無を判断できるように留意することが大切です。
10月1日施行の改正に伴い就業規則の変更、労使協定の変更と再締結、育児休業に関する制度の個別通知と取得の意向確認様式の変更、各種届出の社内様式の変更等が必要となります。労使協定により、一定の条件の労働者について育児休業、出生時育児休業の対象から除外することができますが、労使協定の締結をしていない場合は、締結するまでは除外できないため注意が必要です。
また、今回は育児介護休業法だけでなく、雇用保険法(育児休業給付の改正)及び健康保険法、厚生年金保険法(社会保険料免除要件の見直し)等関連する法改正もあります。出生時育児休業の創設や育児休業開始日の柔軟化により育児休業の取得が促進されることが予測されます。育児休業の取得申出がでた時に困らないよう、業務の棚卸や体制の見直し等にも早めに取り組んでいかれると良いでしょう。
詳細については下記をご参照ください。
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短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大
2022年8月2日
平成28年10月から、特定適用事業所で働くパート・アルバイト等の短時間労働者が一定の要件を満たすことで、健康保険・厚生年金保険の被保険者となることとなりましたが、法律改正に伴い、令和4年10月から短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用が更に拡大されます。
令和4年10月からの改正点
「特定適用事業所」の要件
(変更前)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所
(変更後)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所
「短時間労働者」の適用要件
(変更前)雇用期間が1年以上見込まれること
(変更後)雇用期間が2カ月を超えて見込まれること(通常の被保険者と同じ)
対象 要件 平成28年10月~(現行) 令和4年10月~(改正) 事業所 事業所の規模 常時500人超 常時100人超 短時間労働者 労働時間 1週の所定労働時間が20時間以上 変更なし 賃金 月額88,000円以上 変更なし 勤務時間 継続して1年以上使用される見込み 継続して2ヶ月を超えて使用される見込み 適用除外 学生ではないこと 変更なし 事前準備を始めましょう!!
特定適用事業所(令和4年10月以降新たに特定適用事業所に該当する事業所を含む)で、令和4年10月から新たに被保険者となる従業員がいる場合は「被保険者資格取得届」等の提出が必要です。
事前に準備を始めましょう!!
①令和4年10月から新たに被保険者となる短時間労働者の把握
②令和4年10月から新たに被保険者となる従業員への説明
③令和4年10月以降の「資格取得届」の準備
詳細は、厚生労働省のガイドブックでご確認ください。
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代替休暇とは?
2022年7月4日
2023年4月1日から、中小企業においても月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が25%以上から50%以上に引き上げられますが、労働者の健康を確保する観点から特に長い時間外労働をさせた労働者に休息の機会を与えることを目的に、この引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇を付与する制度を設けることができます。
この休暇制度を「代替休暇」といいます。
代休や振休と混同しやすいですが、代替休暇はあくまで1ヶ月の法定時間外労働時間数が60時間を超えた場合の制度であり、この制度を設ける場合には労使協定の締結が必要になります。
★代替休暇の時間数の計算方法
(1ヶ月の法定時間外労働時間数-60(時間))×換算率
換算率とは代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率…※①から代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率…※②を控除した率です。
※①:50%以上の率で、労使協定で定めます。※②:25%以上の率で、労使協定で定めます。
仮に1ヶ月の法定時間外労働時間数が80時間だった場合、上記の式に当てはめて計算すると (80時間-60時間)×25%(※①を50%、②を25%と仮定した場合)=5時間分 の代替休暇を取得することが可能ということになります。
★代替休暇の単位
