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法定帳簿を適正に作成・保存していますか?
2024年7月2日
労働者を雇用する事業主には、作成・保存義務が課されている法定帳簿があります。
労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の3帳簿に加え、平成31年4月からは、有給休暇管理簿の作成・保存も必要なっています。
労務管理の基本ともいえる法定帳簿ですが、正しく運用できているでしょうか。
1、労働者名簿(労働基準第107条)
労働者名簿は、各事業場ごとに、各労働者(日々雇入れられる者を除く。)について調整しなければなりません。
また、記入すべき事項に変更があった場合においては、遅滞なく訂正しなければなりません。
<記載項目>
①労働者氏名 ②生年月日 ③履歴(異動や昇進等の社内における履歴) ④性別 ⑤住所 ⑥従事する業務の種類 ⑦雇入れ年月日 ⑧退職や死亡の年月日(解雇の場合はその理由及び死亡の場合はその原因を含む)
<保存期間と起算日>
労働者の死亡・退職・解雇の日から起算して5年(当面の間は3年)
<Check>
●記載項目を網羅していますか?
●入社後の変更について訂正をしていますか?
●退職者の労働者名簿を退職後すぐに廃棄していませんか?
2、賃金台帳(労働基準法第108条)
賃金台帳は、各事業場ごとに調整し、各労働者ごとに、賃金支払いの都度、遅滞なく記入しなければなりません。
<記載項目>
①労働者氏名 ②性別 ③賃金の計算期間 ④労働日数 ⑤労働時間数 ⑥時間外労働時間数 ⑦深夜労働時間数 ⑧休日労働時間数 ⑨基本給や手当等の種類と額 ⑩控除項目と額
<保存期間と起算日>
労働者の最後の賃金について記入した日から5年(当面の間は3年)
※但し、当該記録した日より、当該記録にかかる賃金の支払日が遅い場合は、賃金支払日が起算日になります。
<Check>
●給与明細の作成だけで終わっていませんか?給与明細は賃金台帳の代わりにはなりません。
●記載項目について網羅していますか?(特に、性別及び上記④~⑧の労働時間等に関する記載項目について記載が漏れがちのため注意が必要です。)
3、出勤簿等(労働基準法第108条関係)
使用者には労働者の労働日ごとの労働時間を適正に把握する責務があります。
出勤簿やタイムレコーダー等の記録、使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類、残業命令書及びその報告書、労働者が記録した労働時間報告書等の書類を保存しなければなりません。
<記載事項>
氏名、出勤日、出勤日ごとの始業・終業の時間、休憩時間、残業時間等
<保存期間と起算日>
労働者の最後の出勤日から5年(当面の間は3年)
※但し、当該日より、賃金の支払日が遅い場合は、賃金支払日が起算日になります。
<Check>
●始業・終業の時刻及び休憩時間等が記録されていますか?
●出勤簿等の内容と賃金計算及び賃金台帳の記録内容が一致していますか?