1日、半日、1日または半日のいずれかよって与えることとされています。
半日とは所定労働時間の半分ですが、午前と午後で異なる時間とすることも可能です。(労使協定に定める)
仮に1日の所定労働時間が8時間、代替休暇の時間数が10時間ある場合、1日(8時間)の代替休暇を取得し、端数(※2時間分)は割増賃金で支払うか、時間単位の有給休暇を採用している場合は、時間単位の有給休暇を合わせて、1日または半日の単位にして付与することも可能です。
但し、時間単位の年次有給休暇は労働者の請求で発生するものですので、会社から強要することはできません。
※割増賃金を支払うのは、代替休暇2時間に対応する時間外労働(2時間を換算率で除した時間)に係る引上げ分の割増賃金
★代替休暇を与えることができる期間
代替休暇を取得する意向がある場合は、法定時間外労働が1ヶ月60時間を超えた月の末日(賃金締日)の翌日から2ヵ月以内の期間で与える必要があります。
★代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日
代替休暇は、制度を取り入れたとしても取得するかどうかは労働者の意向によります。労働者に取 得の意向がなければ、割増賃金の支払いで清算する必要があります。
そのため、代替休暇の取得の意向は賃金締日の翌日以降、早い段階で確認し、賃金支払日に結果を反映させる必要があります。
取得日の決定方法及び割増賃金支払日についても労使協定にて協定しておきましょう。
代替休暇は1ヶ月に60時間を超えて時間外労働を行わせた労働者について、労使協定により、法定割増賃金率の引き上げ(25%以上⇒50%以上)分の割増賃金の支払いに代えて、有給の休暇を与えることができることとしたものですので、代替休暇を与えても通常の25%以上の割増率の支払いは必要です。
また、代替休暇の取得意向を示していたが実際には取得できなかったという場合には、取得しないことが確定後の直近の賃金にて残りの25%以上の割増賃金の支払いが必要となります。
また、取得の意向は労働者の意思により決定されるもので、義務付けられるものではないというところにも注意が必要です。
代替休暇制度を利用することで、残業代の抑制や労働者の健康維持等プラスに働くメリットもありますが、導入するには一定の手続き(就業規則への規定や労使協定の締結)や、ルールが存在しますので、早めの準備をお勧め致します。
詳細は、下記厚生労働省のホームページをご参照ください。
月60時間を超える時間外労働の 割増賃金率が引き上げられます/厚生労働省
改正労働基準法/厚生労働省(※現段階では中小企業は猶予ですと記載されています)
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社会保険 算定基礎届の提出
2022年7月4日
社会保険 算定基礎届(定時決定)の提出の時期になりました。
今年の提出期限は 7月11日(月)です。
<定時決定とは>
〇健康保険及び厚生年金保険の被保険者及び70歳以上被用者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように、7月1日現在で使用している全ての被保険者及び70歳以上被用者に4・5・6月に支払った賃金を、「算定基礎届」によって届出し、厚生労働大臣は、この届出内容に基づき、毎年1回標準報酬月額を決定します。
これを定時決定といいます。
〇「算定基礎届」により決定された標準報酬月額は、原則1年間(9月から翌年8月まで)の各月に適用され、納付する保険料の計算や将来受け取る年金額等の計算の基礎となります。
〇届出書類や案内文書が、事業主宛に6月上旬頃から日本年金機構より発送されています。
電子申請、同封されている返信用封筒により事務センターへ郵送、または管轄の年金事務所担当窓口に提出して下さい。
<留意点>
〇算定基礎届の提出の対象となるのは、7月1日現在の全ての被保険者及び70歳以上被用者です。
ただし、以下の(1)~(3)のいずれかに該当する方は算定基礎届の提出が不要です。
(1)6月1日以降に資格取得した方
(2)6月30日以前に退職した方
(3)7月改定の月額変更届を提出する方
〇報酬とは「労働の対償」として受けるものが報酬となります。
基本給だけでなく各種手当や通勤定期券(非課税分含む)も含まれますが、出張旅費、解雇予告手当、退職手当、臨時に受けるもの、3ヵ月を超える期間ごとに受けるものは除きます。
詳細については日本年金機構のホームページでご確認ください。
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月60時間超えの割増賃金率引き上げ
2022年6月2日
2023年4月1日から、中小企業に適用開始!