4、年次有給休暇管理簿(労働基準法施行規則第24条の7)
年次有給休暇管理簿は、労働者毎に作成する必要があります。労働者名簿又は賃金台帳と合わせて調整することもできます。
<記載項目>
①時季(実際に有給休暇を取得した日) ②基準日(有給休暇の付与日) ③日数(基準日から1年間に労働者が取得した日数)
<保存期間と起算日>
有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後5年(当面の間は3年)
<Check>
●記載項目を網羅したものを作成していますか?(特に、実際の取得日について記載が漏れがちのため注意が必要です。)
これらの帳簿は、事業の種類、法人・個人の別、従業員数等に関係なく労働者を雇用した全ての使用者に作成、保存の義務があります。
いずれの帳簿にも保存期間が定められていますので、保存期間が経過する前に廃棄することはできません。
また、労働者名簿及び賃金台帳は企業単位ではなく各事業場単位での調整(備え付け)が必要であることに注意が必要です。
帳簿類は厚生労働省のホームページからもダウンロードできますが、記載項目を網羅していれば書式は自由ですので、必ずしも同じ書式である必要はありません。
これらの4帳簿は、労働基準監督署の調査でも求められることが多く、不備については行政指導の対象になる場合があります。
また年次有給休暇管理簿を除く3帳簿については、義務違反に対して罰則が適用される可能性もあります。
この機会に自社の帳簿類の作成や保存が適正に行われているか等、確認してみてはいかがでしょうか。
詳細は、下記ホームページをご参照ください。
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社会保険 算定基礎届の提出
2024年7月2日
社会保険算定基礎届(定時決定)の提出の時期になりました。
期間内に、日本年金機構へ提出してください。
提出期間 : 令和6年7月1日(月)から7月10日(水)まで
< 定時決定とは >
〇健康保険及び厚生年金保険の被保険者及び70歳以上被用者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように、7月1日現在で使用している全ての被保険者及び70歳以上被用者に4・5・6月に支払った賃金を、「算定基礎届」によって届出し、厚生労働大臣は、この届出内容に基づき、毎年1回標準報酬月額を決定します。
これを定時決定といいます。
〇「算定基礎届」により決定された標準報酬月額は、原則1年間(9月から翌年8月まで)の各月に適用され、納付する保険料の計算や将来受け取る年金額等の計算の基礎となります。
〇届出書類や案内文書が、事業主宛に6月上旬頃から日本年金機構より発送されます。
電子申請 または 同封されている返信用封筒にて事務センターへ郵送して下さい。
< 留意点 >
〇算定基礎届の提出の対象となるのは、7月1日現在の全ての被保険者及び70歳以上被用者です。
ただし、以下の(1)~(3)のいずれかに該当する方は算定基礎届の提出が不要です。
(1)6月1日以降に資格取得した方
(2)6月30日以前に退職した方
(3)7月、8月、9月随時改定の月額変更届を提出する方
〇報酬とは「労働の対償」として受けるものが報酬となります。
基本給だけでなく各種手当や通勤定期券(非課税分含む)も含まれますが、出張旅費、解雇予告手当、退職手当、臨時に受けるもの、3ヵ月を超える期間ごとに受けるものは除きます。
詳細については日本年金機構のホームページでご確認ください。
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令和6年度 障害者の法定雇用率引き上げと変更点について
2024年6月4日
従業員が一定数以上いる規模の事業主には、障害者を雇用する義務が課せられるとともに、毎年6月1日時点での障害者雇用の状況をハローワークへ報告する義務があります。
仮に障害者雇用が0人であってもその事実を報告しなければなりません。
障害者雇用状況報告書の届出時期となりますので、令和6年度の障害者雇用の変更点等について確認していきましょう。
1、法定雇用率の引き上げ
障害者の法定雇用率が、令和6年4月以降2.5%へ引き上げられました。(令和5年度は2.3%)
これにより、企業全体の常用雇用労働者数(除外率により除外すべき労働者を控除した数)が40.0人以上の事業主に、障害者の雇用義務が生じることになります。
※40.0人のカウントの仕方
週30時間以上の常用雇用労働者を1人カウント、週20時間以上30時間未満の短時間労働者を0.5カウントとします。(週10時間以上20時間未満の特定短時間労働者は計算に含めません。)
<計算例>
■常用雇用労働者30名、短時間労働者10名の場合
30名+10名×0.5×2.5%=0.875
端数切捨ての為0人となり、障害者を雇用する義務はありません。
■常用雇用労働者40名、短時間労働者10名の場合
40名+10名×0.5×2.5%=1.125
端数切捨ての為1人となり、1名以上の障害者を雇用する義務があります。
2、除外率について
除外率は令和7年4月以降、除外率設定業種ごとにそれぞれ10ポイント引き下げられます。(現在除外率が10%以下の業種は除外率制度の対象外になります。)
令和6年度の除外率はこれまでと変更はありません。
3、障害者の算定方法の変更
① 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方)の算定特例の延長
平成30年4月1日より、精神障害者の職場定着を進める観点から精神障害者である短時間労働者(週20時間以上30時間未満)の実雇用率の算定について、令和4年度末まで1人としてカウントする特例措置が設けられていました。
令和5年4月以降もこの特例が延長され令和6年度についても継続されています。
② 令和6年4月1日以降、※特定短時間労働者である障害者の一部について、雇用率へ算定できるようになります。
障害者雇用率の算定にあたり、分母である常用雇用労働者には特定短時間労働者数は含めませんが、分子である常用雇用障害者としては、重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者である特定短時間労働者について、一人の雇用に対して0.5人として算定することができるようになります。(就労継続支援A型の利用の利用者を除く)
※特定短時間労働者とは…
短時間労働者のうち、1週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満である労働者をいいます。
■常用雇用労働者である障害者のカウント方法(対象となる障害者を1人雇用している場合のカウント数)
週所定労働時間 30時間以上 20時間以上 30時間未満
10時間以上 20時間未満
身体障害者 1 0.5 ― 身体障害者重度 2 1 0.5…上記② 知的障害者 1 0.5 ― 知的障害者重度 2 1 0.5…上記② 精神障害者 1 1…上記① 0.5…上記② その他、障害者雇用支援強化を目的とし、令和6年4月以降、助成金の新設や拡充も図られます。
上記の変更点を踏まえて、自社における障害者雇用義務の有無及び達成状況を確認しましょう。
障害者雇用率は令和8年7月には2.7%に引き上げられることも決定しています。
その場合は常用雇用労働者が37.5人以上の事業主に障害者雇用の義務が生じることになります。
障害者雇用の義務がある事業主は、その義務を果たすべき対応が求められますし、今後の雇用率の改定により義務が生じてくる事業主については、雇入れの体制や環境作り等、早めに準備を進めていくことが重要だと思います。
また、障害者の雇入れや雇用管理等の責任者として、障害者雇用推進者を選任することも努力義務となっています。
このような選任をとおして、障害者雇用に対して責任をもって取り組んでいける体制を整えていくことも大切だと思います。
詳細は下記をご参照ください。
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令和6年 労働保険料の申告・納付
2024年6月4日
今年も、労働保険の年度更新の時期になりました。
今年の申告・納付期間は令和6年6月3日(月)~7月10日(水)です。
手続きが遅れると、政府が労働保険料・一般拠出金の額を決定し、さらに追徴金を課すことがありますのでご注意下さい。
年度更新とは
労働保険(労働者災害補償保険・雇用保険)は、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付と、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付の手続きが必要です。
この手続きを「年度更新」と言います。
保険料
労働保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(保険年度といいます。)を単位とし、その間に支払われるすべての労働者の賃金総額に、業種ごとに定められた保険料を乗じて算定します。
賃金総額は、基本給だけでなく、通勤手当(非課税分含む)、各種手当、賞与等、労働の対償として支払うすべてのもので、税金や社会保険料等を控除する前の支払総額をいいます。
慶弔見舞金、出張旅費等の実費弁償、工具手当等の労働者が自己負担で用意した用具に対しての手当等は含まれません。
保険年度中に支払いが確定した賃金は、その保険年度に実際に支払われていなくとも算入してください。
3月1日~3月31日の給与を4月15日に支払っている場合、この給与は4月ではく3月として算入します。
元請により実施した工事がある建設業で、賃金総額が算定しがたい場合は、特例の計算方法により賃金総額とし、保険料を算定することができます。
【 請負金額(消費税除く)×労務比率=賃金総額 】
また、「一括有期事業総括表」と「一括有期事業報告書」もあわせて提出することになります。
申告書
年度更新の申告書は、事業主宛に5月末~6月初に労働局より発送されます。
申告書を作成し、期間内に①~③の方法で提出してください。
①管轄の都道府県労働局・労働基準監督署・金融機関の窓口 ②電子申請 ③管轄の労働局へ郵送
その他、詳細については厚生労働省のホームページでご確認ください。
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36協定の労働者代表の選出
2024年5月8日
~36協定締結において~
「労働者の過半数代表者の選出手続き」と「労働者への周知」を適正に行っていますか?