月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が
25%から50%に引き上げられます。
大企業では2010年4月から適用されていましたが、中小企業は適用が猶予されていました。働き方改革関連法の成立によりこの猶予が廃止され、2023年4月1日以降に労働させた時間について中小企業においても割増賃金率50%が適用されます。
★改正点(中小企業)
改正前
<2023年3月31日までの法定時間外労働割増賃金率>
1ヶ月の法定時間外労働60時間以下 25%
1ヶ月の法定時間外労働60時間超 25%
改正後
<2023年4月1日からの法定時間外労働割増賃金率>
1ヶ月の法定時間外労働60時間以下 25%
1ヶ月の法定時間外労働60時間超 50% (今回引上げになった部分)
改正後は月の法定時間外労働60時間を境に割増率が変わる為、給与計算の際には注意が必要です。
★法定時間外労働が深夜時間帯に及んだ場合(22:00~5:00)
①1ヶ月の法定時間外労働60時間以下
時間外割増賃金率25%+深夜割増賃金率25%=50%(従来通り)
②1ヶ月の法定時間外労働60時間超
時間外割増賃金率50%+深夜割増賃金率25%=75%(改正により変更になる部分)
★法定休日労働の割増率
法定休日労働の割増賃金率は変更なく35%です。
月60時間の時間外労働時間の算定には、この法定休日労働時間は含まれませんが、法定休日以外の休日に行った時間外労働は含まれます。
★代替休暇
1ヶ月について60時間を超えて時間外労働を行わせた労働者について、健康を確保する目的から、引き上げ分の割増賃金の支払いに代えて有給の休暇(代替休暇)を付与することもできます。
この制度を採用する為には就業規則への規定と労使協定の締結が必要です。
この制度を採用した場合でも、実際に代替休暇を取得するか否かを決定するのは個々の労働者の意思によるものであり、取得を義務づけるものではありません。
割増賃金率の変更に伴い、就業規則や労働条件通知書の見直しが必要となります。
日頃から残業時間が多い場合は、2023年4月以降、残業代が増加することが想定されます。
労働時間の適正な把握、業務フローの見直しや業務の効率化等残業削減への取り組み、代替休暇制度の検討等、今から準備をしていくことが望ましいと思います。
詳細については厚生労働省のホームページをご参照ください。
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労働保険料の申告・納付
2022年6月2日
今年も、労働保険の年度更新の時期になりました。
今年の申告・納付期間は6月1日(水)~7月11日(月)です。
手続きが遅れますと、政府が労働保険料・一般拠出金の額を決定し、さらに追徴金を課すことがありますのでご注意下さい。
< 年度更新とは >
○労働保険(労働者災害補償保険・雇用保険)は、毎年、前年度の確定保険料の申告・納付と新年度の概算保険料の申告・納付の手続き(年度更新)が必要です。
○保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(保険年度といいます。)を単位とし、その間に支払われるすべての労働者の賃金総額に、業種ごとに定められた保険料を乗じて算定します。
○年度更新の申告書は、事業主宛に5月末に労働局より発送されます。
年度更新期間中に、最寄りの都道府県労働局・労働基準監督署で申告手続き、金融機関窓口での納付手続きを行います。
< 留意点 >
○賃金総額は基本給だけでなく、通勤手当(非課税分含む)、各種手当、賞与等も含みますが、赴任手当、出張旅費は含まれません。「労働の対償」として支払われるすべてのもので、税金その他社会保険料等を控除する前の支払総額をいいます。
○保険年度に支払いが確定した賃金は、その保険年度に実際に支払われていなくとも算入してください。
例えば、3月1日~3月31日の給与を4月15日に支払っている場合、この給与は4月ではく3月として算入します。
○建設業で賃金総額が算定しがたい場合は、特例の計算方法により金額が算出されます。
請負金額(消費税除く)×労務比率=賃金総額
また、元請工事がある場合は「一括有期事業報告書」もあわせて提出することになります。
詳細については、厚生労働省のホームページでご確認ください。