法定時間外の労働や法定休日に労働をさせる場合、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者と、書面による協定を締結し、労働基準監督署へ届出しなければなりません。
この「労働者の過半数代表者」の選出手続きについて適正に行わずに締結した36協定は無効となり、せっかく届出をしていても、法定時間外の労働や法定休日の労働をさせることができないことになる為、注意が必要です。
また、労働基準監督署へ届け出た36協定は、労働者に周知しなければなりません。
1.36協定の労働者側の締結当事者
①事業場に使用されるすべての労働者(正社員に限らず、パート・アルバイト・出向社員等を含む)の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合が労働者側の締結当事者になります。※事業場に使用されるすべての労働者のうち、その労働組合の組合員数が50%を超えていることを確認する必要があります。
②事業場に過半数で組織する労働組合がない場合に限り、労働者の過半数代表者が労働者側の締結当事者になります。
※36協定を締結する事業場ごとに過半数代表者を選任します。
2.過半数代表者の要件と選出手続き(上記1の②の場合)
<過半数代表者の要件>
①事業場に使用されるすべての労働者(正社員に限らず、パート・アルバイト、出向社員等を含む)の過半数を代表していること。
②選出に当たっては、事業場に使用されるすべての労働者(正社員に限らず、パート・アルバイト、出向社員等を含む)が参加した民主的な手続きが取られていること。
③労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者に該当しないこと。
<過半数代表者の選出手続き>
①選出に当たっては、事業場に使用される全ての労働者が参加する必要があります。
正社員だけでなく、パートやアルバイト、出向社員等も全て含める必要があることに注意が必要です。(時間外労働や休日労働を行う可能性の有無に関係なく)
②36協定の締結のための過半数代表者を選出することを明らかにしたうえで、選出手続きを行う必要があります。
③労働者の過半数がその人の選出を支持していることが明確になる民主的な手続き方法(投票、挙手、労働者同士の話し合い等)をとる必要があります。
※使用者の意向に基づき選出された者であってはなりません。
※労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者は過半数代表者にはなれませんが、過半数労働者選出時の全労働者には含みます。
※雇用形態を問わず、事業場に使用されるすべての労働者は過半数代表者に立候補することができます。(管理監督者を除きます)
※立候補者がいない場合は推薦を受け、信任投票等を行うこともできますが、推薦にあたり使用者の意向が反映されたものであってはなりません。
※立候補者が1名であっても、複数名であっても1回の投票で過半数を得られない場合は、信任投票や決戦投票等により、事業場に使用されるすべての労働者の過半数の支持を得ていることを確認する必要があります。
※メールでの信任投票等において、返信がない場合は信任を得たとみなしたり、返信があった者だけの過半数の支持をもって過半数労働者とすること等は、労働者の過半数が支持していることが明確になるとはいえないため、適切ではないとされています。返信がない場合も必ず労働者の意思確認を行う必要があります。
※使用者は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない。(労働基準法施行規則第6条の2第3項)
正社員のみが選出手続きに参加している、選出手続きの際に協定の目的等を明らかにしていない(労働者は何の協定の過半数代表者を選出しようとしているのか把握していない)、そもそも労働者は選出手続きに参加せず、使用者が一方的に指名している、労働者の親睦会の幹事を自動的に選任している等は、適切な手続きを踏んでいないため、その協定は無効となります。
36協定の締結において、過半数代表者を適切に選任することは、非常に重要な要件となりますので注意が必要です。
※36協定に限らず、就業規則の制定・変更時や、労使で締結する様々な労使協定において、過半数代表者の選出手続きは共通するものになります。(36協定において管理監督者は過半数代表者になれませんが、管理監督者しかいない事業場において、管理監督者が過半数代表者になり得る協定もあります)
また、36協定は締結だけでなく、労働基準監督署への届出が効力の発生要件となります。労働基準監督署の受理日以降に効力が認められることになりますので、締結後は速やかに提出するようにしましょう。
3.労働者への周知義務
更に見落としがちなのは、36協定を労働基準監督署へ届出した後の、労働者への周知です。届出した36協定は、次のいずれかの方法にて労働者に周知しなければなりません。
①作業場の見やすい場所への掲示・備え付け
②文書の交付
③パソコン内にファイルを保存したり、社内イントラネットへ掲示する等、確認できる環境を整備し、かつ、各作業場に確認できるパソコン等の機器を設置すること
36協定を締結した際には、この周知義務までを確実に行うようにしてください。
※就業規則や36協定以外の各種労使協定も同様に周知義務があります。
自社での36協定の締結手続きにおいて、不足している要件がある場合や周知義務が不十分である場合は、この機会に見直し、適正に実施するようにしましょう。
詳細は下記をご参照ください。
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令和6年度 在職老齢年金制度の支給停止調整額が変更されました
2024年4月2日
令和6年4月より、
在職老齢年金制度の支給停止調整額が、
48万円から50万円に変更されました。■在職老齢年金制度とは…
働きながら(厚生年金に加入している又は加入義務の年齢を過ぎても加入要件を満たすような働き方をして給与等を得ている場合)老齢厚生年金を受けることができる人については、給与等(賞与含む)と老齢厚生年金の合計額(1か月当たり)が支給停止調整額を超える場合には、老齢厚生年金額について一部支給停止又は全額支給停止等の支給調整が行われます。
これを在職老齢年金制度といいます。
■支給停止調整額とは…
給与等(賞与含む)と老齢厚生年金の合計額(1か月当たり)がこの金額までなら支給停止なく全額支給されるという基準額のことを「支給停止調整額」といいます。
以前は60歳以上65歳未満と65歳以降では、支給停止調整額が異なっていましたが、令和4年4月の年金制度改正により、60歳以上65歳未満も65歳以上と同じ支給停止調整額に改正されていました。
この支給停止調整額は毎年4月に見直しがあり、令和6年度は、前年の48万円から50万円に変更されました。
■在職老齢年金制度による支給停止計算方法
給与等(賞与含む)の1か月あたりの額と老齢厚生年金の1か月あたりの額の合計が50万円以下であれば年金は支給停止なく全額支給され、50万円を超えた場合は、超えた額の半分が支給停止になります。
尚、老齢基礎年金は給与等に関係なく全額受給できます。
支給停止月額=(総報酬月額相当額…①+基本月額…②-支給停止調整額(令和6年度は50万円)÷2
<例1>
①総報酬月額相当額・・・50万円/月
②基本月額・・・・・・・14万円/月
支給停止月額=(50万円+14万円-50万円)÷2=7万円
7万円の老齢厚生年金が支給停止されます。
<例2>
①総報酬月額相当額・・・30万円/月
②基本月額・・・・・・・14万円/月
支給停止月額=30万円+14万円は44万と50万以下のため、支給停止はありません。
①総報酬月額相当額とは…
調整の対象となる月におけるその者の「標準報酬月額」と「その月以前1年間の標準賞与額の総額を12で除して得た額」を合算して得た額のことです。
※70歳以上の場合は、標準報酬月額に相当する額、標準賞与額に相当する額。
②基本月額とは…
老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額(加給年金を除く)を12月で除して得た額のことです。(老齢基礎年金は支給調整の対象外です。)
■在職定時改定
令和4年4月の年金制度改正により、毎年9月1日に厚生年金に加入中の65歳以上70歳未満の老齢厚生年金受給権者について、前年9月から当年8月までの厚生年金保険加入期間を反映して、年金額を10月分(12月受取分)から改定する仕組みがとられています。
これにより原則として年金額が年に1度増額改定されるため、報酬等に増額がない場合でも在職老齢年金制度による支給停止額には影響が出る可能性があります。
老齢年金を受給していても、70歳までは加入要件を満たす場合は厚生年金に加入し保険料を納めなければなりませんが、その分年金は増えていくことになります。
また、70歳以降厚生年金の加入義務がなくなっても厚生年金の加入要件を満たすような働き方を継続している限りは、年齢の上限なく在職老齢年金制度による老齢厚生年金の支給調整は行われることになります。
在職老齢年金支給停止調整額は、毎年4月に改定されますが、ここ数年の推移は、令和4年度が47万、令和5年度が48万、そして令和6年度が50万となっています。
働いて給与等を得ている方が老齢厚生年金を受給できるようになった時や給与等を得ながら老齢厚生年金を受給している方が給与等を変更する場合等には、少なからず年金額への影響があるため、在職老齢年金制度をよく理解するとともに、毎年この時期は、支給停止調整額についても改定の有無をチェックするようにしましょう。
詳細は下記をご参照ください。
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労災保険料率の変更
2024年4月2日
令和6年度から労災保険率、労務費率、第2種特別加入保険料率が一部改定になりました。
労災保険とは
労働者が業務上の事由又は通勤によって負傷したり、病気に見舞われたり、あるいは不幸にも死亡された場合に被災労働者や遺族を保護するため必要な保険給付を行うものです。
労災保険料は、労働者に支払う賃金総額に労災保険料率を乗じて得た額で、全額事業主が負担することになっています。
労災保険料率
労災保険料率は、事業の種類(業種)ごとに業務災害及び通勤災害に係る災害率に応じ、54の区分に分類された労災保険料率表により定められています。
労務費率
請負による建設事業において、賃金総額を正確に把握することが困難な場合には、労務費率(工事の請負金額に占める賃金総額の割合)に請負金額を乗じて得た額を賃金総額とすることが認められています。
保険料率、労務費率が変更になった事業所は、今年の年度更新では、令和6年度の労災保険の概算保険料は新しい料率で、令和5年度の確定保険料はこれまでの料率での申告をすることになりますのでご注意ください。
変更後の保険料率・労務費率等、詳細は厚生労働省のホームページでご確認ください。
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新たな化学物質規制(安全衛生法関係法令の改正)
2024年3月4日
新たな化学物質規制(安全衛生法関係法令の改正)
2024年4月1日施行日以降、どう変わる?
安全衛生法関係法令の改正に伴い、2023年4月より、新たな化学物質規制が導入されていますが、2024年4月1日に施行を控えているものもあります。
本記事では、主な改正内容について注意点とともに解説します。■2024年4月1日施行、主な改正内容
1、ラベル表示・通知をしなければならない化学物質の追加
ラベル表示・SDS等による通知とリスクアセスメント実施の義務対象物質に、国によるGHS分類で危険性・有毒性が確認されたすべての物質が順次追加され、対象物質が大幅に増加します。
これにより、事業場において取り扱っている化学物質が新たに上記下線の義務に該当してくる可能性が出てきますので、対象物質に該当するか否かの確認をする必要があります。2、ばく露を最小限にすること(ばく露を濃度基準値以下にすること)
厚生労働大臣が定める物質(濃度基準値設定物質)は、リスクアセスメント結果を踏まえ、労働者がばく露される濃度を基準値以下とすることが義務付けされます。…①
尚、濃度基準未設定物質については、2023年4月1日に施行されているとおり、労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される程度を以下の方法等で最小限にしなければなりません。…②
(1)代替物等を使用する。
(2)発散源を密閉する設備、局所排気装置または全体喚起装置を設置し、稼働する。
(3)作業の方法を改善する。
(4)有効な呼吸器保護具を使用する。
※(1)→(4)の順に手段を検討し、事業者自らが選択の上、実施します。3、ばく露低減措置等の意見聴取、記録作成・保存
2に基づく措置の内容と労働者のばく露の状況について労働者の意見を聴く機会を設け、記録を作成し、3年間保存しなければなりません。(厚生労働大臣が定めるがん性物質は30年間保存)
※2の②は2023年4月1日施行、2の①は2024年4月1日施行)4、リスクアセスメントに基づく健康診断の実施・記録作成等
リスクアセスメントの結果に基づき講ずるばく露低減措置の一環として、リスクアセスメント対象物による健康影響の確認のため、必要があると認めるときは、医師等が必要と認める項目の健康診断を行い、その結果に基づき必要な措置を講じなければなりません。
また、濃度基準値設定物質について、基準値を超えてばく露したおそれがあるときは、速やかに医師等による健康診断を実施しなければなりません。
上記の健康診断を実施した場合は、その記録を作成し、5年間(がん原生物質に関する健康診断は30年間)保存しなければなりません。5、衛生委員会の付議事項の追加
上記2及び4により講ずる措置に関することを衛生委員会の付議事項に追加し、化学物質の自律的な管理の実施状況の調査審議を行うことが義務付けされます。(2の②については2023年4月1日施行)
※衛生委員会の設置義務がない労働者50人未満の事業場も、意見聴取の機会を設けなければなりません。6、皮膚等障害化学物質への直接接触の防止(健康障害を起こすおそれのある物質関係)
皮膚等への障害を引き起こしうる化学物質を製造・取り扱う業務に労働者を従事させる場合、物質の有害性に応じて、労働者に障害等防止用保護具(保護眼鏡、不浸透性の保護衣、保護手袋又は履物等適切な保護具)を使用させなければなりません。
(1)健康障害を起こす恐れがあることが明らかな物質の製造・取り扱い
2023年4月1日~保護具の使用が努力義務 → 2024年4月1日~保護具の使用が義務。
(2)健康障害を起こす恐れがないことが明らかなもの以外の物質の製造・取り扱い
2023年4月1日~保護具の使用が努力義務。7、化学物質管理者の選任の義務化
■選任が必要な事業場
リスクアセスメント対象物を製造、取り扱い、または譲渡提供をする事業場(業種・規模要件なし)
※選任義務は、個別の作業場ごとでなく、工場、営業所等の事業場ごと。
※一般消費者の生活の用に供される製品のみを取り扱う事業場は、対象外。
※事業場の状況に応じ、複数名の選任も可能。
■選任要件
(1)リスクアセスメント対象物の製造事業場
専門的講習の終了者(講義カリキュラムは、科目・時間等が定められています)
(2)リスクアセスメント対象物の製造事業場以外の事業場
資格要件なし(専門的講習等の受講を推奨)
※専門的講習は外部の任意の専門機関の講習を受講することができ、また、カリキュラムを満たしていれば事業場内教育で行うことも可能です。
■職務
①ラベル・SDS等の確認
②化学物質に関わるリスクアセスメントの実施管理
③リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の選択、実施の管理
④化学物質の自律的な管理に関わる各種記録の作成・保存
⑤化学物質の自律的な管理に関わる労働者への周知、教育
⑥ラベル・SDSの作成(リスクアセスメントの製造事業場の場合)
⑦リスクアセスメント対象物による労働災害が発生した場合の対応
■選任・周知
選任義務が発生した日から14日以内に選任し、化学物質管理者に必要な権限を与えるとともに、化学物質管理者の氏名を事業場の見えやすい箇所に掲示する等して、労働者に周知しなければなりません。(労働基準監督署への届出義務はありません)8、保護具着用管理責任者の選任の義務化
■選任が必要な事業場
リスクアセスメントに基づく措置として労働者に保護具を使用させる事業場
■選任要件
保護具について一定の経験及び知識を有するもの(具体的な要件は令和4年5月31日付け基発0531第9号通達を参照)※資格要件を満たすものを選任する場合でも保護具の管理に関する教育を受けることが望ましいとされています。
また、資格要件を満たすものを選任できない場合でも、保護具の管理に関する教育を受講した者を選任することができます。
■職務
①保護具の適正な選択に関すること
②労働者の保護具の適正な使用に関すること
③保護具の保守管理に関すること
■選任・周知
選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、保護具着用管理責任者に必要な権限を与えるとともに、保護具着用管理責任者の氏名を事業場の見えやすい箇所に掲示するなどして、労働者に周知しなければなりません。(労働基準監督署への届出義務はありません)9、雇い入れ時教育の拡充
雇入時又は作業内容の変更の際に行う教育のうち、特定の業種では一部教育項目の省略が認められていましたが、この省略規定が廃止され、危険性・有害性のある化学物質を製造し、または取り扱う全ての事業場で、化学物質の安全衛生に関する必要な教育を行わなければなりません。上記の他にも2024年4月1日施行の改正として、SDS等による通知事項の追加及び含有量表示の変更、作業環境測定結果が第3管理区分の事業場に対する措置の強化等があります。
2023年4月1日に既に施行されているものも含め、詳細は厚生労働省のホームページで確認してください。
普段意識せずに職場で使用している商品や製品に含まれる化学物質によって思わぬ労働災害が発生するケースもあります。
安全データシート(SDS)の適用法令を確認し、安全衛生法の適用の有無及びどのジャンルに該当する化学物質なのかを確認することで、自社において対策すべき事項を確認していきましょう。
厚生労働省のホームページでは確認の手順なども紹介されています。化学物質による労働災害を防ぎ、労働者が安全に働くことができるよう、2024年4月1日施行に備えて、再確認していきましょう。
詳細は下記、厚生労働省ホームページをご確認ください。